「介護は無理」と感じたらどうする?
介護負担が大きくなる理由と解決方法


家族の在宅介護中に「これ以上無理」と限界に感じたらどうすれば良いのだろう、と不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。

在宅介護が無理だと感じることには理由があるため、まずはそれを把握し対処を考える必要があります。

また、在宅介護は体力的・精神的にも負担が大きいため、介護サービスや周囲の力を得ながら無理せず行うことが大事です。

本記事では、介護が無理だと感じる原因、無理をしながら介護を続けるリスク、無理なく介護を続けるためのポイントについて解説します。

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「介護は無理」と負担に感じているのはどれくらい?

要支援または要介護認定を受け、介護を必要とする方は年々増加しています。

内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、令和3年度に65歳以上の要支援または要介護認定を受けた方の数は676万6,000人で、平成23年度から161万6,000人増加しました。特に、75歳以上では要介護認定を受ける方の割合が大きく上昇しています。
要介護者からみた介護者の続柄は「同居している人」が45.9%で、介護者の半数近くは要介護者の家族です。さらに、主な介護者の年齢をみると、男性の75.0%、女性の76.5%が60歳以上で、「老老介護」となっているケースも少なくありません。
実際に介護者が抱えている負担は、厚生労働省が行った「国民生活基礎調査」でも顕著です。同調査では、介護者の悩みやストレスの原因として「家族の病気や介護」という回答がトップとなっています。
今後、在宅介護の負担が増えることも予想されるため、解決策を考えることは大変重要です。

在宅介護が無理だと感じる3つの理由

介護者が「介護は無理」と感じる理由は、おもに以下の3つです。
  • 体力面の負担が大きい
  • 精神的ストレスが強い
  • 経済的な負担に不安がある
それぞれ詳しくみていきましょう。

体力面の負担が大きい

在宅介護は体力面の負担が非常に大きく、疲れが蓄積して介護疲れにつながるケースもあります。

「令和4年 国民生活基礎調査」によると、1日に要する介護者の介護時間で最も多かった回答は「必要なときに手を貸す程度」で45.0%でした。一方で、「ほとんど終日」という回答も19.0%あり、要介護3以上では最多となっています。
要介護度が高くなるとそれだけ介護に費やす時間も増えるため、一日中つきっきりになって休めないというケースも少なくありません。

特に認知症の場合は徘徊のおそれがあり、自宅を飛び出して危険に遭遇する可能性や行方不明になるリスクがともないます。そうなると、昼夜問わず一時も目が離せない状況となり、介護者の負担は甚大です。

精神的ストレスが強い

体力面の負担が大きいことに加え、精神的な負担が大きい点も「介護は無理」と感じてしまう理由の一つです。介護の時間が多くなると自分の時間が取れず、ストレスがたまりやすくなります。

認知症の場合はうまくコミュニケーションを取れないことも多いため、苦痛に感じてしまうことがあります。また、責任感が強い方ほど自分で介護しなければという気持ちから、無理をしすぎてしまうケースも珍しくありません。

「いつまで介護が続くのかわからない」という先が見えない不安も、介護者の心理的ストレスを増大させます。医療技術の発展により平均寿命が延びたことで、介護期間が長期化していることも介護疲れを生む要因の一つといえるでしょう。

経済的な負担に不安がある

介護費用で金銭的な余裕がなくなってしまう点も、介護に限界を感じてしまう要因の一つです。

介護施設や介護サービスを利用する場合は、利用料が発生します。また、食事代や紙おむつ代などは公的介護保険が適用されないため全額自己負担となり費用がかかります。

介護施設や介護サービスを利用しない場合でも、介護用品や介護リフォームの費用など、介護には一定の支出が発生します。

場合によっては、仕事を続けられず収入がなくなってしまい、介護費用の負担だけが増えるということにもなりかねません

無理をしながら介護を続けるとどうなる?

強い介護ストレスを抱えたまま介護を続けると、心身に異常をきたしたり、家族関係が悪化したりするリスクがあります。起こりうる影響について詳しくみていきましょう。

体調を崩してしまう

無理をして介護を続けた場合、長時間の介護が体力的な負担となり、体調を崩してしまうことも考えられます。

在宅介護は、食事や排せつ、入浴の介助など身体面の負担が少なくありません。要介護度が高くなるほど、ベッドから体を起こしたり歩行を補助したりする際の介助の負担は大きくなります。

また、四六時中介護をしていると心の休まる時間がなく、精神的ストレスも蓄積されていくため、場合によっては「介護うつ」を発症してしまう可能性もあります。心理的な影響は、「老老介護」に限らず、若くて体力がある方でも軽視できません。

孤立感につながる

介護にかかりっきりで外出が減ると、ごく身近な家族以外との接点が少なくなり、「社会から孤立している」という心理的ストレスを生むおそれがあります。真面目で責任感が強い方ほど、周囲に頼れず孤立してしまうケースが少なくありません。

介護で周囲に頼れない状況が続くと、介護者がうつ病や認知症を発症してしまい、介護者と要介護者の共倒れにつながってしまう危険もあるため注意が必要です。

経済的な負担が増える

介護に専念するため、離職したり勤務時間を減らしたりして収入が減ると、経済的な負担が増えてしまうことが考えられます。また、離職期間が長くなると再就職が難しいケースも多く、介護費用にかかる支出が増える一方となります。

「今後生活していけるのだろうか」という焦りや先行きへの不安は、心理的な負担の増大にもつながってしまうでしょう。

家族関係が悪くなる

無理な介護を続けると、要介護者との間に不和が生じるおそれがあるため注意が必要です。介護者が蓄積されたストレスを要介護者へぶつけてしまい、虐待や介護放棄などにつながるリスクもあります。

また、兄弟や姉妹がいる場合、介護の役割分担やお金の問題などでもめるケースも考えられます。このように、介護の負担が家族間の問題に発展してしまうリスクも無視できません。

これ以上介護は無理と感じたときにすべき5つのこと

介護負担が限界に達する前に、以下のアクションを検討してみましょう。
  • 周囲の人に相談・協力してもらう
  • 介護サービスを積極的に活用する
  • 要介護度やケアプランを見直す
  • 職場の制度を活用する
  • 施設への入居を検討する
それぞれ詳しく解説します。

周囲の人に相談・協力してもらう

介護を行ううえで大事なのは、悩みを一人で抱え込まないことです。家族や親戚など周囲の協力が得られれば良いですが、難しいケースもあるかもしれません。

介護にかかる負担が自分の許容範囲を超えていると感じた時点で、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、専門的なサポートを受けるようにしましょう。

介護にかかりきりになると、自分がどれだけの負担を感じているのか客観視できなくなってしまいがちです。まずは、どの程度の負担があるのか、どの部分につらさを感じているのかを整理することが必要です。

地域包括支援センターの相談窓口では、介護者本人だけでなく介護者の家族が相談することもできます。介護者の異変を感じたら積極的に活用し、どのようにケアすれば良いか相談してみましょう。

介護サービスを積極的に活用する

在宅介護を無理なく続けるためにも、介護サービスを積極的に活用していきましょう。

最近では、介護サービス事業者が介護を代行し、介護者が一時的に介護から離れる時間を作る「レスパイトケア」という考え方が広まりつつあります。

レスパイトケアでは、介護をいったん休止し、リフレッシュすることで介護者の体力的・精神的負担の軽減を図ります。

レスパイトケアとして受けられるおもな介護サービスは以下のとおりです。
  • デイケア・デイサービス
    デイサービスでは、食事・入浴・排せつなどの介助を代行してもらえます。それらのサービスに加え、生活機能向上のためのリハビリテーションを受けられるのがデイケアの特徴です。

  • ショートステイ
    ショートステイは、特別養護老人ホームなどの施設への短期宿泊をともなう介護サービスです。最長30日間の利用が可能で、日常生活の介助はもちろん、心身機能の維持管理のためのサポートも受けられます。


  • 訪問看護・介護
    訪問看護や介護は、看護師やホームヘルパーが直接自宅を訪問し、身体介護や生活サポート・医療管理などを行ってくれるサービスです。在宅で受けられるうえ、訪問を通じて介護の悩みや困りごとを相談できます。


要介護度やケアプランを見直す

すでに介護サービスを利用している場合、要介護度を見直すことでサービスの利用頻度や利用時間を増やせる可能性があります。また、ケアプランを見直し、介護者の生活スタイルに合った新しいサービスプランも検討してみましょう。

例えば、訪問介護を利用して認知症の在宅介護を行っている場合、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用に切り替えることで負担を減らせる可能性があります。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、24時間365日体制で自宅への定期巡回を依頼でき、1日の訪問回数の制限もありません。通常の訪問介護サービスでは制限があって負担が大きいと感じている場合は、問題解消につながる可能性があります。

要介護度やケアプランの見直しを検討する際は、介護サービスの内容だけでなく、費用面も考慮することが大切です。

以下のグラフは、「公的介護保険制度」を支給限度額まで利用した場合の1年間の自己負担額(1割負担の場合)を示しています。介護サービスの見直しを検討する際の参考にしてください。

<「公的介護保険制度」を支給限度額まで利用した場合の1年間の自己負担額(1割負担の場合)>
 

厚生労働省老健局老人保健課「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する件の公布について」(平成31年3月28日)より当社で試算

介護サービスを支給限度額まで利用した場合の自己負担額(自己負担割合が1割の場合)は全国平均であり、地域によって異なる場合があります。介護サービスの支給限度額を超えたサービス利用分は全額自己負担になります。

公的介護保険制度の自己負担額割合は、一定以上の所得がある第1号被保険者(65歳以上)については2または3割負担となります。

職場の制度を活用する

仕事をしながら介護をしている場合は、職場の理解を得ることも重要です。育児・介護休業法では、介護者が仕事と介護を両立できるよう、企業に以下のような支援措置を講じるよう定めています。
  • 介護休業
  • 介護休暇
  • 短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤制度
  • 法定時間外・深夜時間労働の免除制度
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、介護者の半数以上は働きながら介護をしており、仕事と介護の両立は決して不可能ではありません。職場に介護をしていることを共有し、これらの社内制度を積極的に活用しましょう。
企業の支援制度については以下の記事でも詳しく解説しています。

施設への入居を検討する

あらゆる選択肢を考えてそれでも対応が難しい場合は、限界が来る前に施設への入居も検討しましょう。介護施設と一口にいっても、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホームなど選択肢はさまざまです。

金銭的に難しい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、費用が抑えられる施設を探したり、生活保護の受給を考えたりするなどの方法を検討しましょう。

「介護は無理」となる前に早めの対策をしよう


介護は体力的・精神的な負担が大きく、介護者一人で抱え込んでしまうと心身へ深刻な影響をおよぼします。「これ以上無理」と限界を感じてしまう前に、家族や知人、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談し、介護負担を軽減するための解決策を模索しましょう。

公的介護保険が適用される介護サービスであれば、1~3割の費用負担で利用が可能です。働きながら介護をしている場合は、介護休業・介護休暇など職場の支援制度を積極的に活用し、無理なく介護を続けていきましょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年9月9日

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