介護が必要になったら?介護保険や要介護度を解説!

高齢化が進む日本では、自分や親が高齢者といえる年齢になると、将来の介護に不安を感じる方もいるかもしれません。介護が必要になったときのために、国からどのような支援が受けられるのかを事前に知っておくと安心です。

介護や支援が必要な場合は、公的介護保険制度を利用でき、1割~3割の自己負担額で介護サービスや介護予防サービスが受けられます。ただし、要介護度ごとに利用できる介護サービスが異なるため注意が必要です。

そこで今回は、公的介護保険制度の概要や介護サービスの種類、要介護度ごとに利用できるサービスについて詳しく解説します。

介護とは?看護・介助との違いもチェック

ここでは、介護とは何かという点に加えて、似た言葉である「看護」や「介助」との違いについて見ていきましょう。

介護の定義について

介護とは、日常生活に困難を抱えている方に対する身体的援助や日常生活全般の支援のことです。身体的援助には、食事、排せつ、入浴、着替えなどを手助けすることが含まれます。

なお、総務省統計局の発表(※)によると、2023(令和5)年5月1日現在の65歳以上の人口は、約3,620万人で、日本の総人口の約3割を占めています。高齢者人口の増加にともない、日本が直面する大きな問題の一つが介護人材不足です。

「介護」と「看護」は何が違う?

介護と看護の違いは、大きく分けて「職種」「資格」「仕事内容」の3つが挙げられます。

介護の仕事には、介護職員、訪問介護員、介護福祉士、社会福祉士などの職種があり、資格がなくてもできるものから、国家資格が必要なものまでさまざまです。仕事内容は、介護が必要な方への幅広いサポートで、「福祉職」に該当します。

一方、看護の仕事には、看護師、助産師、保健師などの職種があります。どの現場でも資格が必要で、准看護師(都道府県知事資格)を除くすべてが国家資格です。仕事内容は、医師の診察・治療をサポートし、医療が必要な人に適切なフォローをすることで、「医療職」に該当します。

「介護」と「介助」は何が違う?

介助とは、日常生活での動作が困難な人の近くで手助けすることです。具体的には、食事、排せつ、入浴、着替えなどで目的を達成できるようサポートします。

つまり、介助は介護の手段の一つであり、介助も介護に含まれると考えるとわかりやすいでしょう。

公的介護保険制度とは?制度の特徴や民間介護保険との違い

公的介護保険制度は、介護や支援が必要な方に対して、介護や介護予防にかかる費用の一部を給付する制度のことです。

公的介護保険制度による各種介護サービスを利用するには、まず市区町村窓口(地域包括支援センター)に申請を行ない、要介護(要支援)認定を受けましょう

公的介護保険制度の特徴や仕組み

公的介護保険制度は、要介護者(要支援者)とその家族を社会全体で支える制度です。特徴として、以下の3つが挙げられます。

・公的介護保険制度の利用者の自立支援が目的
・要介護者(要支援者)が希望するサービスを利用できる
・給付と負担の関係を明確にする「社会保険方式」が採用されている

また、公的介護保険制度のおもな関係者は、以下のとおりです。

・保険者(制度を運営する自治体)
・被保険者(介護保険料を支払っている人)
・サービス事業者(介護サービスを提供する事業者)

民間の介護保険とは何が違う?

介護保険には、公的介護保険と民間介護保険の2種類があります。民間介護保険は、公的介護保険制度を補完するために、民間の保険会社が提供する保険です。

両者の違いとしては、公的介護保険制度が「介護サービス」の提供であるのに対し、民間介護保険は「現金」を直接給付する点が挙げられます

また、公的介護保険制度は40歳以上になると自動的に加入しますが、民間介護保険は任意加入です。
給付要件も、民間介護保険では会社ごとに独自の基準を設定しています。

介護保険料の全国平均はどのくらい?

厚生労働省の発表(※)によると、第1号被保険者(65歳以上の人)の介護保険料の全国平均月額は以下のとおりです。
期間 介護保険料(月額)
2000(平成12)年度~2002(平成14)年度 2,911円
2003(平成15)年度~2005(平成17)年度 3,293円
2006(平成18)年度~2008(平成20)年度 4,090円
2009(平成21)年度~2011(平成23)年度 4,160円
2012(平成24)年度~2014(平成26)年度 4,972円
2015(平成27)年度~2017(平成29)年度 5,514円
2018(平成30)年度~2020(令和2)年度 5,869円
2021(令和3)年度~2023(令和5)年度 6,014円
上記の表からもわかるように、介護保険料は制度創設以来、上昇し続けています。その背景には、少子高齢化などの社会問題があります。

介護サービスの自己負担額はいくら?

介護サービスの自己負担額は原則1割ですが、所得に応じて2割~3割の自己負担額が発生する場合があります。

2割~3割の自己負担額に該当する場合は、以下の表を参照してください。
 65歳以上の高齢者が1人の世帯(単身者を含む)】

年間合計所得

負担割合

280万円以上340万円未満

2割負担

340万円以上

3割負担

 

65歳以上の高齢者が2人以上の世帯】

年間合計所得

負担割合

346万円以上463万円未満

2割負担

463万円以上

3割負担

本人の合計所得金額によっても負担割合が異なりますので、注意しましょう。

介護サービスの内容は要介護の認定区分(要介護度)によって異なる

介護サービスを利用する場合は、要介護認定を受けなければなりません。ここからは、要支援・要介護の概要や、認定区分(要介護度)ごとの特徴、サービスの違いについて解説します。

要支援とは

要支援とは、現在は介護が不要ですが、将来的には介護が必要となることが予想され、日常生活動作に支援が必要な状態のことです。要支援の認定区分は「要支援1・2」の2段階に分かれており、介護認定審査会で認定区分が決定されます。

要支援認定者へのサービス提供の目的は、基本的には要介護状態にならないように予防することのため、利用できるのは介護予防サービス(予防給付)です。

要介護とは

要介護とは、身体的または精神的な障害により、「食事・排せつ・入浴・着替え」などの日常生活動作に介護が必要な状態です。要介護の認定区分は「要介護1~5」の5段階に分かれており、要支援認定と同様に介護認定審査会で認定区分が決定されます。

要支援認定者が受けられるサービスを予防給付と呼ぶのに対し、要介護認定者が受けられるサービスを介護給付と呼びます。

要介護度別に見た身体状態の特徴

要介護の認定区分(要介護度)は、身体状態(介護レベル)に応じて「要支援1・2」と「要介護1~5」の7段階に分かれています。

要介護度それぞれの身体状態の特徴を、下記の表にまとめました。
 

要介護度

身体状態の特徴

要支援

1

介護は必要ないが、立ち上がりや起き上がりなどの能力が低下している状態。一部の動作で何らかの支えが必要な場合がある

2

日常生活で部分的に介護が必要。

次のいずれかに該当する場合は「要介護1」となる。

・認知機能の低下が見られる

・おおむね6か月以内に介護の手間が増加する可能性がある

要介護

1

2

軽度の介護が必要。食事・排せつ・立ち上がり・歩行などで何らかの支えが必要。

3

中等度の介護が必要。日常生活動作を自力で行なうのが難しく、歩行器や車いすを利用することがある。入浴などに全面的に介助が必要。

4

重度の介護が必要。排せつ・入浴・着替えなどがほとんどできず、認知機能の著しい低下が見られる

5

最重度の介護が必要。ほぼ寝たきりで、コミュニケーションも困難な状態

要介護度ごとに利用できるサービス

要介護認定者が受けられる介護サービスは、要介護度によって異なります。下記の表は、要支援1から要介護5までの各段階で利用できる在宅サービスと地域密着型サービスをまとめたものです。
 

要介護度

利用回数の目安

利用可能な介護サービスの例

要支援1

2回~3

・週1回の訪問型サービス

・通所型サービス

・月2回の施設への短期入所

要支援2

3回~4

・週2回の訪問型サービス

・通所型サービス

・月2回の施設への短期入所

・福祉用具貸与(歩行補助つえ)

要介護1

11回程度

・週3回の訪問介護

・週1回の訪問看護

・週2回の通所型サービス

3カ月に1週間程度の短期入所

・福祉用具貸与(歩行補助つえ)

要介護2

11回~2回程度

・週3回の訪問介護

・週1回の訪問看護

・週3回の通所型サービス

3カ月に1週間程度の短期入所

・福祉用具貸与(認知症老人徘徊感知機器)

要介護3

12回程度

・週2回の訪問介護

・週1回の訪問看護

・週3回の通所型サービス

・毎日1回、夜間の巡回型訪問介護

2カ月に1週間程度の短期入所

・福祉用具貸与(車イス、特殊寝台)

要介護4

12回~3回程度

・週6回の訪問介護

・週2回の訪問看護

・週1回の通所型サービス

・毎日1回、夜間対応型訪問介護

2カ月に1週間程度の短期入所

・福祉用具貸与(車イス、特殊寝台)

要介護5

13回~4回程度

・週5回の訪問介護

・週2回の訪問看護

・週1回の通所型サービス

・毎日2回(早朝・夜間)の夜間対応型訪問介護

1カ月に1週間程度の短期入所

・福祉用具貸与(特殊寝台、エアーマットなど)

出典:公益財団法人生命保険文化センターホームページ「ひと目でわかる生活設計情報」をもとに作成

また、在宅サービス・地域密着型サービスでは、1カ月当たりに利用できるサービスの量(支給限度額)が、要介護度に応じて定められています。万が一、サービス利用で支給限度額を超過した場合、超過分は全額自己負担となるため注意しましょう。

介護サービスにはどのような種類がある?

介護サービスにどのような種類があるのか把握しておくことで、自分や家族に介護が必要になったときでも慌てずに対応できるでしょう。

介護サービスの種類は、一般的に下記の5つに分けられます。

・居宅介護支援
・居宅介護サービス
・地域密着型サービス
・施設介護サービス
・介護予防サービス

ここからは、それぞれの特徴について解説します。

居宅介護支援

居宅介護支援とは、要介護認定者や家族の要望をヒアリングし、介護サービスのケアプランを作成するサービスです。ケアプランの作成は、介護を必要とする人が各種介護サービスを適切に利用するために欠かせません。

居宅介護支援を行なう専門職を「ケアマネジャー(介護支援専門員)」といい、ケアプランの作成のほか、以下のような業務を担当しています。

・介護サービス利用者と各種介護サービスを提供する事業者との仲介
・介護保険施設への入所に必要な手続きのサポート など

居宅介護サービス

居宅介護サービスとは、自宅で介護を受けられるサービスです。居宅介護サービスには、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」などがあります。

また、「要介護1」以上の認定を受けており、1人で公共交通機関を利用できない場合は、「介護タクシー」も利用可能です。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、介護が必要な方ができるだけ住み慣れた場所で暮らし続けられるようにサポートするサービスを指します。ただし、サービスの特性上、原則お住まいの市区町村が提供するサービスしか利用できません。

地域密着型サービスの例としては、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や「夜間対応型訪問介護」「地域密着型通所介護」などが挙げられます。

施設介護サービス

施設介護サービスとは、「介護保険施設」に入所することで受けられる介護サービスです。介護保険施設には、おもに「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」「介護療養型医療施設(2023年度末に完全廃止)」の4種類があります。

なかでも「特別養護老人ホーム」は公的機関が運営している施設で、原則要介護3以上の認知症患者が入所でき、費用が比較的安価です。そのため、入所希望者が多く、希望のタイミングで入所できない可能性があります。

介護予防サービス

介護予防サービスとは、要支援認定者の日常生活とリハビリテーションをサポートすることにより、身体的および精神的機能の維持または改善を目的としたサービスです。

具体的なサービス内容としては、以下が挙げられます。

・訪問型サービス
・通所型サービス
・施設への短期入所
・福祉用具の貸与 など

介護予防サービスの費用についても、要介護認定者と同様に1割~3割の自己負担額があります。

介護が必要になったときに備えて介護保険や要介護度を知っておこう


介護や支援が必要な場合は、公的介護保険制度を利用し、1割~3割の自己負担額で介護サービスや介護予防サービスを受けられます

ただし、各種介護サービスを受けるためには、要介護(要支援)認定を受けなければなりません。要介護の認定区分(要介護度)には段階があり、介護認定審査会で認定区分が決定されます。

また、要介護度に応じて利用できる介護サービスが異なるため注意が必要です。将来の介護に備えて、今から公的介護保険制度と要介護度について理解しておきましょう。

  
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年8月8日

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