「要支援1」とはどのような状態?利用できる介護予防サービスも紹介


「要支援1」がどのような状況か、ご存知ですか?要支援1とは、要介護認定の7段階中で最も軽い段階です。では正常な状態とどう異なるのでしょうか。

当記事では、要支援1の状態と認定の基準をわかりやすく解説します。また、要支援1の場合に利用が可能となる介護予防サービスの種類や具体的な利用例も紹介するため、参考にしてください。

要支援1はどのような状態?

要支援1とひと口に言っても、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。要支援1と認定される基準や、自立状態・要支援2と異なる点について説明します。

要支援1に認定される基準

要支援1の状態は、7段階の要介護認定のなかで最も軽いものといえます。具体的には、立ち上がりや歩行の動作に部分的な支援を要する状態です。

要介護認定には、要介護度の判定基準として「要介護認定等基準時間」が設けられています。要介護認定等基準時間とは、本人の介護にかかる時間を表すものです。

要支援1の要介護認定等基準時間は、「25分以上32分未満」と定められています。

一般的に、要支援1の場合は食事・排せつ・着替えなどの介護は必要ありません。家事のフォローや見守りがおもな支援内容であることから、比較的短い基準時間となっています。

自立状態・要支援2との違い

要支援1と自立状態・要支援2を比べた際に、異なる点を紹介します。

要支援1と自立状態の違い

要支援1と自立状態の違いは、日常生活動作についての能力とされています。

自立状態の場合、起居や歩行、服薬や電話などの生活動作を自力で行なうことが可能です。一方、要支援状態の場合は、何らかの支援が必要となります。

要支援1と要支援2の違い

要介護認定における要支援1と要支援2の違いは、症状の重さとサポートの程度とされています。

要支援2の場合、身体機能の低下が要支援1よりも明らかです。

要支援1では立ち上がるときにサポートを要します。一方、要支援2では立ち上がるときだけでなく起き上がるときにも手助けがいり、普段の生活における意思決定や買い物に援助が必要です。

要支援1で利用できる介護予防サービスは?

要支援1と認定が出た方は、介護予防サービスを利用できます。介護予防サービスとはその名のとおり、介護を要する状態にならないよう予防するサービスのことです。

ここでは、要支援1の方が利用できるおもな介護予防サービスを紹介します。

自宅で利用できる介護予防サービス

訪問型の介護予防サービスは、自宅で受けることが可能です。介護や看護などの有資格者が自宅に訪問して、各種サービスを提供します。

おもな訪問型介護予防サービスは以下のとおりです。

介護予防訪問入浴

自宅での入浴が困難な方が対象です。浴槽を積んだ入浴車が自宅を訪問し、看護師やホームヘルパーが入浴の介助を行ないます。

介護予防訪問リハビリテーション

医師の指示のもと、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問してリハビリテーションを行ないます。心身の機能維持や日常生活の自立を支援することが目的です。

介護予防訪問看護

医師の指示のもとに看護師や保健師などが自宅を訪問し、診療の補助や療養上の支援を実施します。本人の病状や障がいの観察、医療機器管理や医療処置などを行なうサービスです。

介護予防居宅療養管理指導

自宅で療養しているために通院が困難な方のもとに、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などが訪問し、療養上の管理や指導、助言を行ないます。

自宅の生活環境を整える介護予防サービス

要支援1に認定された方は、自宅での生活環境をよりよく整えるための介護予防サービスを受けられます。

暮らしの環境を整備できる介護予防サービスは以下のとおりです。

介護予防福祉用具貸与

要支援1の方は、公的介護保険を使って福祉用具をレンタルできます。具体的には、工事不要の手すりやスロープ、歩行器や歩行補助杖などです。

特定介護予防福祉用具販売

特定介護予防福祉用具販売とは、排せつや入浴などで使用する、レンタルには適さない福祉用具の購入費を助成する介護予防サービスの名称です。

対象となる福祉用具には、腰掛便座・入浴補助用具・簡易浴槽などがあります。

介護予防住宅改修費支給

介護予防を目的とした自宅の改修工事をする場合、対象工事費の一部が支給されます。支給限度額は20万円で、改修前に市区町村への申請が必要です。

通って利用できる介護予防サービス

通所型の介護予防サービスは、本人が施設に通って利用できます。できるだけ自立した生活を送れるよう、他者とのかかわりや心身機能の維持、家族の介護負担軽減を目的とした介護予防サービスです。

通所型の介護予防サービスを以下に紹介します。

介護予防認知症対応型通所介護

住み慣れた地域で自分らしく暮らすことを目的とした、地域密着型介護予防サービスの一つです。

軽度の認知症の方が介護予防を目的とした通所介護(デイサービス)事業所などに通い、入浴・排せつ・食事といった身体介護や生活相談、健康状態の確認などを受けられます。

介護予防通所リハビリテーション

「デイケア」とも呼ばれる介護予防サービスで、介護老人保健施設や病院などに通い、理学療法や作業療法などの専門的なリハビリテーションを受けることが可能です。

食事、入浴などの生活に必要な動作を維持・向上する訓練をはじめ、要介護状態になるのを防ぐための多様な訓練を行なっています。

宿泊して利用できる介護予防サービス

短期入所型の介護予防サービスは、施設に泊まって利用できます。

家族の介護負担軽減だけでなく、介護者の不在時に本人の安全を確保するためにも利用できるため安心です。

宿泊での利用が可能な介護予防サービスを以下に紹介します。

介護予防短期入所生活介護

特別養護老人ホームなどの施設に、短期間に限り入所できる介護予防サービスです。一般型ショートステイとも呼ばれ、生活面の介護や支援を受けられます。

介護予防短期入所療養介護

介護老人保健施設や介護医療院などに短期間入所することが可能です。医療型ショートステイとも呼ばれ、医療ケアに特化した支援やリハビリテーションを受けられます。

入居して利用できる介護予防サービス

要支援1と認定された場合、「介護予防特定施設入居者生活介護」という介護予防サービスを利用して特定施設に入居できます。

ここでいう特定施設に該当するのは、有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)・養護老人ホーム・一部のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。入居できる条件は施設によって異なるため、事前の確認が必要となります。

要支援1の方は自費でデイサービスとホームヘルプサービスを利用できる

要支援1の方には、公的介護保険が適用される介護予防サービスのほか、自費での利用が可能なサービスも用意されています。

要支援1の方が自費で利用できるのは、「デイサービス(介護予防通所介護)」と「ホームヘルプサービス(介護予防訪問介護)」の2つです。

デイサービスは、介護の予防を目的に、デイサービスセンターなどに日帰りで通う形式です。入浴や食事、健康状態の観察やレクリエーション活動などのサービスを提供しています。

ホームヘルプサービスとは、ホームヘルパーが自宅を訪問して、食事や排せつなどの身体介護や、掃除・洗濯などの生活援助を行なうサービスです。

2つのサービスは、2017(平成29)年3月に制度が改正されるまでは介護予防サービスに含まれていました。しかし、制度改正のため現在は「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に内包されています。

介護予防・日常生活支援総合事業とは、65歳以上の高齢者の安心できる暮らしを目的として、地域が主体となり介護予防サービスの多様化を図る事業です。市区町村や民間企業、NPO法人などがサービスを提供しています。

2つのサービスの一般的な費用の相場は以下のとおりです。

1回のデイサービス利用

1カ月で2,000円程度

2回のホームヘルプサービス利用

1カ月で2,500円程度

<em>公的介護保険の適用外ではあるものの、費用負担は過度に大きいわけではありません。</em> ただし、上記の費用はあくまでも相場で、実際はサービス提供者によって異なる点に注意してください。

要支援1で受けられる介護予防サービスの費用の上限は?

公的介護保険では要介護度によって、利用できるサービスの費用の上限である「区分支給限度額」が決められています。

要支援1の場合、区分支給限度額は1カ月当たり5万320円です。
介護予防サービスを区分支給限度額の範囲内で利用する場合、費用の1~3割を利用者が負担するのが原則となっています。超過分の費用は全額自己負担となるため注意が必要です。

ただし、ケアプランはケアマネジャーが区分支給限度額を超えないよう作成するため、多くの場合、超過する心配はありません。

要支援1で介護予防サービスを利用する具体例3つ

ここからは、要支援1の方が介護予防サービスを使うことを想定して具体例を3つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

なお、費用の試算には厚生労働省の「介護サービス概算料金の試算」を用いています。

1人で暮らしている場合

要支援1のAさんは、家族が遠方に住んでいて1人で暮らしています。

Aさんは足腰の状態を維持するため、介護予防訪問リハビリテーションと介護予防通所リハビリテーションを週1回利用しているとの設定で、費用を試算してみましょう。
 

試算

1回(月4回)の介護予防訪問リハビリテーション

12,600

1回(月4回)の介護予防通所リハビリテーション

25,220

1カ月の費用の合計

37,820

自己負担額(1割負担の場合)

3,782

家族と暮らしている場合

要支援1のBさんは家族と暮らしていますが、歩行時や立ち上がり時にふらつきがあり転倒の不安を感じています。

家族が不在となるタイミングで、安全確保とリハビリテーションのために1泊2日の介護予防短期入所療養介護を月に3回利用しているという設定で、費用を試算してみましょう。
 

試算

12日を3回(月6日)の介護予防短期入所療養介護

39,180

1カ月の費用の合計

39,180

自己負担額(1割負担の場合)

3,918

 

ただし、介護予防短期入所療養介護では、食費や居住費などの公的介護保険適用外の費用も必要となります。

施設に入居している場合

要支援1のCさんは、介護予防特定施設入居者生活介護の介護予防サービスによって、サービス付き高齢者向け住宅に入居しています。

費用の試算額は以下のとおりです。
 

試算

介護予防特定施設入居者生活介護

66,160

1カ月の費用の合計

66,160

自己負担額(1割負担の場合)

6,616

ただし、特定施設に入居するケースでは介護予防サービス費用に加え、家賃や食費、管理費、水光熱費などの公的介護保険適用外の費用も必要です。

介護予防サービスを利用する流れ

介護予防サービスの利用には、市区町村の介護保険課窓口や地域包括支援センターで要介護認定の申請を行う必要があります。

申請後は訪問調査員が、本人の自宅(入院中の場合は入院先の病院)へ認定調査に訪れます。認定調査結果とかかりつけ医の意見書をもとに要介護度を判定されるのが、要介護認定の一般的な流れです。

また、介護予防サービスを利用するにはケアプランの作成も必要となります。要介護度の認定後、地域包括支援センターに相談してケアプランを作成してもらいましょう。

介護予防サービスはケアプランに沿って利用することになります。

なお、公的介護保険制度や申請方法については以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。

要支援1の方が一人暮らしを続けるための注意点

要支援1の方が一人暮らしを続けるうえで注意したいポイントを、3つに分けて紹介します。

本人が注意したいポイント

一人暮らしの継続には、心身ともに健康な状態を保ち、介護の不要な生活を送ることが重要です。

具体的には、バランスの取れた食生活や他者とのコミュニケーションを意識的に実践するとよいでしょう。

サポートする側が注意したいポイント

要支援1の方をサポートする側の介護負担は比較的少ないとはいえ、負担がまったくないわけではありません。

本人が介護予防サービスを受けられるよう、積極的に働きかけて介護負担を軽減したり、身体・生活機能の低下を防いだりすることが大切です。

環境面で注意したいポイント

自宅への手すりの設置や滑りにくい床材への変更、トイレの便座交換などのリフォームを検討するのも、一人暮らしを続けるポイントの一つです。

本人の自宅での生活がより安心できるものになるよう、環境整備を検討しましょう。

要支援1で利用できるサービスを使って心身の機能を維持しよう


要支援1は日常的な動作全般をほとんど自力で行なえる状態ですが、立ち上がりや家事などにはサポートが必要です。

要介護認定で要支援1との判定が出た方は、訪問型や通所型の介護予防サービスなどの利用が可能となるため、本人の心身機能の維持やサポート者の介護負担軽減に役立ちます。自分らしい生活を継続するためにも、各種サービスを積極的に利用しましょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2023年10月25日

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