「帰りたい」と思う場所は自分の家だけではなく、場合によっては故郷や実家を指したり、兄弟の家や家族などの親しい人そのものを意味したりすることもあります。
「帰宅願望」に接すると介護者は戸惑ってしまうこともあるでしょう。しかし対応に困ることがあったとしても、居心地の良い場所に帰りたいと思うことは当然の感情で、帰宅願望自体が問題行動というわけではありません。
まずは「帰りたい」という気持ちを理解し、原因・理由を考えて適切に接することが大切です。
認知症による帰宅願望の3つの原因
記憶障害や見当識障害の影響
もしも自分が見慣れない場所や知らない人に囲まれて、一人でいると想像してみてください。不安から、慣れた自宅や家族のもとに行きたいと感じても不思議ではないでしょう。
このように、認知症の中心的な症状が原因となって不安やストレス・孤独を感じ、慣れ親しんだ家や家族のところに帰りたいという「帰宅願望」が引き起こされます。
環境や人間関係の影響
認知症の方は、居心地の良い落ち着ける場所がない・周囲の人と合わない・周りとうまくかかわれない、などと感じることが不安やストレスになり、帰宅願望につながります。
また、施設内で居室が変更になった・自宅で模様替えをした、などの場合でも、「自分の家に帰りたい」という言動が出る場合があります。
周囲の人が慌ただしく動き回るのを見ただけで気持ちが不安定になり、帰宅願望につながるケースもあるので、単に「居場所」の問題だけでなく環境全体の雰囲気も関係していると考えられます。
夕暮れ症候群の影響
外が薄暗くなってくると不安を感じる認知症の方は多いものです。夕方は職場や学校から帰宅する時間帯なので、昔の記憶がよみがえり、「帰宅しなければ」「夕飯の支度をしなければ」「子供のお迎えに行かなければ」などという気持ちから、徘徊が見られる場合もあります。