認知症による時間感覚のズレ
症状・対応法


認知症を発症すると、時間感覚のズレが起こる場合があります。しかし、時間感覚のズレが起こるとどのような症状が現れるのか、正しく理解している方は少ないでしょう。

日常生活に支障をきたす症状もあるため、あらかじめ現れる症状を知り、対策を考えておくことが大切です。

本記事では、認知症で時間感覚のズレが起こる原因や症状、対応法を紹介します。

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認知症で時間感覚のズレが起こる原因

認知症で時間感覚のズレが起こる原因は、「見当識障害」や「記憶障害」によるものです。ここでは、見当識障害と記憶障害について解説します。

見当識障害

見当識とは、日付や時刻、場所、人物、周囲の様子などを総合的に判断して自分の状況を認識する能力です。普段、私たちは日常生活で意識せずに行っています。

しかし、認知症により見当識障害を発症すると、日付や時刻、場所、人物、周囲の様子などの判断が難しくなります。見当識障害は認知症の中核症状で、比較的早い段階から現れる症状です。

見当識障害は、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:認知症の症状<見当識障害>~症状やせん妄との違いを解説~

記憶障害

記憶には、情報を記憶する「記銘」と、それを保存する「保持」、そして記憶を引き出す「想起」の3つの機能があります。認知症によって、これらの機能に障害を受けることを記憶障害といいます。

新しいことが覚えられない、覚えたことを忘れる、過去のことを思い出せないなどがおもな症状です。

記憶障害は、短期記憶障害や長期記憶障害、エピソード記憶の障害、意味記憶の障害、手続き記憶の障害などの種類があります。

どの記憶障害が現れるかは、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、認知症の種類によって異なります。

短期記憶障害は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:認知症の症状<短期記憶障害>~短期記憶障害の症状とは?対応方法や種類を解説~

なお、記憶障害と似た症状に物忘れがありますが、物忘れは自然な老化によるもので記憶障害とは別物になります。

例えば、物忘れではメガネをどこに置いてきたかを忘れますが、記憶障害では置いてきたこと自体を忘れてしまいます。何を忘れたかという健忘感がある場合は物忘れで、忘れていることの認識がない場合は記憶障害です。

認知症による時間感覚のズレで生じる症状

 
認知症によって時間感覚のズレが起こると、さまざまな症状がみられるようになります。

朝と夜の区別がつかない

時間感覚のズレによって、朝と夜の区別がつかなくなる場合があります。そのため、午後2時と深夜2時を間違えて深夜に日中の行動を始めるなど、昼夜逆転の生活になることも少なくありません。

突然深夜に外出したり、電話をかけたりすることもあり、行方不明になるリスクもあるため注意が必要です。

なお、認知症による昼夜逆転は、以下の記事でも解説しています。

関連記事:認知症の症状<昼夜逆転>~認知症による昼夜逆転について 症状や原因、治療方法は?~

睡眠障害

時間感覚のズレから朝と夜の区別がつかなくなると、不眠や過眠といった睡眠障害に発展するおそれがあります。特に不眠は1時間続けて眠るのも困難になるほど、症状が悪化する場合もあります。

また、認知症の場合、日中の活動量の減少や薬の服用なども睡眠障害の原因と考えられます。

季節感の喪失

時間感覚のズレにより、気温や天候などの自然の変化から季節を判断することが難しくなります。

そのため、季節に合わせた適切な服選びが困難になり、夏にコートを着込んだり、冬に薄着になったりしてしまいます。ほかにも、真夏に毛布をかけて寝るといった行動もみられます。

脱水症

時間感覚のズレが起こると、脱水症を起こすリスクも高まります。季節感の喪失から、夏に厚着で過ごしたりエアコンを付けずに過ごしたりすることなどが理由です。

また、徘徊により長時間屋外を歩き回り、汗をかいて脱水症となるケースもあります。脱水症になると頭痛や吐き気などの症状が現れ、命を落とす危険もあるため注意が必要です。

不安や焦燥を感じる

認知症になったからといって、感情がなくなるわけではありません。認知症で時間感覚のズレが起こると、多くの方は不安や焦燥を感じます。

また、朝と夜の区別がつかなくなったり、季節がわからなくなったりすることが失敗体験となり、自信の喪失にもつながります。

家族や友人など身近な人にできないことを指摘されると、つらい気持ちに追い打ちをかけてしまうため、本人に寄り添った対応を心がけましょう。

時間感覚のズレへの対応方法

時間感覚のズレに対応するには、以下の3つの項目を意識して環境を整えることが大切です。

カレンダーや時計を設置する

いつでも日付や時間がわかるよう、よく目にする壁やトイレなどにカレンダーや時計を設置します。

カレンダーは大きめで文字がわかりやすく、はっきりとした色使いのものを選びましょう。時計も大きめを選び、特に日付や曜日が表示されるデジタル時計が最適です。

季節感を意識する

時間感覚のズレを改善するには、季節感を意識して行動するとよいでしょう。例えば、散歩などで外出の機会を増やし、風を感じたり景色を眺めたりすることで季節を感じられます。

その際、「ひまわりが咲いていますよ」「もうすぐお彼岸ですね」など、季節感のある会話をするとさらに効果的です。

睡眠の質を改善する

昼夜逆転生活を解消するには、睡眠の質の改善が重要です。まずは室温や照度など、就寝環境を整える必要があります。エアコンなどで室内を適温に設定し、なるべく静かで暗い環境にしましょう。

さらに、日中は昼寝を避け適度な運動を行い、食事の時間を規則正しくし、入眠と覚醒の時間を固定すると効果的です。

認知症による時間感覚のズレについて理解し、適切に対応しよう


認知症を発症すると、見当識障害や記憶障害が原因となり時間感覚のズレが起こる場合があります。時間感覚のズレが起こると、昼夜逆転、睡眠障害、脱水、不安や焦燥を感じるといった症状がでます。

時間感覚のズレが生じたら、カレンダーや時計の設置、季節感を意識した行動、睡眠の質を改善などで適切に対応しましょう。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2025年4月8日

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