公的介護保険料の免除・減免は可能?免除・減免措置の対象となる条件


公的介護保険料について、「支払いはいつまで続くのか」「万が一の事態が起きたとき、免除や減免は可能なのか」と疑問を抱いている方も少なくないでしょう。

公的介護保険料の免除・減免は原則として難しいとされるものの、特定の条件に該当すれば免除・減免措置が受けられる可能性があります。

この記事では、公的介護保険の保険料について、概要や金額の決定方法などを解説するとともに、免除・減免の対象となる条件を紹介します。併せて、保険料を支払わなかった場合や滞納した場合のリスクについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

公的介護保険料を支払う期間は?

公的介護保険料は、介護が必要な高齢者をサポートするための制度である「公的介護保険制度」を支える役割を担うものです。公的介護保険への加入は国民の義務であり、保険料をきちんと支払うことで、被保険者としての資格を得られます。

保険料の支払いは満40歳から始まり、支払いは一生涯続きます。

より具体的には、満40歳を迎える月から支払いが始まり、例えば9月15日生まれの方であれば9月から支払い開始となります。ただし、誕生日が「1日」の場合は、年齢計算に関する法律に従い、前月から支払い開始となるため注意しましょう。

また、保険料は年齢によって支払い方法が異なります。40~64歳までは公的医療保険料(健康保険料)の一部として支払い、65歳以上の年金支給年齢になると、健康保険料とは別に「公的介護保険料」として支払います。

公的介護保険料の金額はどのように決まる?

保険料の決定方法は、40~64歳の「第2号被保険者」と65歳以上の「第1号被保険者」で異なるのが特徴です。ここからは、それぞれの保険料の決定方法について解説します。

40~64歳(第2号被保険者)

40~64歳(第2号被保険者)の保険料額は、加入している公的医療保険(健康保険)によって変動します。また、会社員や自営業など、どのような働き方をしているかによっても支払う額は異なるのが特徴です。

会社員として、健康保険組合や全国健康保険協会などの健康保険に加入している場合は、給与の平均額を等級に当てはめた「標準報酬月額」によって保険料が決まります。標準報酬月額の等級は、都道府県や会社が加入する健康保険組合・全国健康保険協会ごとに定められています。

また、会社員の場合は、保険料の負担額は会社(事業主)と折半となるため、支払いは半額になる点も大きな特徴です。

対して、自営業に従事し個人事業主として国民健康保険に加入している場合は、世帯の被保険者の数や所得、資産に応じて各市区町村が保険料を決定します。会社員とは異なり、自身で保険料全額を支払います。

65歳以上(第1号被保険者)

65歳以上(第1号被保険者)の保険料額は、各市区町村によって異なります。これは、各自治体によって公的介護保険の利用者の割合や、需要の多いサービス、介護サービスにかかる費用の総額が変動するためです。

支払う保険料は、各市区町村が条例に基づいて定める「保険料基準額」に、所得に応じた標準9段階(自治体によっては6~15段階)の保険料率をかけて算定します。

なお、この保険料基準額は、介護保険事業計画の作成にともない3年に一度見直されます。

公的介護保険料を支払わない・滞納し続けた場合のリスク

公的介護保険料を支払う方のなかには、「今介護サービスを活用していないのに支払う必要があるの?」と疑問を抱いている方もいるかもしれません。

現在、介護と縁遠い場合でも、保険料の支払いを怠ってしまうと、将来的にさまざまなリスクが生じる恐れがあるため注意するべきです。

ここからは、保険料を支払わない、もしくは滞納を続けた場合のリスクについて見ていきましょう。

公的介護保険料を支払わない場合

保険料を納付期限までに支払わないと、納付期限後20日以内に、居住している市区町村から督促状が発行されます。この場合、本来支払うべき保険料に、督促手数料と延滞金が加算されるため注意が必要です。

なお、加算される督促手数料と延滞金の計算方法は、各市区町村によって異なります。

公的介護保険料を滞納し続けた場合

特別な事情がないにもかかわらず保険料を滞納した場合は、自身が介護サービスを利用する際に、本来の自己負担額以上の金額を負担しなければならなくなる可能性があります。

この場合の対応措置は、延滞した期間によって異なります。延滞期間に応じた負担分は、以下のとおりです。

1年以上の滞納

保険料を1年以上滞納している場合は、介護サービスを利用した際の費用を一度全額負担する必要があります。

申請すれば、のちに7~9割が保険給付費として払い戻しとなるものの、介護サービスの利用料によっては、一時的とはいえ大きな経済的負担となる恐れがあるため注意しましょう。

1年6カ月以上の滞納

保険料を1年6カ月以上滞納している場合は、1年以上滞納した場合と同様、介護サービス費を全額負担したのち、申請し払い戻される保険給付費の一部、もしくはその全額が一時的に差し止められます。

差し止められた保険給付費は、滞納分の保険料に充当されることもあります。

2年以上の滞納

保険料を2年以上滞納している場合は、利用者負担割合が本来の割合よりも引き上げられます。例えば、利用者負担割合が1割や2割の場合は3割に、3割の場合は4割に引き上げられるため注意が必要です。

加えて、通常は1カ月に利用した介護サービスの自己負担額が上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」という制度が適用されますが、2年以上の滞納だとこれが適用されず、払い戻しを受けられなくなる恐れがあります。

公的介護保険料の支払いが免除される5つの条件

公的介護保険料は、特定の条件を満たしていれば支払いが免除されるケースがあります。ここでは、支払いを免除される5つの条件について解説します。

国内に住所がない海外居住者

日本国内に住所がなく、海外に居住している場合は、保険料を支払う必要はありません。ただし、支払い免除の措置を受けるためには、海外へ転居する際に、事業主を通じて健康保険組合などに介護保険適用除外等該当・非該当届を提出する必要があります。

また、支払いが免除されるのは、「居住していた市区町村に転出届を提出した本人のみ」である点にも注意しましょう。

適用除外施設に入居している方

障害や難病によって、「適用除外施設」と呼ばれる施設に入院・入居している場合も、免除の対象となります。

これらの施設を利用している方は、ほかの法律や制度に基づいて給付やサービスを受けており、将来的にも支払いが困難と考えられることから、公的介護保険は適用されません。

ただし、適用除外施設に入居する際は、各市区町村に介護保険適用除外等該当届を提出する必要があります。

以下は、適用除外施設に該当する施設の例です。

・救護施設
・障害者支援施設
・指定障害者支援施設
・指定障害福祉サービス事業者に該当する病院 ※療養介護を実施するものに限る
・ハンセン病療養所
・独立行政法人国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園
・労働者災害特別介護施設 など

短期滞在している外国人

日本に3カ月未満の短期滞在をしている外国人の方も免除の対象となります。

ただし、入国してからの生活実態などから3カ月以上の滞在が認められる場合は、公的介護保険に加入し、保険料を支払う必要がある点に留意しましょう。

専業主婦を含めた被扶養者

専業主婦の方など、公的医療保険(健康保険)に加入しており「40歳以上64歳以下の被扶養者」に該当する場合も免除の対象となります。

これは、夫など扶養を担っている被保険者の公的医療保険料(健康保険料)に、妻などの被扶養者の公的介護保険料も含まれるためです。

ただし、被保険者が39歳以下もしくは65歳以上で、被扶養者が40歳以上64歳以下の場合、健康保険組合などによっては「特定被保険者」に該当し、被保険者が被扶養者の公的介護保険料を支払うことがあります。

生活保護を受給している方

生活保護を受給している方も免除の対象です。40歳以上64歳以下の方が生活保護を受ける際は、公的医療保険を脱退するため、公的医療保険料(健康保険料)および公的介護保険料の支払い義務もなくなります。

生活保護受給者の方が介護を必要とする際は、公的介護保険ではなく生活保護法による介護扶助でまかなわれることになります。

65歳以上の生活保護受給者も、公的介護保険料は生活保護法による生活扶助から支払われるため、実質的な自己負担の必要はありません。

公的介護保険料の減免措置が受けられる4つの条件

続いて、公的介護保険料の減額(減免措置)が受けられる4つの条件について解説します。

大幅な収入減があった方

生計を維持する方が死亡した場合や、重大な障害、長期入院、事業の休止・廃止、失業などの理由により収入が大幅に減少すると、減免措置の対象となる可能性があります。

減免される金額は、各市区町村の定める収入の基準額によって決定される点が特徴です。また、住民税非課税世帯に該当する場合は、公的介護保険料が全額免除となるケースもあります。

災害により大きな被害を受けた方

地震などの災害で受けた被害が大きい場合も、保険料の減免もしくは免除の対象となる可能性があります。

減免される金額は、住宅や家財がどの程度損害を受けたかによって判断されます。また、損害の程度に加えて、前年度の合計所得を加味して決められるケースもあります。

市区町村によっては、減免措置に所得制限を設けている場合もあるため、申請前にしっかりチェックすることが大切です。

災害の被害を受けたことによる保険料の減免を申請する際は、減免申請書のほか、被災証明書や損害割合が確認できる資料などが必要になります。

所得が低く生活が困難な方

所得が低く、市区町村から生活が困難と認められた場合も、保険料の減免対象です。生活困難と判断される所得の基準は、各自治体によって異なります。

減免措置を受ける際は、所得がわかる書類を用意したうえで、ほかの条件に該当する場合と同様、各市区町村の窓口へ申請する必要があります。

ただし、所得が低いことを理由に保険料の減免措置を受ける場合、市区町村によっては所得の基準だけでなく、別の条件も満たさなければならないケースもある点に注意しましょう。

例えば、「活用できる資産を持っていない」「公的介護保険料を滞納していない」「扶養に入っていない」などが挙げられます。

各市区町村独自の減免措置制度の条件に該当している方

これまでに紹介した3つの条件だけでなく、各市区町村独自の減免措置制度の条件に該当している場合も、保険料の減免が受けられる可能性があります。

なお、制度の詳細や減免の条件、申請方法は各市区町村によって異なります。そのため、ほかの3つの条件に該当する場合はもちろん、やむを得ない事情により保険料の支払いが難しいという場合は、早めに各市区町村の窓口に問い合わせるとよいでしょう。

公的介護保険料の免除や減免措置を受けるためにすべきことは?

原則として、公的介護保険料の免除・減免措置を受けるための条件は厳しいといえます。そのため、前述の条件に該当するようなやむを得ないケースを除くと、支払いを免除・減免されることは難しいでしょう。

ただし、各市区町村が定める条件に当てはまる場合は、条例などに基づき分割での支払いや支払い猶予、減免が認められるケースもゼロではありません。なお、条例などの詳しい内容や認定条件、申請方法は各自治体によって異なるため注意が必要です。

したがって、前述の免除・減免措置が受けられる条件に該当する場合はもちろん、事情により支払いが難しいという場合も、滞納する前に早急に各市区町村の窓口へ相談しましょう。

相談することで、必要な手続きを把握できるだけでなく、滞納によるペナルティの回避にもつながる可能性があります。

公的介護保険料の支払いが難しい場合は、早めの相談が大切


公的介護保険の保険料は、満40歳以上の全員が生涯払い続けるものであり、現在の公的介護保険制度を支えるとともに、将来ご自身が介護サービスを利用するためにも不可欠です。

ただし、今回紹介したように特定の条件に該当する場合は、保険料の免除・減免が可能です。そのため、現在支払いが難しいという場合は、一度ご自身が条件に該当しているか確認するとよいでしょう。その際は、各市区町村の窓口に相談することが大切です。

また、もし将来、介護サービス費の支払いが難しくなったらと不安に感じている場合は、民間介護保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか?

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2023年10月2日

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