普段とは違う料理中のトラブルをきっかけに、「もしかして認知症かも」と不安に感じることはありませんか。ここでは、認知症の症状として起こりうるトラブルを紹介します。気になる変化がないか、チェックしてみましょう。
認知症による記憶障害の場合、「買ったものを忘れる」というより「買ったこと自体を覚えていない」ことがあります。そのため、同じ食材を何度も購入してしまうケースが見られます。また、判断力の低下にともない、必要がないのに思わず購入して、同じ食材が家に溜まってしまうこともあります。
さらに、認知症による行動障害では、日常のさまざまなことに対し同じ行動を繰り返す「常同行動」が見られる場合があります。そのため、同じメニューの料理ばかり作り続けるなどの常同的な行動をとるケースもあるでしょう。
認知症による脳への影響は味覚にもおよび、味覚障害が起こることも珍しくありません。味覚障害では、甘みや苦み、塩味など味覚を感じる機能に変化が起こります。その結果、味の感じ方が変わり、料理の味付けにも変化が生じることがあります。
認知症の症状の一つである短期記憶障害では、火を点けたこと自体を覚えていない場合があります。そのため、火を消す行動に結び付かず、消し忘れてしまうことがあります。結果として、鍋を焦がすなどの事故につながるおそれもあります。
認知症の主症状の一つに実行機能障害があります。これは物事を計画し、段取り良く行うことが困難になる症状です。
実行機能障害が生じた場合、料理のように複数の工程を順序よく進める作業が難しくなり、レシピどおりに作業が進められなくなることがあります。ときには味付けしないまま中途半端に調理を終わらせてしまうこともあるでしょう。工程が複雑な料理ほど、完成させることが難しくなる傾向があります。
認知症になると、理解力・判断力の低下により周囲の状況を正確に把握することが難しくなる場合があります。距離感がつかみにくくなったり注意力が低下したりして、転倒のリスクが高まります。また、歩行障害やバランス能力の低下によって転倒が起きることも少なくありません。
年齢を重ねると記憶力や判断力、適応力、筋力などは少しずつ低下していくため、「料理に時間がかかる」「作るのが面倒だと感じて料理をしなくなる」などの変化も自然に生じます。では、こうした老化と認知症の違いはどこにあるのでしょうか。
老化による変化は、記憶したことを思い出す力が弱くなるために起こります。例えば「料理の手順を思い出すのに時間がかかるが、思い出せる」といった場合は老化による物忘れの可能性があります。
こうした老化による物忘れは、体験したことの一部を忘れてしまっても、レシピを見る、家族に言われるなどのきっかけがあれば思い出せる場合が多いのが特徴です。
一方、認知症では「料理の手順がわからなくなる」というように、体験したこと自体を思い出せなくなる場合があります。つまり、思い出せることが多い老化に対し、経験そのものが抜け落ちるような変化が見られるのが認知症です。
家族に「認知症かもしれない」と疑えるような症状があった場合、どの時点で医療機関を受診したらよいのでしょうか。受診の目安となるサインを紹介します。
-
料理の失敗が一時的ではなく繰り返されている場合
同じような失敗(焦がす、手順を忘れる、味付けがないなど)が何度も続いたり、以前は問題なく作れていた料理が作れなくなったりしているとき。
-
料理中以外の日常生活にも変化が見られる場合
金銭管理の場面や服薬、約束事、会話などのシーンにも、料理中のトラブルと同様の認知症と疑われるような問題が見られるとき。
-
火の消し忘れや転倒など、安全面での不安がある場合
火を消し忘れて鍋を焦がしてしまう、台所での転倒やケガが明らかに増えているなどのとき。
上記のサインに加えて、本人に注意をしたものの全く改善が見られずに対応に困ることが増えたり、サポートに限界を感じたりする場合にも受診を検討してみるとよいでしょう。
「認知症かもしれない……」家族がとってはいけないNG行動
認知症かもしれない家族と接する際には、ついついとってしまいがちなNG行動があります。良かれと思ってとった行動でも、本人には不安や混乱につながってしまうこともありますので、十分注意しましょう。
-
できないことを責める
強い口調で注意したり、大きな声で怒鳴ったりするのはNGです。認知症の方の不安を増長させてしまうことにつながりかねません。
-
できることまで取り上げる
心配しすぎるあまり、過度に行動を制限してしまうのもNGです。認知症の方でもできることは残っているので、すべて代わりにやってしまうと、自信を取り戻す機会をつぶしてしまう可能性もあります。
-
問い詰める
失敗が続いたからといって、原因を問い詰めるのはNGです。認知症の方は質問攻めにあうと混乱状態になりやすく、パニックに陥ってしまうこともあります。
-
できないと決めつけてしまう
自尊心を傷付けるような対応をとるのはNGです。信頼関係を失うと認知症の方は心を閉ざしてしまいます。その結果、さらに症状が進む可能性もあります。