在宅介護は体力面の負担が非常に大きく、疲れが蓄積して介護疲れにつながるケースもあります。
「令和4年 国民生活基礎調査」によると、1日に要する介護者の介護時間で最も多かった回答は「必要なときに手を貸す程度」で45.0%でした。一方で、「ほとんど終日」という回答も19.0%あり、要介護3以上では最多となっています。
要介護度が高くなるとそれだけ介護に費やす時間も増えるため、一日中つきっきりになって休めないというケースも少なくありません。
特に認知症の場合は徘徊のおそれがあり、自宅を飛び出して危険に遭遇する可能性や行方不明になるリスクがともないます。そうなると、昼夜問わず一時も目が離せない状況となり、介護者の負担は甚大です。
体力面の負担が大きいことに加え、精神的な負担が大きい点も「介護は無理」と感じてしまう理由の一つです。介護の時間が多くなると自分の時間が取れず、ストレスがたまりやすくなります。
認知症の場合はうまくコミュニケーションを取れないことも多いため、苦痛に感じてしまうことがあります。また、責任感が強い方ほど自分で介護しなければという気持ちから、無理をしすぎてしまうケースも珍しくありません。
「いつまで介護が続くのかわからない」という先が見えない不安も、介護者の心理的ストレスを増大させます。医療技術の発展により平均寿命が延びたことで、介護期間が長期化していることも介護疲れを生む要因の一つといえるでしょう。
介護費用で金銭的な余裕がなくなってしまう点も、介護に限界を感じてしまう要因の一つです。
介護施設や介護サービスを利用する場合は、利用料が発生します。また、食事代や紙おむつ代などは公的介護保険が適用されないため全額自己負担となり費用がかかります。
介護施設や介護サービスを利用しない場合でも、介護用品や介護リフォームの費用など、介護には一定の支出が発生します。
場合によっては、仕事を続けられず収入がなくなってしまい、介護費用の負担だけが増えるということにもなりかねません。
強い介護ストレスを抱えたまま介護を続けると、心身に異常をきたしたり、家族関係が悪化したりするリスクがあります。起こりうる影響について詳しくみていきましょう。
無理をして介護を続けた場合、長時間の介護が体力的な負担となり、体調を崩してしまうことも考えられます。
在宅介護は、食事や排せつ、入浴の介助など身体面の負担が少なくありません。要介護度が高くなるほど、ベッドから体を起こしたり歩行を補助したりする際の介助の負担は大きくなります。
また、四六時中介護をしていると心の休まる時間がなく、精神的ストレスも蓄積されていくため、場合によっては「介護うつ」を発症してしまう可能性もあります。心理的な影響は、「老老介護」に限らず、若くて体力がある方でも軽視できません。
介護にかかりっきりで外出が減ると、ごく身近な家族以外との接点が少なくなり、「社会から孤立している」という心理的ストレスを生むおそれがあります。真面目で責任感が強い方ほど、周囲に頼れず孤立してしまうケースが少なくありません。
介護で周囲に頼れない状況が続くと、介護者がうつ病や認知症を発症してしまい、介護者と要介護者の共倒れにつながってしまう危険もあるため注意が必要です。
介護に専念するため、離職したり勤務時間を減らしたりして収入が減ると、経済的な負担が増えてしまうことが考えられます。また、離職期間が長くなると再就職が難しいケースも多く、介護費用にかかる支出が増える一方となります。
「今後生活していけるのだろうか」という焦りや先行きへの不安は、心理的な負担の増大にもつながってしまうでしょう。
無理な介護を続けると、要介護者との間に不和が生じるおそれがあるため注意が必要です。介護者が蓄積されたストレスを要介護者へぶつけてしまい、虐待や介護放棄などにつながるリスクもあります。
また、兄弟や姉妹がいる場合、介護の役割分担やお金の問題などでもめるケースも考えられます。このように、介護の負担が家族間の問題に発展してしまうリスクも無視できません。