ダブルケアとは?
起こり得る問題や負担軽減につながる支援制度


子育てをしながらいずれは親の介護も必要になるかもしれないと考え、不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。仕事との両立や経済的な負担について、どう対応すべきか悩んでいる方も少なくないでしょう。

ダブルケアに備えるためには、起こり得る問題や利用できる支援制度を事前に理解し、対策を講じられるようにしておくことが大切です。

この記事では、ダブルケアの意味や現状、具体的な問題点を解説するとともに、負担軽減につながる支援制度や対策について紹介します。

「ダブルケア」とは子育てと介護を同時に担うこと

 
ダブルケアとは、子育てと親などの介護を同時に担う状態のことです。また、ダブルケアを行う人は「ダブルケアラー」と呼ばれています。

近年は少子高齢化や晩婚化、晩産化などの影響により、子育て期と親の介護時期が重なりやすくなっています。そのため、時間的・身体的・精神的な負担は大きくなる傾向です。

例えば、未就学児の育児をしながら、高齢の親の通院介助・生活支援を行うケースがあります。また、遠距離に住む親の介護と子育てを並行して進めるケースなどでは、移動負担が増えることもあるでしょう。

介護は突然始まるケースも多く、十分な準備ができないまま育児との両立を求められることも少なくありません。

ダブルケアの現状と当事者の特徴

ダブルケアは近年、社会問題の一つとして認識されており、一定数の当事者が存在するといわれています。

内閣府 男女共同参画局「男女共同参画白書 令和6年版」によると、未就学児の育児と介護を同時に行うダブルケアラーは20.1万人です。

<世代別(女性)>

世代

人数(割合)

4044

4.5万人(22%)

3539

3.6万人(18%)

 

<世代別(男性)>

世代

人数(割合)

4044

2.8万人(14%)

3539

2.2万人(11%)

※内閣府 男女共同参画局「男女共同参画白書 令和6年版」をもとに作成

男女ともに35~44歳の割合がほかの世代よりも高く、全体の6割以上を占めています。

<男女別>

性別

有業者(割合)

無業者(割合)

7.8万人(39.0%)

3.9万人(19.5%)

8.0万人(39.6%)

0.4万人(2.0%)

※内閣府 男女共同参画局「男女共同参画白書 令和6年版」をもとに作成

男女別では、女性の有業者が7.8万人、女性の無業者が3.9万人、男性の有業者が8.0万人、男性の無業者が0.4万人です。

晩婚化・晩産化の進行によって、子育ての時期と親の高齢化が重なりやすくなっています。
また、少子高齢化の進行により、家族内でケアを担える人が限られやすい状況に陥っていることも、ダブルケアを引き起こす要因の一つといえるでしょう。
さらに、共働き世帯の増加により、仕事を続けながら育児と介護を両立しなければならず、負担が大きくなっている状況です。

ダブルケアによって起こり得る4つの問題

 
ダブルケアでは、育児と介護を同時に行うことで、日常生活のさまざまな場面に影響が生じる可能性があります。

ここでは、ダブルケアによって起こりやすい代表的な問題を確認していきましょう。

仕事との両立が難しい

ダブルケアでは、育児と介護の両方に時間を取られるため、担う人がフルタイム勤務を継続することが難しくなるケースがあります。

特に、親や子の急な通院対応・体調変化などで突発的な欠勤や早退が発生しやすくなり、勤務時間の調整や時短勤務を選択せざるを得ないケースもあります。

また、状況によっては離職を選ばなければならない場合もあるため、キャリア形成や収入面に影響が出るかもしれません。

さらに、「家庭のケアは女性が担うべき」という固定観念がいまだ残っていることもあり、女性に負担が偏りやすい傾向も見られます。

一方で、男性がケアを担うことも増えてはいるものの、職場や周囲の理解を得づらいケースもあります。

金銭的に厳しい状態に陥る

ダブルケアでは、育児費用と介護費用が同時に発生するため、家計への負担が大きくなりがちです。

例えば、子育てでは保育料や教育費などが必要になります。一方、介護では介護サービス利用料の自己負担分に加え、通院費や介護用品代などの支出も想定しておかなければなりません。

しかし、時短勤務や離職による収入の減少に加え、長期間にわたってダブルケアが続く場合、十分な貯蓄がなければ生活費との両立が難しくなることも考えられます。

さらに、遠距離介護の場合は、交通費や日用品費など細かな支出が積み重なりやすい点にも注意が必要です。

精神的に追い詰められる

ダブルケアでは、育児と介護を同時に行うことで担う人が休息時間を確保しにくくなり、疲労やストレスが蓄積しやすくなります。その結果、慢性的な疲労や睡眠不足となり、心身に不調をきたす可能性が高まるでしょう。

また、「自分がしっかり支えなければならない」という責任感から、強い不安やプレッシャーを抱えてしまう人もいます。

加えて、介護はいつまで続くかわからないことも多く、先の見通しが立ちにくいため、精神的負担が継続する可能性もあるのです。

ダブルケアは周囲に同じ状況の人が少ない場合もあり、悩みを共有できず孤独感を抱きやすい点も特徴といえるかもしれません。

相談先がわからない

育児と介護では、利用する制度や相談窓口が異なります。そのため、「どこへ相談すれば良いのかわからない」と感じる人も少なくありません。

そもそもダブルケアを総合的に支援する窓口がまだ十分に整備されていないことが、相談先に悩んでしまう要因といえるでしょう。

また、利用できる制度が多岐にわたる一方で内容が複雑なため、自分に合った支援を把握しにくいことも課題の一つです。

家族や周囲に相談できる相手がいない場合、問題を一人で抱え込みやすくなり、必要な支援を受けられないまま状況が深刻化してしまうケースもあります。

ダブルケアを乗り越えるためのポイント

ここでは、ダブルケアを乗り越えるために意識したいポイントを紹介します。

家族・職場・ダブルケアコミュニティに相談する

家族や親族と話し合い、育児や介護の役割分担を整理することにより、ダブルケアで特定の人に負担が集中する状況を防ぎやすくなります。

また、職場へ状況を共有し理解を得ることで、時短勤務や在宅勤務、休暇制度などを活用しやすくなるなど、働き方の調整が容易になる場合もあるでしょう。

さらに、地域包括支援センターや自治体の窓口への相談を通じて、利用可能な支援制度やサービスの情報を得られることがあります。

ダブルケア当事者のコミュニティに参加し、同じ立場の人と情報交換を行うことも有効です。悩みを共有し、相談することで、精神的な負担の軽減にもつながることが期待できるでしょう。

支援サービスの情報収集をする

実際に介護が始まると、育児と介護の対応に追われ、支援制度について調べる時間を確保するのが難しくなります。そのため、ダブルケアの状況が見込まれる場合は、早めに情報収集を行うことが大切です。

また、地域包括支援センターや子育て支援窓口など、どこへ相談すれば良いのか把握しておくことも重要です。

支援を受ける際の申請方法や手続きについても確認しておけば、必要なタイミングでスムーズに制度を利用できるでしょう。

外部サービスを積極的に活用する

ダブルケアでは、介護保険サービスや保育サービスなどの外部サービスを積極的に活用することも大切です。

例えば、デイサービスや訪問介護、一時預かり保育などを組み合わせて利用することで、自分の時間を確保しやすくなります。

また、公的サービスだけだと対応が難しい場合には、家事代行や民間の見守りサービスなどを利用する方法も選択肢のひとつです。

ダブルケアでは、「すべて自分で対応しなければならない」と考え過ぎず、周囲やサービスに頼りながら負担を分散することが重要です。支援サービスの利用は、時間の確保だけでなく、心身の負担軽減にも役立つでしょう。

ダブルケアの負担を軽減できる支援制度

 
ダブルケアでは、育児と介護の負担を軽減するために利用できる制度があります。ここでは、代表的な支援制度を確認しておきましょう。

公的介護保険制度

公的介護保険制度は、介護が必要な方を社会全体で支える仕組みです。介護について不安がある場合は、地域包括支援センターに相談できます。要介護認定を受けていない段階でも、今後の手続きや利用できる支援について相談が可能です。

介護サービスを利用する場合は、原則として要支援・要介護認定を受けている必要があります。認定後は、ケアマネージャ等の支援を受けながら、必要なサービスの利用につなげられます。

また、介護保険だけでは十分に対応できないケースもあるため、不足する部分を民間サービスで補うことも選択肢の一つです。

子ども・子育て支援制度

保育園や認定こども園を利用することで、育児負担の軽減が期待できるでしょう。また、一時預かりやファミリー・サポート・センター事業など、柔軟な支援制度を利用できる地域もあります。

さらに、幼児教育・保育の無償化によって、一定条件を満たす家庭では保育料負担が軽減されます。

ただし、利用できる支援内容は子どもの年齢や家庭状況、保護者の就労状況などによって異なることに注意が必要です。

また、地域や時期によっては待機児童が発生しており、希望する施設へ入園できない可能性もあります。

そのため、状況によっては認可外保育施設の利用も含めて検討する必要があるでしょう。

ダブルケアの負担軽減には支援制度の活用と備えが必要


ダブルケアとは、育児と介護を同時に担う状態のことであり、時間的・身体的・精神的な負担が大きくなりやすい点が特徴です。

少子高齢化や晩婚化・晩産化の影響により、今後さらに当事者が増える可能性もあります。

負担を軽減するためには、家族や職場、地域の相談窓口へ早めに相談することや、公的支援・民間サービスを活用することが重要です。

 
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久毛 希[作業療法士]

作業療法士として回復期病院や介護老人保健施設での臨床を経て、リハビリテーション専門学校の専任教員を歴任。現在は特別養護老人ホームにて機能訓練指導員として従事しながら、医療・介護ライターとしての医療・介護系記事執筆・編集・監修を行っている。

資格:作業療法士・福祉用具プランナー・福祉住環境コーディネーター2級・認定心理士・薬機法・医療法規格協会 YMAA個人認証 取得
など

公開日:2026年6月19日

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