要介護2とはどのような状態?
症状の目安や利用可能なサービス・費用


要介護認定を受けると、さまざまな介護サービスを少ない負担で利用できます。しかし、具体的にどのような状態で認定されるのか、また、認知症の場合は要介護2に認定されるのかと疑問に思っている方も多いでしょう。

実際には、認知症の方で要介護2に認定されるケースは少なくありません。ただし、必ずしも認定されるとは限りませんので、認定の基準目安を把握しておくことが重要です。

この記事では、要介護2の具体的な症状や状態、認知症の場合の要介護2への認定基準、そして要介護2の方が利用可能なサービスなどを紹介します。

要介護2とはどのような状態?

要介護度にはいくつかの段階がありますが、そのなかで要介護2とはどのような位置にあるのでしょうか。

ここでは、要介護2の認定基準の概要や、ほかの要介護度との違いを説明します。

要介護2の認定基準

要介護認定は、介護が必要な程度に応じて8つの段階(自立~要介護5)に分かれており、要介護度の数字が大きくなるほど介護が必要な程度も増します。要介護2は4番目に高い介護レベル(要介護度)です。

要介護認定は、本人の心身の状況に関する調査に加え、下記の5つの介護行為にかかる時間(要介護認定等基準時間)が診断基準になっています。
  • 直接生活介助:入浴、排せつ、食事等の介護
  • 間接生活介助:洗濯、掃除等の家事援助等
  • BPSD 関連行為:徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
  • 機能訓練関連行為:歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
  • 医療関連行為:輸液の管理、じょくそう(床ずれ)の処置等の診療の補助等
要介護認定等基準時間は、介護の手間を表すものさしとして使われています。非該当(自立)~要介護5までの要介護認定等基準時間は以下の表のとおりです。
 

区分

要介護認定等基準時間

非該当

25 分未満

要支援1

25 分以上 32 分未満

要支援 2・要介護 1

32 分以上 50 分未満

要介護2

50 分以上 70 分未満

要介護3

70 分以上 90 分未満

要介護4

90 分以上 110 分未満

要介護5

110 分以上


要介護と要支援の違い

「日常生活動作」(食事、移動、排せつ、入浴など基本的な身の回りのこと)をほぼ自分で行える場合は、「要介護」ではなく「要支援」と認定されます。ただし、要支援の方は自立(非該当)の方とは異なり、「手段的日常生活動作」の一部にサポートが必要です。

手段的日常生活動作とは判断や意思決定を要する動作で、具体的には以下のようなものが挙げられます。
  • 買い物
  • 家事
  • 電話利用
  • 薬の内服
  • 金銭管理 など
一方、要介護になるには、手段的日常生活動作だけでなく、最低限の日常生活動作にも介助を必要とするかどうかが一つの目安となります。

要介護1や要介護3との違い

要介護2とその前後の要介護度では、どのような違いがあるのかわかりやすく解説します。

要介護1の方は、ほぼ自分の力で食事、移動、排せつ、入浴などの基本的な日常生活動作を行えます。しかし、買い物、家事、金銭管理などの手段的日常生活動作能力は要支援の方よりも低下しており、場合によっては部分的に介護が必要です。

要介護2の方は要介護1の方とは異なり、日常生活動作についても一部でサポートが必要となります。ただし、見守りなど周囲の協力があれば、まだ自分で行えることも多いでしょう。

これに対し、要介護3の方は、普段の生活における動作のほとんどを自分一人で行うのが難しい状態です。

わかりやすく食事の場面に例えると、以下のとおりです。
  • 要介護1:自分で食事ができる
  • 要介護2:周囲の見守りや部分的な手助けを受けて食事ができる
  • 要介護3:自力で食事ができないため、介助が必要
なお、要介護3の基準や症状などは、別記事でも解説しています。興味のある方は、以下の関連記事もぜひご覧ください。

認知症と要介護2の関連性

ここでは、認知症と要介護2の関係について、判定基準と症状の目安を解説します。

まず、要介護と要支援の判定では、「認知機能の低下」は重要な判断基準の一つとなります。認知症を発症している場合、要介護と判定されることが多いのはこのためです。

しかし、認知症にも軽度から重度まで段階があり、軽度の場合は要介護1や要支援に認定されることもあります。軽度の認知症とは、「日にちを忘れる」などの軽微な症状が特徴です。

一方、意思疎通が困難になる重度の認知症は、要介護4に相当します。これに比べると、要介護3や要介護2のレベルでは、まだ意思疎通が可能なことが多い状態です。

これらを総合的に考えると、生活の一部に手助けが必要な状態に加え、意思疎通はできても金銭管理が難しいといった程度の認知症の症状がある場合、要介護2に認定される可能性があります。

認知症で要介護2の方に見られる症状や実情

ここでは、要介護2の方の具体的な状態や実情を解説します。

要介護2の方に見られる症状具体例

前述のとおり、要介護2では多くのサポートが必要となるので、一人での生活が難しくなってきます。家事だけでなく、排せつや入浴、食事なども補助が必要になってくるためです。

また、爪を切る、お金を管理するなど、判断力を必要とする身の回りの管理が難しくなることも多くあります。

要介護2の方の介護年数

認知症の介護期間は、要介護2以上になってから平均で約8年※1という結果が出ています。

しかし、要介護2であっても、症状や健康状態によって必要な介護の程度は大きく異なるため、一概には断定できません。

実際の認知症患者の寿命(余命)は、発症から5年~12年と幅広く、なかには20年以上※2介護生活が続くケースもあります。

認知症の要介護2で一人暮らしできるか

要介護2は、普段の生活に部分的な手助けが必要な状態であり、一人暮らしができるかどうかを判断する重要な基準となります。認知症の程度や周囲のサポートによっては一人暮らしも可能ですが、必要に応じて施設入所も検討するなど、早めに選択肢を把握しておくことが大切です。

要介護2の方が利用できる介護サービス

要介護2に認定された方は、自宅内外でさまざまな介護サービスを活用できます。以下では、利用できる介護サービスを種類別に紹介します。

通所介護サービス

通所介護サービスとは、要介護認定を受けた方が施設に通いながら受ける介護サービスです。通所介護サービスには、以下のような種類があります。

通所介護(デイサービス)・地域密着型通所介護

日常生活(食事や入浴など)の支援と、生活機能向上を目指した訓練を行うサービス。利用者間の交流もある。

通所リハビリテーション(デイケア)

デイサービスと比べて、医療的ケアにより重点を置いた通所介護サービス。体操などを通じて身体機能の維持を目指す訓練も行う。

療養通所介護

看護師による常時の観察を必要とする難病などの重度要介護者、またはがん末期患者を対象とした施設。病状によりデイサービスの利用が難しい方も利用できる。

認知症対応型通所介護

認知症を発症している方が利用できる通所介護サービス。認知症に関して専門的なケアを提供しているため、認知症患者により適した介護を受けられる。

 

訪問介護サービス

訪問介護サービスとは、介護スタッフが利用者の自宅に訪問して支援する介護サービスです。おもなサービスの種類は以下のとおりです。
  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
ホームヘルパーが自宅を訪問し、さまざまな身辺の介護を行う訪問介護のほか、特に負担の大きい入浴介護に限定したサービスもあります。また、持病や認知症、身体の状態によっては、看護師や理学療法士によるサポートが受けられるサービスも利用可能です。

短期入所型サービス

短期的に宿泊して利用できるサービスです。短期入所生活介護(ショートステイ)と短期入所療養介護(医療型ショートステイ)があり、どちらも最長で30日まで連続利用が可能です。

入所できる施設

要介護認定された方が入所できる施設には、目的などによっていくつか種類があります。

公的な施設

特別養護老人ホーム

介護老人保健施設

介護療養型医療施設

介護医療院

民間施設

認知症高齢者グループホーム

有料老人ホーム

 

ただし、特別養護老人ホームは一般的に要介護3から利用でき、要介護2はやむを得ない理由がある場合のみ利用可能です。

利用を希望する場合、特別養護老人ホーム以外での生活が難しい理由(日常生活に支障をきたすような認知症の症状、知的障害や精神障害の有無など)を添えて入所申し込みを行います。特例と認められる場合、入所が可能となります。

レンタルできる福祉用具

要介護度に応じて、必要な福祉用具がレンタルできます。レンタル費用は収入に応じて全体費用の1~3割が自己負担になり、自己負担外の費用は支給限度額内に含まれます。

要介護2でレンタルできる福祉用具は、以下の12種類です。
  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助杖
  • 車いす
  • 車いす付属品
  • 特殊寝台
  • 特殊寝台付属品
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 認知症老人徘徊感知器
  • 移動用リフト

要介護2のケアにかかる費用

要介護2に認定された方のケアにかかる費用を解説します。

介護サービスの自己負担分

介護サービスを利用した場合、利用者は費用の1割(所得が一定以上の場合は2割または3割)を負担します。

利用できる居宅サービスの上限額は要介護度によって決まっており、要介護2の場合は19万7,050円です。この上限額を超えた分の費用は、利用者の全額負担となります。

要介護2で一人暮らしをしている場合、毎日のように介護サービスなどが必要になるため、費用もかさみがちになる点に注意が必要です。

介護保険施設の利用料など

介護保険施設を利用した場合は、費用の1割(所得により2割または3割)負担のほかに、居住費や食費などの施設利用にかかる費用が必要です。施設によって費用は異なり、保険適用外の費用は全額自己負担になります。

負担の軽減措置は市区町村への申請が必要

所得が一定額以下の方や介護費用が高額になった方には、軽減措置が設けられています。おもな軽減措置は以下のとおりです。
  • 特定入所者介護サービス費(補足給付):介護保険施設入所者などに対する、負担限度額を超えた居住費と食費への補足給付
  • 高額介護サービス費:介護サービスの利用者負担額が所定の金額を超えた場合に支給
  • 高額医療・高額介護合算制度:同じ医療保険の世帯内で、公的医療保険と公的介護保険の自己負担合算額が所定の金額を超えた場合に支給
いずれも所得や資産などが一定以下の場合が支給の対象で、軽減措置の利用には市区町村への申請が必要です。

*関連記事:介護サービスの自己負担額はいくら?軽減制度も紹介

認知症の要介護2は介護サービスを活用したケアが重要


要介護2になると、日常生活をすべて自分で行うのは困難です。要支援や要介護1と比較して、周囲のサポートがより重要になります。

周囲のサポート体制を万全に整えれば一人暮らしも可能ですが、親族だけでサポートを続けるのは現実的には難しいケースも多いでしょう。そのため、さまざまな介護サービスや民間サービスを活用する必要があります。また、無理に在宅生活を続けようとせず、施設入所を検討しておくことも大切です。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年6月3日

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