在宅介護とは?メリット・デメリットや利用できるサービス


介護が必要になっても、できるだけ住み慣れた環境で過ごしたいと考える方も多いでしょう。介護を受ける場所を選択する前に、在宅介護のメリット・デメリットや利用できる介護サービスはどのようなものか把握しておくことが大切です。

在宅介護では、訪問型、通所型、宿泊型の介護サービスなどを活用できます。公的介護サービスを利用すると、介護保険制度が適用され費用負担が軽減されるため、積極的に活用していきましょう。

この記事では、在宅介護の概要やメリット・デメリットに加え、在宅介護で利用できる介護サービスやサービス利用の流れ、在宅介護にかかる費用について解説します。記事を参考に、将来どのように介護を受けたいか考えてみましょう。

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自宅で介護を受ける「在宅介護」

介護は大きく在宅介護と施設介護の2種類に分類できます。在宅介護は自宅で家族などに介護してもらう方法であり、施設介護は介護施設に入所して、介護士などに介護してもらう方法です。

生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、自分の家や親戚の家などで在宅介護をする方は58.3%、介護施設などで介護をする方は40.3%となっています。

また、2021年度の同調査では、要介護度が低いほど在宅で介護を行う割合が高くなっています。介護の必要度も在宅介護か施設介護かを選ぶ基準になっているといえるでしょう。

在宅介護では公的介護保険サービスを利用できます。公的介護保険を適用することで、自己負担額を利用料の1~3割に抑えられるため、サービスを活用しながら介護環境を整えましょう。サービスの具体的な内容は、本記事内で後述します。

在宅介護のメリット・デメリット

在宅介護にはメリットとデメリットがあります。それらを知ったうえで、在宅介護にするか決定することが大切です。

在宅介護のメリット

在宅介護の最も大きなメリットは、要介護者が住み慣れた場所で生活できることです。生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、要介護状態になった際に自宅で介護してほしいと回答した方が、全体の約3割にのぼっています。

住み慣れた場所で家族と一緒に暮らせるためストレスもたまりにくく、施設に入所するより介護費用を抑えられる点も在宅介護のメリットです。

在宅介護のデメリット

在宅介護では、介護を担う家族に精神的・身体的・時間的負担がかかりやすくなり、疲弊を招く可能性があります。介護のために家族が離職してしまうと経済的に困窮する恐れもあるでしょう。

介護負担を減らすためには、公的介護サービスを十分に活用することが大切です。場合によっては施設介護への切り替えも検討するとよいでしょう。

また、在宅介護では介護者が不在の際に、発生したトラブルに早急に対応できない場合があります。施設介護では人やカメラ・ロボット等による見守りがあるので、トラブルが発生してもすぐに発見してもらうことが可能です。トラブルを未然に防ぐために、介護が必要な方が一人でいるときの対応を検討しておく必要があるでしょう。

在宅介護で活用できるサービス

在宅介護では以下のような介護サービスを利用できます。サービスの特徴を知り、積極的に活用しましょう。
  • 自宅に訪問する「訪問サービス」
  • 施設に通う「通所サービス」
  • 施設に短期間宿泊する「宿泊サービス」
  • 訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービス利用
  • 福祉用具のレンタル・購入など
  • 介護保険外のサービス

自宅に訪問する「訪問サービス」

訪問サービスでは、介護が必要な方の自宅に看護師や介護士が訪れてサービスを提供します。おもなサービスの内容は以下のとおりです。

サービス

概要

訪問介護(ホームヘルプ)

訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物などの生活支援を行う。

訪問入浴介護

看護職員と介護職員が自宅を訪問し、持参した浴槽で入浴の介護を行う。

訪問看護

看護師などが医師の指示のもと、疾患のある方の自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行う。病状に応じて、血圧や脈拍の測定、入浴の介助、褥瘡の処理などのサービスを受けられる。

訪問リハビリテーション

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、身体機能の維持回復や日常生活での自立に向けたリハビリテーションを行う。

夜間対応型訪問介護

訪問介護員(ホームヘルパー)が夜間帯(18時~8時)に自宅を訪問し、排泄の介助や安否確認などを行う。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

定期的な巡回や通報への対応など、必要なサービスを必要なタイミングで受けられる。看護と介護の一体的なサービスも、サービスの範囲内となっている。

施設に通う「通所サービス」

通所サービスでは、通所介護の施設に要介護者が通ってサービスを受けます。おもなサービスの内容は以下のとおりです。

サービス

概要

通所介護(デイサービス)

通所介護の施設に通い、日常生活支援(食事、入浴など)や機能訓練、健康チェックなどを受ける。

通所リハビリテーション(デイケア)

介護老人保健施設、病院、診療所などの通所リハビリテーションの施設に通い、日常生活支援や機能訓練、口腔機能向上サービスなどを受ける。

地域密着型通所介護

地域密着型通所介護の施設に通い、日常生活支援や機能訓練などのサービスを受ける。要支援1および要支援2の方は利用対象外。

療養通所介護

特定の難病や認知症、脳血管疾患後遺症などの重度要介護者や、がん末期患者を対象にしたサービス。療養通所介護の施設に通い、日帰りで日常生活支援や機能訓練、口腔機能向上サービスなどを受ける。

認知症対応型通所介護

認知症の方を対象に、専門的なケアを行うサービス。デイサービスセンターやグループホームといった通所介護施設に通い、日帰りで日常生活支援や機能訓練、口腔機能向上サービスなどを受ける。

施設に短期間宿泊する「宿泊サービス」

宿泊サービスでは、介護が必要な方が介護老人福祉施設などに短期間入所し、介護サービスを受けます。主要なサービスの内容は下表のとおりです。

サービス

概要

短期入所生活介護(ショートステイ)

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などに短期間入所し、日常生活支援や機能訓練などのサービスを受ける。連続利用日数は30日まで。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

医療機関や介護老人保健施設、介護医療院に入所し、日常生活支援や医療支援、機能訓練などのサービスを受ける。連続利用日数は30日まで。

訪問・通所・宿泊を組み合わせる

訪問型、通所型、宿泊型を組み合わせて、介護が必要な方が自立した日常生活を送れるよう支援するサービスもあります。主要なサービスの内容は下表のとおりです。

サービス

概要

小規模多機能型居宅介護

施設への通所を中心として、宿泊や訪問を組み合わせ、日常生活支援や機能訓練などのサービスを受ける。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

施設への通所を中心として、宿泊や看護師などの訪問を組み合わせ、日常生活支援や機能訓練などのサービスを受ける。要支援1および要支援2の方は利用対象外。

福祉用具のレンタル・購入など

在宅介護の場合、自宅を介護しやすい環境に整えることも重要です。介護サービスのなかには、介護が必要な方が可能な限り自宅で日常生活を送れるよう、特殊寝台や手すり、スロープなどの福祉用具の貸与や、腰掛便座などの販売を行うサービスもあります。

サービス

概要

福祉用具貸与

介護が必要な方の状況や要望、生活環境などをふまえ、適切な福祉用具の選択・取り付け・調整などを支援し、福祉用具を貸与する。貸与の対象となる用具は要介護度によって異なり、保険給付の対象とならないものもある。

特定福祉用具販売

入浴や排泄に用いる、貸与になじまない福祉用具を販売する。販売の対象となる用具は要介護度によって異なり、腰掛便座や簡易浴槽などの種類がある。

介護保険外のサービス

上記で解説したサービスは公的介護保険制度を利用したサービスです。公的介護サービスでは、移送や送迎、家事支援・代行などはサービスの対象外となっています。

民間企業などでは、公的介護サービスには含まれないサービスも介護サービスとして提供しています。費用は全額自費となってしまいますが、公的介護サービスにないさまざまなサービスを受けられるため、必要な方は利用を検討してみるとよいでしょう。

在宅介護サービスを利用するまでの流れ

在宅介護サービスの利用を開始する前に、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定を受けていない方は、まずは要介護認定の申請から始めましょう。

要介護認定の申請から介護サービス利用開始までは、以下のような流れで進みます。
  1. 居住する市区町村の窓口で要介護認定を申請します。
    申請の際には介護保険被保険証が必要です。

  2. 市区町村の調査員が自宅などを訪問し、認定調査を行います。
    また、市区町村が主治医に主治医意見書の作成を依頼します。
    主治医がいない場合には、市区町村の指定医による診察を受けることが必要です。

  3. コンピュータによる要介護度の判定が行われた(一次判定)のち、介護認定審査会により要介護度が判定されます(二次判定)。

  4. 市区町村が介護認定審査会の判定に基づいて要介護度を認定します。
    認定は要支援1・2、要介護1~5までの7段階のほか、非該当(自立)もあります。認定の有効期間は新規・変更申請の場合で原則6カ月、更新申請で原則12カ月です。

  5. 要支援1・2の場合は地域包括支援センター、要介護1以上の場合は居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)へ、介護サービス計画書(ケアプラン)の作成を依頼します。

  6. ケアプランに沿って介護サービスの利用を開始します。
以下の記事では公的介護保険の申請からサービスの利用開始までの流れをより詳しく解説しています。併せてご覧ください。

在宅介護にかかる費用

介護サービスを利用した場合、利用したサービス費の1~3割が自己負担となります。また、公的介護保険制度の限度額を超えた利用分や公的介護保険制度の対象外のサービスは全額自己負担しなければなりません。

在宅介護の場合、以下のように、車いすや特殊寝台、ポータブルトイレなどの設置費用がかかる可能性もあります。
 
生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅介護の月額費用は平均4.8万円です。月々の費用負担が1万円程度になるケースもあれば、15万円以上となるケースもあるため、平均の月額費用を参考にしながら余裕を持って資金計画を立てておくとよいでしょう。
介護の経済的負担を抑えるなら、税額控除や限度額認定制度などを活用することがおすすめです。介護費用の準備には、民間の介護保険を活用するのもよいでしょう。

介護費用の概要や負担を抑える方法は以下の記事でより詳しく解説しています。

介護をする家族が利用できる制度

在宅介護では介護する方への支援も欠かせません。介護者の負担を軽減させるためにも、各種制度を活用しましょう。

働きながら家族の介護を担う方が活用できる制度には、介護休業と介護休暇の2種類があります。それぞれ概要は以下のとおりです。

制度

概要

介護休業

労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業制度です。雇用保険の被保険者のうち、一定の条件を満たす方には、介護休業期間中に休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。対象家族1人当たり3回まで、通算93日まで利用できます。

介護休暇

労働者が要介護状態の家族の介護をするための休暇制度です。対象家族が1人なら年5日まで、2人以上なら年10日まで取得でき、1日または時間を単位とします。

介護休業中に受給できる介護休業給付金は、下記記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

在宅介護では、介護サービスを活用して介護者の負担軽減を


住み慣れた自宅で介護を受ける「在宅介護」は、より自立して生活したい、自由に暮らしたいと考える方に適している介護方法です。公的機関や民間企業の介護サービスを上手に活用しながら、介護者の負担を抑えられるよう工夫していきましょう。

公的介護サービスであっても、一定の介護費用がかかります。介護の度合いによっては、経済的負担や介護者の身体的負担が増え、場合によっては施設への入所を検討する必要もあるでしょう。

将来の介護費用負担に備えるなら、民間介護保険の活用も検討するとよいでしょう。。現金給付が受けられるため、生活費や公的介護保険適用範囲外のサービスの費用負担に備えることも可能です。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年1月17日

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