親の介護をするお金がないときはどうする?
対処法と負担を軽減する6つの制度


「親の介護に必要なお金が足りず、どうしたら良いのかわからない」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

実際、介護には毎月支払う費用や一時的にかかる費用など、ある程度まとまったお金が必要となります。そのため、事前に備えたり適切な対応をとったりして、費用の問題に対処することが大切です。

この記事では、介護にかかる費用の目安や、資金が不足している場合の具体的な対処法、将来の介護費用に困らないための必要な備えなどについて詳しく解説します。今後の経済的な不安を軽減し、より良い介護環境を整えるための参考にしてください。

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介護にかかる費用はどのくらい?

介護にかかる費用は、一時的なものと継続的なものとに分けられます。費用は個々の状況によって異なりますが、ある程度の見通しを立てるために一般的な目安の額を把握しておくことが大切です。

一時的な介護費用の目安

介護を始める際に必要なものの購入や、有料老人ホームに入居する際に多額の初期費用がかかる可能性があります。

介護に必要な物品を自費で準備した場合にかかる初期費用の目安は約100万円です。
この金額は、車いす、特殊寝台、移動用リフト、ポータブルトイレ、手すり、階段昇降機を購入した場合の一例です。ただし、これらの物品は公的介護保険の給付対象となる場合もあります。

工事費別途

(公財)生命保険文化センター「介護保障ガイド」(2021年7月改訂版)をもとに当社にて試算

また、全国の有料老人ホームの入居時費用の相場は、約半数が200万円を超えています

株式会社LIFULL senior 老人ホーム検索サイト
LIFULL 介護」より 2024年8月31日時点の都道府県単位での平均入居別費用相場から当社にて試算(平均入居別費用相場が「不明」の10県を除く)

費用は目安であり、地域・施設により異なります。

将来の見通しを立てるために、介護にはまとまった費用が必要となる可能性があることを理解しておきましょう。

月々の介護費用の目安

継続的にかかる月々の介護費用も無視できません。

生命保険文化センターの調査結果によると、月々にかかる介護費用の平均は8.3万円です。その分布を見ると、「15万円以上」が16.3%で最も高く、次いで「1万~2万5000円未満」が15.3%、「2万5000円~5万円未満」12.3%、5万~7万5000円未満が11.5%となっています。
このように、多くの家庭が月々数万円から十数万円の介護費用を負担していることがわかります。

費用には個々の状況に応じた違いがある

紹介した介護費用はあくまでも目安であり、実際にかかる費用は個々の状況によって大きく異なります。

例えば、経済的に大きな影響があるのは介護期間の長さです。介護期間が長くなればなるほど、必要な介護費用の総額は増加します。

生命保険文化センターによると、平均介護期間は61.1ヵ月(約5年1ヵ月)です。その分布を見ると、4~10年未満が31.5%、10年以上が17.6%、3~4年未満が15.1%、2~3年未満が12.3%となっています。

また、介護を行う場所が在宅か、介護施設かによっても、必要となる費用は変わります。月額の介護費用の平均額は、在宅では4.8万円、施設では12.2万円です
このように、介護にかかる費用は個々の状況によって大きく異なるため、自身の状況に合わせた計画を立てることが重要です。

親の介護のお金は誰が負担する?

親の介護費用は、まず本人や配偶者の年金や貯蓄から充当するのが基本です。それでも不足する場合は、親族が援助することになります。

民法では、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と直系血族間の扶養義務が定められており、子どもは親に対して扶養義務があります。
ただし、この扶養義務は子どもの経済的な余裕の範囲内で果たせれば問題ありません。余裕がないために介護費用の支出を怠っても、扶養義務違反にはなりません。

また、介護施設入居時には保証人が必要で、本人が支払い不能となった場合には保証人に費用の請求が来ます。保証人は通常親族であることが条件ですが、誰が保証人となるかは家族間で十分に話し合うことが重要です。

このように、親の介護費用に対する負担は、本人の資産状況や家族の経済力、法的義務などを考慮しながら、家族全体で早めに話し合いましょう

親の介護のお金がないときの対処法

親の介護費用の捻出に困った場合には、さまざまな対処法があります。ここでは、具体的な方法について詳しく解説します。

介護の専門家に相談する

親の介護費用を用意できない場合には、まず介護の専門家に相談することをおすすめします。
地域包括支援センターは、市区町村が設置している機関です。支援センターには保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなど介護の専門家が在籍し、地域住民の介護を幅広く支援しています。

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険制度に基づいてケアマネジメントを行う専門職で、居宅介護支援事業所や介護施設などに勤務しています。

これらの専門家は地域の介護サービスに精通しているため、限られた予算内で対応可能な介護施設を紹介してくれる場合もあります。経済的な悩みを含め、介護に関するさまざまな相談に乗ってくれるため、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。

お金の負担を抑えられる介護施設を検討する

介護施設に入居する場合、施設の種類や受けられるサービスによって必要な費用は変動します。一般的に、民間の介護施設よりも公的な介護施設の方が料金を抑えられる傾向にあります。

公的な介護施設とは、地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが運営する介護施設を指します。これらの施設は、入居一時金が無料または低額に設定されているため、低所得者の方でも比較的利用しやすいことが特徴です。

具体的には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などが公的な介護施設に該当します。

介護施設にかかる費用について、こちらで詳しく解説しています。

介護費用の負担軽減制度を活用する

公的な負担軽減制度を利用することも、有効な対処法の一つです。このような制度を活用することで、親の介護にかかる費用や介護施設の自己負担額を軽減できる可能性があります。

具体的な制度の種類や内容は次の章で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

生活保護制度

生活保護制度の利用も選択肢の一つです。生活保護を受給すると、公的介護保険の保険料や介護サービスを利用した際の自己負担額、介護保険施設に入所した際の居住費や食費なども、生活保護の扶助によってまかなわれます。

ただし、生活保護制度の利用にはいくつかの制限があります。多くの自治体では生活保護での個室利用を認めておらず、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅への入居も限定的です。また、生活保護を受けるには、世帯収入が厚生労働省の最低基準に満たないことや、親族などからの援助が受けられないなどといった条件を満たす必要があります。

介護費用を抑えるための制度6つ

親の介護費用の負担を軽減できるいくつかの制度があります。以下では、おもな6つの制度について紹介します。

介護保険の負担限度額認定制度

介護保険負担限度額認定制度とは、所得や資産などが一定基準以下の方を対象に、介護保険施設へ入所・入院したり、ショートステイを利用したりする際の居住費や食費の自己負担額を軽減する制度です。世帯の所得や預貯金などの資産、利用する部屋の種類によって負担限度額が異なります。

この制度を利用するには事前に認定を受ける必要があるため、要件に該当する可能性がある場合には、居住地の市区町村に申請しましょう。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度は、介護サービスを利用した際、1ヵ月当たりの自己負担額が限度額を超えた場合に、超過分の金額が払い戻される仕組みです。自己負担額の上限は、所得に応じて決められています。

ただし、一部の介護サービスはこの制度の対象外となる場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。

高額医療・高額介護合算療養費制度

公的医療保険と公的介護保険において1年間(毎年8月1日から翌年7月31日まで)に支払った自己負担額の合計が高額となった場合に、自己負担額を軽減する制度が高額医療・高額介護合算療養費制度です。制度の利用申請により、負担限度額を超過した分が払い戻されます。

限度額は所得や年齢区分などに応じて細かく設定されているため、自身の状況について確認しておきましょう。

医療費控除

医療費控除は所得控除の一つで、確定申告を通じてその年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超えたときに受けられる所得控除です。原則として1年間に10万円以上(その年の総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%以上)の医療費を支払った場合に申請が可能です。

自身のほか、配偶者や家族、または生計をともにする親族のために支払った医療費も含められます。多くの介護サービス費用も医療費控除の対象となるため、支払金額が10万円を超えた場合は確定申告を検討するとよいでしょう。

介護サービスと医療費控除の関連についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、経済的な自立や在宅福祉の利用促進を目的として、低所得者世帯や障害者世帯、高齢者世帯を対象に資金の貸し付けや相談支援を行う制度です。

生活福祉資金には4種類の資金(総合支援資金・福祉資金・教育支援資金・不動産担保型生活資金)があり、そのうち福祉資金は介護に利用できる可能性があります。

福祉資金は、目的に応じて福祉費と緊急小口資金の2種類に分けられています。ただし、この制度はあくまで貸付制度であり、返済が必要である点には注意が必要です

自治体が行う独自の助成制度

一部の自治体では、介護サービスの利用に対する助成制度を独自に実施しています。

例えば、65歳以上の高齢者を在宅介護している方に年額10万円を支給する制度や、対象となる介護サービスを利用した際に自己負担額の70%を助成する制度などがあります。

これらの制度は自治体によって異なるため、居住する自治体に助成制度の有無や対象要件について確認することをおすすめします。

親の介護費用に困らないよう備えたいこと

将来、親の介護費用の捻出に困らないようにするためには、事前の準備が大切です。ここでは具体的な準備の方法を紹介します。

親のお金や資産の状況を把握しておく

将来、介護費用を親自身の収入や資産でまかなえるかを確認するとともに、親の年金や貯蓄の金額をできるだけ正確に把握しておくことが大切です。

お金のことや親の老後について話すことは難しく感じるかもしれませんが、将来のトラブルを避けるためにも、親が元気なうちから話し合っておくことが重要です。

また、親に資産があったとしても、不動産などはすぐに現金化できるとは限りません。資産状況を確認する際は、資産の種類についても注意を払いましょう。

親や家族と介護について話し合いをしておく

介護の準備において、親や家族での話し合いは欠かせません。介護費用は介護の方針によっても大きく変わるため、親子や兄弟間で介護の方針や老後の過ごし方についてよく話し合っておくことが重要です。

親の介護を考える際には金銭的な負担だけでなく、実際に介護を行い貢献する家族や、距離的な問題で介護にあまり貢献できない分、費用を多く負担する家族など、それぞれの状況に応じた役割分担が必要です。現在、家族が持てるすべての力で何ができるのかについて、冷静に話し合うことが大切です。

介護サービスや介護施設について調べておく

将来的に必要となる親の介護を想定し、利用したい介護サービスや介護施設について、事前に調査しておくことも重要です。

親が利用できそうな介護施設の有無や必要となる費用などについて把握しておくと、実際に介護が必要になったときの対応に役立ちます。

民間の介護保険の加入を検討する

介護費用に対する備えの一つとして、民間介護保険に加入することも検討しましょう。

民間介護保険は、公的介護保険を補完することを目的に保険会社が提供する保険で、40歳からの強制加入となる公的介護保険とは異なるものです。

民間介護保険では、保険会社が定めた要介護状態になった場合、一時金や年金形式で保険金を受け取れ、経済的な心配を軽減できます。

親の介護について事前準備をし、各負担軽減制度を知っておこう


親の介護では、一時的な初期費用や月々の継続的な費用など、まとまった金額が必要になる場合があります。しかし、公的な制度を活用することで、自己負担額を軽減できます。介護の環境や期間によってかかる費用は変動するため、介護サービスや介護施設について事前に調べておくことが大切です。

経済的な負担を軽減し、より良い介護環境を整えるために、早めの備えと情報収集を心がけましょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年10月17日

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