「同じ話を繰り返す」は認知症のサイン?
原因と向き合い方


親や配偶者が何度も同じ話をするようになり、「認知症かもしれない」と不安を感じていませんか。本人に悪気はないとわかっていても、何度も同じ話を聞くうちにストレスを覚え、どのように対応すれば良いのか悩む方も多いでしょう。

同じ話を繰り返すようになる原因は、必ずしも認知症だけに限らず、不安やストレスなどさまざまな要因が考えられます。家族の接し方によっては、本人に安心感が生まれ、同じ話の繰り返しが収まることもあります。

この記事では、認知症の方が同じ話を繰り返すおもな原因や避けたい対応、適切な接し方についてわかりやすく解説します。併せて、軽度認知障害(MCI)の段階で早めに対策する重要性についても取り上げます。ぜひ参考にしてください。

「同じ話を繰り返す」のは認知症?

 
「同じ話を繰り返すようになった」「物忘れが目立つようになってきた」などの変化は、認知症の初期症状としてよく見られます。ただし、加齢やストレス、疲労などが原因で同じ話を繰り返すようになることも珍しくないため、一概に認知症と決めつけることはできません。

認知症による物忘れでは、体験そのものを忘れてしまうため、「話した」という行為自体を覚えていません。そのため、本人は同じ話を繰り返している自覚がないことも多く、何度も同じ内容を話してしまいます。

一方、加齢による物忘れは記憶が失われているのではなく、思い出しにくくなっている状態です。時間をかけたりヒントをもらったりすれば、話したことを思い出せる場合があります。

認知症の方が同じ話を繰り返す5つの原因

 
認知症の方が同じ話を繰り返すことには、さまざまな原因があります。以下では同じ話を繰り返す原因を5つに分けて解説します。

記憶障害によるもの

認知症の症状の一つである記憶障害では、特に新しい出来事や直近の記憶を保持しにくくなるケースがあります。そのため、直前に話していてもすぐに忘れてしまうのです。本人は話したこと自体を覚えていないため、自覚なく何度も同じ話をしてしまいます。

不安やストレスによるもの

認知症の方は情報を整理する力の低下や環境の変化により、不安やとまどいを感じていることがあります。そのような不安やストレスから解放されたい、安心したいという気持ちから繰り返し同じ話をする場合もあるでしょう。

認知症の初期段階では、昔の記憶が比較的保たれているケースがあります。そのため、安心感を得たい、自信を取り戻したいという気持ちから、昔の思い出話や成功体験を繰り返す方も少なくありません。

保続症状によるもの

認知症の症状の一つに「保続(ほぞく)」と呼ばれるものがあります。脳の損傷などにより思考の切り替えが困難になるため、同じ言葉や行動を繰り返してしまう症状です。頭を切り替えるのが難しくなるため、何度も同じ話をしてしまいます。

見当識障害によるもの

見当識障害も認知症で見られる症状の一つであり、時間の感覚があいまいになることで「いつ話したか」「何回話したか」などの把握が難しくなります。そのため、まるで初めて話したかのように同じ話を繰り返してしまいます。

また、「今日は何をする日なのか」「なぜここにいるのか」がわからなくなり、不安感から同じ質問を繰り返す場合もあります。

強く残った感情や記憶によるもの

認知症の方は出来事の詳細を忘れてしまっても、そのときに感じたうれしさや不安といった感情は残りやすいとされています。そのため、強い感情をともなった出来事は印象深い記憶として残り、繰り返して話す傾向にあります。

また、同じ話をする背景には「気持ちをわかってほしい」「共感してほしい」という思いが隠れている場合もあります。

認知症の方が同じ話を繰り返すときに避けるべき対応

認知症の方が同じ話を繰り返すとき、周囲の対応によっては、本人の不安や混乱を強めてしまう場合もあります。同じ話を繰り返す相手に対して、やってはいけない対応はおもに3つです。

「さっきも聞いた」と強く指摘する

同じ話を繰り返し聞かされていると、イライラしてしまい「その話、さっきも聞いたよ」と強く指摘したくなるかもしれません。しかし、強く指摘すると認知症の方は「責められた」と感じてしまい、不安や混乱につながる可能性もあります。

本人は話をしたという行為自体を忘れていることが多いため、悪気があるわけでも、わざとやっているわけでもありません。強く指摘するのではなく、落ち着いて受け止める姿勢を意識しましょう。

頭ごなしに否定する

事実と異なる内容であっても、頭ごなしに「違う」と否定することは避けましょう。認知症の方の発言には、本人なりの認識や感情があります。そのため、否定されると不安や混乱を強めてしまうことがあります。

「否定された」「怒られた」という嫌な感情だけが残り、本人の失敗体験として記憶されてしまう可能性もあるので、注意しましょう。

話を無視する

何度も繰り返される話に疲れやストレスを感じると、話を聞き流したくなるかもしれません。しかし、無視を繰り返したり完全に無反応だったりすると「自分は必要とされていないのでは」と、認知症の方の孤独感につながることもあります。

同じ話をするという行為自体が本人にとっての安心材料になっている可能性もあります。「そうなんだね」「それは大変だったね」など、短い相づちだけでも行うことで、本人の安心につながるでしょう。

認知症の方が同じ話を繰り返す場合の対処法

 
同じ話を繰り返す認知症の方に、どう対応すれば良いか悩むこともあるでしょう。以下では、本人と家族の双方が負担を減らすための対処法を紹介します。

まずは否定せず話を聞く

本人の話を注意したり否定したりしてはいけません。相手の話をしっかりと聞き、理解を示す姿勢が大切です。

認知症の方にとって、話すことそのものが安心を得るための重要な行為となる場合もあります。相手の気持ちを受け止めて共感し、本人の気持ちに寄り添いましょう。寄り添う気持ちは相手との信頼関係を築くきっかけにもつながります。

ただし、毎回同じ話に丁寧な対応をし続けるのは、家族にとって大きな負担になりかねません。無理のない範囲で話を聞きながら、家族自身の心身の負担にも配慮することが大切です。

話題を自然に切り替える

同じ話をし始めたら、さりげなく別の話題へとつなげるのも効果的です。その際は、話している内容に出てくるキーワードを拾い、話題を広げるとよいでしょう。例えば、昔住んでいた場所の話であれば、その場所はどのようなところだったのかなど、話を広げることで、自然に別の会話へ移りやすくなります。

話を広げられるキーワードが見つからないときは、「お散歩に行く?」「テレビ見る?」など、別の物や場所へと関心が向くようなきっかけを作るのも方法のひとつです。

気になる場合は早めに専門医へ相談

同じ話を何度も繰り返すようになった場合は、認知症をはじめとする病気が隠れている可能性もあります。気になる場合は早めにかかりつけ医や地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

認知症は早期発見、早期対応が重要です。症状が軽いうちに相談すれば、今後の生活や介護に向けた準備もしやすくなるでしょう。

認知症の方の介護を続けるのは大変です。専門家に相談すれば具体的な対応のアドバイスを受けられることもありますので、一人もしくは家族だけで抱え込まず、介護サービスや医療機関を頼りましょう。

軽度認知障害(MCI)での早期対策が重要

軽度認知障害(MCI)では、物忘れがおもな症状とされています。しかし、日常生活への影響は比較的少なく、認知症と判断するには至らない状態です。そのため正常な状態と認知症の中間段階、あるいは認知症の前段階と考えられています。

MCIは、1年後に約5~15%が認知症に移行してしまうリスクがある一方で、1年に約16~41%が健常な状態へと回復する見込みがあります。MCIの段階で、生活習慣の改善や適切な予防に取り組むことが重要です。※

『あたまとからだを元気にする MCIハンドブック』(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)を参考に朝日生命が作成

同じ話を繰り返すなど気になる状態が見られた場合は、「年齢のせい」と決めつけず、早めに医療機関に相談しましょう。MCIの段階で気付き、対策を始めることが認知症の予防や進行を遅らせるための重要なポイントとなります。

認知症のサインに気付いたら、早めの受診と適切な対応を


同じ話を繰り返す行為には、認知症による記憶障害だけでなく、不安やストレス、見当識障害などさまざまな原因があります。本人に自覚がない場合も多いため「さっきも聞いた」と強く指摘したり、頭ごなしに否定したりするのは避けましょう。

大切なのは本人の気持ちに寄り添うことです。話を聞き、必要に応じて話題を切り替えるなど、できる範囲で対応しましょう。
同じ話を繰り返すなど気になる変化が見られた場合は、早めに専門医へ相談することも重要です。MCIの段階で適切な対策を始めることが、認知症の予防や進行を遅らせることにもつながります。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

菊池 大和[医師]

医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長。地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、活動が評価され2024年11月にTIMEアジア版に掲載される。

資格:日本慢性期医療協会総合診療認定医・日本医師会認定健康スポーツ医・認知症サポート医・身体障害者福祉法指定医(呼吸器)・厚生労働省初期臨床研修指導医・神奈川県難病指定医 など

公開日:2026年7月14日

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