料理ができなくなるのは認知症が原因?
老化との違いと受診を考えるタイミング


料理中に手順がわからず手が止まる、火を消し忘れる、同じ料理を何度も作ってしまう、といった様子を自覚し、「自分は認知症なのでは?」と不安になっている方もいるのではないでしょうか。

これまでできていた料理がうまくいかなくなるのは、認知症の初期に見られるサインの一つとされています。ただし、老化や疲れによって起こる場合もあるため、それだけで認知症との判断はできません。

本記事では、料理ができなくなる変化と認知症との関係、老化との違い、受診の目安について解説します。併せて家族が避けるべき対応やサポートのポイント、安全に料理を続けるための工夫も紹介します。

料理ができなくなるのは認知症のサイン?

 
料理中の様子の変化は、初期の認知症に気付くきっかけになることがあります。ここでは、料理の過程に表れやすい変化と認知症の初期症状について解説します。

初期に見られる症状の一つ
  • 料理に時間がかかるようになった
  • 味付けが今までと違う
  • 家電の操作がわからなくなる
このような症状は、認知症の初期に見られるサインの一つといわれています。

認知症になると「行動するために必要な段取りを考える力」が低下することがあります。そのため、メニューを考える、料理する、盛り付けるといった一連の動作がうまくつながらなくなります(実行機能障害)。

ただし、こうした変化は老化や疲れているときなどでも起こりうることです。認知症であると速断せず、複数の変化が続いていないかを確認することが大切です。

認知症の初期症状

認知症の初期症状では、次のような変化が見られることがあります。
 
ただし、こうした症状の表れ方や程度には個人差があり、すべての人に同じように見られるわけではありません。

認知症は、早期に気付き、適切な対応や治療につなげることで重症化を防ぐ取り組みが重要です。サインを見逃さないよう注意し、気になる変化が続く場合は、早めに専門機関へ相談しましょう。

これって認知症?|料理中のトラブルのチェックポイント

普段とは違う料理中のトラブルをきっかけに、「もしかして認知症かも」と不安に感じることはありませんか。ここでは、認知症の症状として起こりうるトラブルを紹介します。気になる変化がないか、チェックしてみましょう。

同じ料理を何度も作る・同じ食材ばかり購入している

認知症による記憶障害の場合、「買ったものを忘れる」というより「買ったこと自体を覚えていない」ことがあります。そのため、同じ食材を何度も購入してしまうケースが見られます。また、判断力の低下にともない、必要がないのに思わず購入して、同じ食材が家に溜まってしまうこともあります。

さらに、認知症による行動障害では、日常のさまざまなことに対し同じ行動を繰り返す「常同行動」が見られる場合があります。そのため、同じメニューの料理ばかり作り続けるなどの常同的な行動をとるケースもあるでしょう。

料理の味が変わった

認知症による脳への影響は味覚にもおよび、味覚障害が起こることも珍しくありません。味覚障害では、甘みや苦み、塩味など味覚を感じる機能に変化が起こります。その結果、味の感じ方が変わり、料理の味付けにも変化が生じることがあります。

ガスコンロの火を消し忘れている

認知症の症状の一つである短期記憶障害では、火を点けたこと自体を覚えていない場合があります。そのため、火を消す行動に結び付かず、消し忘れてしまうことがあります。結果として、鍋を焦がすなどの事故につながるおそれもあります。

料理が途中で終わってしまっている

認知症の主症状の一つに実行機能障害があります。これは物事を計画し、段取り良く行うことが困難になる症状です。

実行機能障害が生じた場合、料理のように複数の工程を順序よく進める作業が難しくなり、レシピどおりに作業が進められなくなることがあります。ときには味付けしないまま中途半端に調理を終わらせてしまうこともあるでしょう。工程が複雑な料理ほど、完成させることが難しくなる傾向があります。

台所で物を取ろうとして転倒した

認知症になると、理解力・判断力の低下により周囲の状況を正確に把握することが難しくなる場合があります。距離感がつかみにくくなったり注意力が低下したりして、転倒のリスクが高まります。また、歩行障害やバランス能力の低下によって転倒が起きることも少なくありません。

認知症と老化の違い

年齢を重ねると記憶力や判断力、適応力、筋力などは少しずつ低下していくため、「料理に時間がかかる」「作るのが面倒だと感じて料理をしなくなる」などの変化も自然に生じます。では、こうした老化と認知症の違いはどこにあるのでしょうか。

老化による変化は、記憶したことを思い出す力が弱くなるために起こります。例えば「料理の手順を思い出すのに時間がかかるが、思い出せる」といった場合は老化による物忘れの可能性があります。

こうした老化による物忘れは、体験したことの一部を忘れてしまっても、レシピを見る、家族に言われるなどのきっかけがあれば思い出せる場合が多いのが特徴です。

一方、認知症では「料理の手順がわからなくなる」というように、体験したこと自体を思い出せなくなる場合があります。つまり、思い出せることが多い老化に対し、経験そのものが抜け落ちるような変化が見られるのが認知症です。

早期に認知症を発見するには|受診の目安

 
家族に「認知症かもしれない」と疑えるような症状があった場合、どの時点で医療機関を受診したらよいのでしょうか。受診の目安となるサインを紹介します。
  • 料理の失敗が一時的ではなく繰り返されている場合
    同じような失敗(焦がす、手順を忘れる、味付けがないなど)が何度も続いたり、以前は問題なく作れていた料理が作れなくなったりしているとき。

  • 料理中以外の日常生活にも変化が見られる場合
    金銭管理の場面や服薬、約束事、会話などのシーンにも、料理中のトラブルと同様の認知症と疑われるような問題が見られるとき。

  • 火の消し忘れや転倒など、安全面での不安がある場合
    火を消し忘れて鍋を焦がしてしまう、台所での転倒やケガが明らかに増えているなどのとき。

上記のサインに加えて、本人に注意をしたものの全く改善が見られずに対応に困ることが増えたり、サポートに限界を感じたりする場合にも受診を検討してみるとよいでしょう。

「認知症かもしれない……」家族がとってはいけないNG行動

認知症かもしれない家族と接する際には、ついついとってしまいがちなNG行動があります。良かれと思ってとった行動でも、本人には不安や混乱につながってしまうこともありますので、十分注意しましょう。
  • できないことを責める
    強い口調で注意したり、大きな声で怒鳴ったりするのはNGです。認知症の方の不安を増長させてしまうことにつながりかねません。

  • できることまで取り上げる
    心配しすぎるあまり、過度に行動を制限してしまうのもNGです。認知症の方でもできることは残っているので、すべて代わりにやってしまうと、自信を取り戻す機会をつぶしてしまう可能性もあります。

  • 問い詰める
    失敗が続いたからといって、原因を問い詰めるのはNGです。認知症の方は質問攻めにあうと混乱状態になりやすく、パニックに陥ってしまうこともあります。

  • できないと決めつけてしまう
    自尊心を傷付けるような対応をとるのはNGです。信頼関係を失うと認知症の方は心を閉ざしてしまいます。その結果、さらに症状が進む可能性もあります。

家族ができるサポートのポイント

「危ないから」「心配だから」といってすべてを任せないようにするのではなく、できる範囲で役割を持ってもらうことが大切です。
  • 献立を考える
  • 買い物をする
  • 食材を切る
  • 盛り付けや配膳をする
  • 食器洗いをする
料理はこのような工程に分けられます。そのなかで、献立の決定や食材選びなど、できる作業を無理のない範囲で担ってもらいましょう。その際は一緒に行うという姿勢も大切です。相手のペースに合わせ、わからなくなった場合は見本を示しながらサポートするとよいでしょう。

長く複雑な説明では内容を理解しにくい場合があるため、話す際は簡潔に、ゆっくり伝えることを意識するのも大事です。

一緒に取り組めば、本人の安心感につながるだけでなく、日常のちょっとした変化にも早い段階で気付きやすくなります。さりげないサポートを心がけ、できたことに対しては忘れずに感謝を伝えましょう。小さな達成感が生まれ、本人の自信や意欲の維持につながります。

認知症でも安全に料理を続けるための対策

 
認知症の症状が表れても、工夫次第で料理を続けることは可能です。大切なのは、事故を防ぐための視点をもつことと、無理なく続けられる環境をつくることです。

以下の対策例を参考に、安全に料理を続けられる工夫をしましょう。
  • ガスコンロ使用時の火の消し忘れによる火災防止
    コンロをIHヒーターや、安全装置が付いているものに変える
    台所に火災報知機を設置し、火災の早期発見につなげる

  • 転倒防止
    床を滑りにくい素材に変える
    床掃除を定期的に行い、油汚れなど滑りやすい原因を取り除く
    普段から使用する食器類や調理器具などを高い場所に置かない

  • 調理の負担の軽減
    工程の多い料理を避け、カット野菜などを活用する
    電子レンジのみでできる料理を取り入れたり、使用する調理器具を最小限にしたりする

  • 遠方にいる場合の対応
    見守りカメラを設置する
    すぐ駆け付けてもらえるよう、近所の知人と連絡がとれるようにしておく
認知症の進行には個人差があります。「今の状態でできること」を定期的に見直せば、認知症の方本人だけでなく、周りの家族も安心して暮らせるでしょう。

認知症のサインを知って、早期に対策をとろう


料理中の様子の変化は、認知症に気付くきっかけの一つとなることがあります。一度の失敗や変化だけで判断せず、同じような問題が繰り返されていないか、日常生活全体に影響が出ていないかを見ていくことが重要です。

認知症は、早期に気付くことで適切な治療につなげられ、その後の生活の安心にも寄与します。気になる変化が見られた場合は無理に抱え込まず、医療機関の受診も検討しましょう。

認知症であっても、工夫次第でこれまでの生活を続けられる場面は多くあります。本人の「できること」を大切にしながら家族が寄り添い、環境を整えていくことが大切です。

 
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菊池 大和[医師]

医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長。地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、活動が評価され2024年11月にTIMEアジア版に掲載される。

資格:日本慢性期医療協会総合診療認定医・日本医師会認定健康スポーツ医・認知症サポート医・身体障害者福祉法指定医(呼吸器)・厚生労働省初期臨床研修指導医・神奈川県難病指定医 など

公開日:2026年4月23日

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