記憶には、情報を記憶する「記銘」と、それを保存する「保持」、そして記憶を引き出す「想起」の3つの機能があります。認知症によって、これらの機能に障害を受けることを記憶障害といいます。
新しいことが覚えられない、覚えたことを忘れる、過去のことを思い出せないなどがおもな症状です。
記憶障害は、短期記憶障害や長期記憶障害、エピソード記憶の障害、意味記憶の障害、手続き記憶の障害などの種類があります。
どの記憶障害が現れるかは、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、認知症の種類によって異なります。
短期記憶障害は、以下の記事を参考にしてください。
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認知症の症状<短期記憶障害>~短期記憶障害の症状とは?対応方法や種類を解説~
なお、記憶障害と似た症状に物忘れがありますが、物忘れは自然な老化によるもので記憶障害とは別物になります。
例えば、物忘れではメガネをどこに置いてきたかを忘れますが、記憶障害では置いてきたこと自体を忘れてしまいます。何を忘れたかという健忘感がある場合は物忘れで、忘れていることの認識がない場合は記憶障害です。
認知症によって時間感覚のズレが起こると、さまざまな症状がみられるようになります。
時間感覚のズレによって、朝と夜の区別がつかなくなる場合があります。そのため、午後2時と深夜2時を間違えて深夜に日中の行動を始めるなど、昼夜逆転の生活になることも少なくありません。
突然深夜に外出したり、電話をかけたりすることもあり、行方不明になるリスクもあるため注意が必要です。
なお、認知症による昼夜逆転は、以下の記事でも解説しています。
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認知症の症状<昼夜逆転>~認知症による昼夜逆転について 症状や原因、治療方法は?~
時間感覚のズレから朝と夜の区別がつかなくなると、不眠や過眠といった睡眠障害に発展するおそれがあります。特に不眠は1時間続けて眠るのも困難になるほど、症状が悪化する場合もあります。
また、認知症の場合、日中の活動量の減少や薬の服用なども睡眠障害の原因と考えられます。
時間感覚のズレにより、気温や天候などの自然の変化から季節を判断することが難しくなります。
そのため、季節に合わせた適切な服選びが困難になり、夏にコートを着込んだり、冬に薄着になったりしてしまいます。ほかにも、真夏に毛布をかけて寝るといった行動もみられます。
時間感覚のズレが起こると、脱水症を起こすリスクも高まります。季節感の喪失から、夏に厚着で過ごしたりエアコンを付けずに過ごしたりすることなどが理由です。
また、徘徊により長時間屋外を歩き回り、汗をかいて脱水症となるケースもあります。脱水症になると頭痛や吐き気などの症状が現れ、命を落とす危険もあるため注意が必要です。
認知症になったからといって、感情がなくなるわけではありません。認知症で時間感覚のズレが起こると、多くの方は不安や焦燥を感じます。
また、朝と夜の区別がつかなくなったり、季節がわからなくなったりすることが失敗体験となり、自信の喪失にもつながります。
家族や友人など身近な人にできないことを指摘されると、つらい気持ちに追い打ちをかけてしまうため、本人に寄り添った対応を心がけましょう。