認知症の方が作り話をしていると気付いたとき、周囲が理解を持って対処すれば、多くの場合は大きなトラブルや関係悪化などを避けられるでしょう。以下では、周囲のおすすめの対応方法を6つ紹介します。
まずは、認知症の方の言葉を「嘘」として扱わないことが大前提です。前述したとおり、作り話の背景には本人なりの事情があります。また、作り話の根底にある、記憶がない不安や自尊心などを想像し、理解に努めることが大切です。
特に、本人のいるところで「嘘ばかりつく」などと発言すると、関係性悪化につながるため避けましょう。
認知症の方の言っていることが事実でなくても、まずは否定せずに話を聞いてみましょう。毎回じっくり話を聞くのは大変なので、時間がないときは「そうなんですね」「大変ですね」などの相づちを打ってさらりと流す対応でも大丈夫です。
聞いている姿勢を見せるだけでも、話している本人に安心感を与えられるでしょう。
なかには自慢話のようになるケースもありますが、アドバイスや賛同は不要なのでそのまま耳を傾けてみてください。
作り話であっても、その世界を肯定して共感の姿勢を持つことが大切です。理解が難しいと感じたときは、認知症の方の立場を実際に自分に置き換えて考えてみるとよいでしょう。
前述した自転車が見当たらない場合の例のように、「盗まれた」などの発言があっても、「そう考えるのも無理はない」と理解して対応することが必要になります。
そのうえで共感を示し、自分は理解されている・うれしいと感じそうな言葉をかけると本人の気持ちも落ち着くでしょう。
例えば、物を盗られたなど架空の被害を訴えたときは間違いを指摘するのではなく、「一緒に探しましょう」や「もう大丈夫」という声かけにもっていくのがおすすめです。
傾聴と共感の姿勢で話を聞いても本人が落ち着かない場合は、うまく話題を変えるのも一つの手です。「そうなんだね。そういえば昨日のテレビで……」などと、本人が興味を持ちそうな話題を投げかければ、気分が変わるケースもあります。
また、別の話題によって少し時間を空けることも、本人の気持ちを落ち着かせるのに有効でしょう。
可能であれば、日頃接点の多い近所の人などには、家族から認知症の症状について打ち明けておくのもおすすめです。
大切な物が見当たらないなど、認知症の本人が困ることが起きたとき、近隣住民や家族のせいにする発言はありがちで、場合によってはトラブルにもなりかねません。あらかじめ事情を説明しておけば、近隣とのトラブルや誤解の予防になるでしょう。
認知症の方が穏やかに生活するためには、周囲が話を合わせることも必要です。そのため、一緒に住んでいる家族にとっては真実でないことに同調せざるを得ないシーンも増えてくるかもしれません。
ただ、関係や心理的距離が近い家族だからこそ、作り話に対して傾聴や共感などをベースとした対応を日々続けるのは難しいものです。
このような状況では、積極的に介護のプロに頼ることも大切です。家族だとどうしても感情的になってしまいがちな場面でも、認知症を理解した介護のプロであれば適切に対応できるでしょう。
また、デイサービスなどの活用や利用回数を増やすことで認知症の方との接触頻度を下げるのも、双方のストレスを軽減して穏やかに暮らすためには有効な方法です。