認知症の進行度別の症状とは?認知症のステージ分類やステージごとの症状を解説


認知症は、進行度合いによって出現する症状が異なります。進行度によってどのような症状が出るのか、詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか。

認知症全体の進行ステージは大きく分けて4ステージ、アルツハイマー型認知症に限定すると7ステージに分類され、それぞれのステージで見られる症状が異なります。

この記事では、認知症の進行ステージごとの症状を紹介するとともに、アルツハイマー型認知症のステージ分類「FAST」を解説します。併せて、認知症の予防や進行を遅らせるためにできることも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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認知症における4つの進行段階と症状

冒頭でも述べたとおり、認知症の進行度は大きく4段階に分類できます。ここでは、各進行度で見られる症状を紹介します。
ただし、以下はあくまで一般論のため、すべての方に同じ症状が出るとは限らない点に留意しましょう。

進行度1.前兆

進行度1は、おもに「前兆」と呼ばれ、そのほか「軽度認知障害」や「MCI(Mild Cognitive Impairment)」と呼ばれる場合もあります。

進行度1では、一時的な物忘れといった軽い記憶障害が出るケースが多いのが特徴です。日常生活において問題が起こるケースは少ないといえますが、軽い物忘れだからと前兆を見過ごしてしまわないように注意しましょう。

進行度2.初期

進行度2の「初期」では、進行度1よりも程度の重い記憶障害や集中力の低下などが見られるケースがあります。そのほか、感情の起伏が激しくなる、時間や場所の感覚が狂ってしまうといった症状が出る場合もあるでしょう。

具体的には、何度も同じ話をする、日常のルーティン作業を忘れる、運転中のミスが増える、今日の日付や場所がわからなくなるなどのケースが挙げられます。

進行度3.中期

進行度3の「中期」では、記憶障害がさらに進み、日常生活が難しくなる場面も少なくありません。家族の補助や外部の介護サービスの利用など、他者によるサポートが必要になる機会が増加するのもこのステージからです。

具体的には、自分の行動を忘れる、忘れたことを自覚できないなどの症状が挙げられます。また、会話中にとっさに言葉が出なくなったり、他者の話を理解できなかったりなどコミュニケーションが難しくなる場合もあるでしょう。

そのほか、自分で自宅に帰れない、季節に合った服装を選べないなども、進行度3で見られる症状の一つです。

進行度4.末期

進行度4の「末期」では、認知機能が著しく低下するとともに、意欲や自発性も乏しくなっていきます。そのため、自身の意思での発言や行動が困難になってしまうのです。
身体機能も大きく低下するため、歩行困難や寝たきりになってしまうケースも少なくありません。

進行度4では、表情が動かなくなり無表情になる、コミュニケーションが取れない、失禁や筋固縮、嚥下障害の発生といった症状が見られます。

アルツハイマー型認知症の進行ステージ分類「FAST」と7段階ごとの症状

前述の指標に加えて、アルツハイマー型認知症の場合は「FAST(認知症機能評価別病期分類)」と呼ばれる、進行度や重症度を評価するためのステージ分類が設けられています。
FASTは、アルツハイマー型認知症の進行度を7つのステージに分類しており、現在の進行程度だけでなく、将来出現するおそれのある症状の予測にも役立つ指標です。

ここからはこのFASTをもとに、それぞれのステージ分類における症状を紹介します。

ステージ1.正常

ステージ1は、「正常」という名称のとおり認知機能に関する障害が発生していない状態です。
問診内容も問題なく過去に記憶力が低下した経験も見られないため、通常の認知機能を持つとみなされます。

ステージ2.ごく軽度な認知機能低下

ステージ2では、加齢などにともなう自然な変化によって生じる認知機能の低下が見られます。もしくは、ごく初期のアルツハイマー型認知症の兆候があると判断されるケースも少なくありません。

例えば、普段使う言葉やよく会う人の名前をど忘れしてしまう、鍵や眼鏡などの日用品の置き場所を忘れてしまうといった症状が見られます。

ステージ3.軽度の認知機能低下

ステージ3は、アルツハイマー型認知症の初期段階と判断される状態です。同時に、家族や友人、職場の同僚など、周囲の人が本人の異変に気付き始めるステージでもあります。
以下は、ステージ3で見られる症状の例です。

・新しく知り合った人の名前や初めて読む文章の内容が覚えられない
・計画を立てることや物事の整理が難しくなる
・社会的・仕事上での任務遂行能力が低下し、周囲の人が変化に気付く など

ステージ4.中程度の認知機能低下

ステージ4は、アルツハイマー型認知症の初期~軽度である可能性が高いステージです。問診を通して、明白な障害が生じていると判断できる症状が見つかる場合もあるでしょう。
以下は、ステージ4で見られる症状の例です。

・マーケティングや食事会などの計画、清算や支払いの管理といった複雑な作業に対する実行力の低下
・最近起きた出来事に関する記憶や知識の低下
・難しい暗算を解くことの困難化
・自身の生い立ちに関する記憶の喪失 など

ステージ5.やや重度の認知機能低下

ステージ5は、アルツハイマー型認知症の中等度~中期段階の可能性が高いステージです。記憶に関する大きな欠落や認知機能における障害が見つかりやすく、日々の生活では他者によるサポートが必要になる場合も少なくありません。
以下は、ステージ5で見られる症状の例です。

・問診で自身の住所や電話番号、学歴などの重要な情報が思い出せない
・季節や気候に合わせた服装を選べない
・ステージ4よりも簡単な暗算を解けない など

ステージ6.重度の認知機能低下

ステージ6は、アルツハイマー型認知症の中期~やや重度である可能性が高いステージです。記憶障害の進行に加えて性格面にも大きな変化が見られ、他者による大幅なサポートを必要とします。
以下は、ステージ6で見られる症状の例です。

・最近の出来事や経験、周りの環境をほとんど認識できない
・自分の名前は覚えていても生い立ちは思い出せない
・相手が既知かどうかはわかっても配偶者や家族、介護者の名前は忘れている
・着衣やトイレ時に介助を要する
・生活サイクルの乱れや失禁頻度の増加
・性格の変化や妄想、幻覚の頻発
・徘徊により迷子になる など

ステージ7.非常に重度な認知機能低下

ステージ7は、アルツハイマー型認知症の重度~後期、もしくは最終段階と判断される状態です。反応や会話、行動が喪失し、身体の制御が不可能となる場合もあります。
着衣やトイレだけでなく食事や入浴など、日常生活全般にわたって介護が必要となるケースが多いのもこのステージです。
以下は、ステージ7で見られる症状の例です。

・手助けなしで椅子に座れない、姿勢の維持ができない
・嚥下障害が起こりやすくなる
・微笑むなどの表情の変化が乏しくなる など

認知症の発症や進行を抑えることは可能?

認知症の根本的な治療法や確実な予防法は、いまだ確立されていません。ただ、発症リスクの低減や進行を抑えるのは不可能ではないとされます。
また、軽度のうちに発見し治療を始めることで、進行を抑えるだけでなく、認知機能を一時的に正常な状態まで回復できる可能性もあるのです。

発症リスク低減や進行を抑えるための方法としては、「生活習慣病の予防」が挙げられます。例えば、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、糖尿病や高血圧など生活習慣病との関連性が高いという特徴があります。そのため、生活習慣病の治療に加え、食生活や生活習慣を改善することで、認知症の発症リスクを低減できると考えられています。

そのほか、日頃からコミュニケーションを積極的に取る、認知機能のリハビリを行なう、薬物療法を受けるなどの対策も、進行を抑えるために有効です。

認知症のステージ分類について理解し、早期発見・治療に役立てよう


認知症の進行段階は大きく4段階に分けられ、それぞれで見られる症状が異なります。また、認知症のなかでもアルツハイマー型認知症の場合は「FAST」と呼ばれる7段階のステージ分類があり、進行度ごとの症状がより細かく分けられています。

あらかじめ認知症のステージ分類について把握しておくことで、見逃してしまいがちな初期症状の段階からいち早く認知症に気付けます。その結果、早期発見および治療、進行の抑制につなげることもできるでしょう。

また、認知症に備える際は、治療や介護で生じる費用について考えておくことも大切です。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年10月25日

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