公的介護保険の施設サービスとは?
種類や費用の目安


自分の親が要介護状態となったときのために、公的介護保険で利用できる「施設サービス」を詳しく理解しておきたい方も少なくないでしょう。施設サービスとは、介護保険施設に入所して受ける介護サービスのことです。

当記事では、施設サービスとはどのようなサービスなのか、サービスの種類や対象者、自己負担額の目安などを解説します。

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「施設サービス」とは

介護保険施設に入所して受ける介護サービスを「施設サービス」といいます。介護保険施設とは、居住型の公的な介護施設のことです。おもな運営主体は、地方公共団体、社会福祉法人、医療法人などです。

介護保険施設には以下の3種類があり、必要とする介護の内容に応じて入所する施設を選択します。

介護老人福祉施設
介護老人保健施設
介護医療院

なお、施設サービスは要支援1・2の方は利用できません。

それぞれがどのような施設なのか、詳しく見ていきましょう。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

まずは、生活介護が中心の介護老人福祉施設について解説します。

介護老人福祉施設の特徴

介護老人福祉施設は、常に介護を必要とし、在宅での介護が困難な方が入所する施設です。生活の支援や介護(食事、入浴、排泄など)、機能訓練、健康管理上のサービスなどを受けられます。

居室には、以下4つのタイプがあります。
  • 従来型個室:完全な個室タイプ
  • 多床室:2名以上で利用する相部屋タイプ
  • ユニット型個室:共有スペース(リビング)の周りに完全な個室が設置されているタイプ
  • ユニット型個室的多床室:共有スペースの周りに個人の居室が設置されているが、完全な個室ではないタイプ

介護老人福祉施設の対象者

介護老人福祉施設の新規入所は、原則として要介護3以上の認定を受けた方が対象ですが、特例として要介護1・2の方でも入所が認められるケースもあります。
例えば、認知症や知的障害、精神障害などにより、日常生活に支障をきたすほどの症状や行動が頻繁に見られ、在宅生活が困難な場合は、認められる可能性があるでしょう。

ただし、介護老人福祉施設は入所希望者が多いため、申し込んでもすぐに入所できるとは限りません。厚生労働省の調査によると、2022年4月1日時点で要介護3以上の方で25.3万人、要介護1・2の方で2.2万人が入所待ちとなっています。

介護老人福祉施設の利用料

介護老人福祉施設の利用料(施設サービス費)は、要介護度や居室のタイプによって異なります。1日あたりの基本金額は、以下のとおりです。

 

従来型個室

多床室

ユニット型個室

ユニット型個室的

多床室

要介護1

589

589

670

670

要介護2

659

659

740

740

要介護3

732

732

815

815

要介護4

802

802

886

886

要介護5

871

871

955

955

※1単位10円、自己負担1割の場合。施設の機能や地域によっても変わります。

介護老人保健施設(老健)

次に、介護やリハビリテーションが中心の介護老人保健施設について解説します。

介護老人保健施設の特徴

介護老人保健施設は、病状が安定期にあり、在宅復帰を目指している方が入所する施設です。そのため、基本的に長期入所はできません。もちろん、さまざまな理由で滞在期間が長くなるケースもありますが、一般的には3カ月~6カ月ごとに退所審査が行われます。

介護老人保健施設では、生活の支援を受けながら、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションを受けられます。また、医師や看護師の医療サポートも受けられ、原則として医療費は施設側が負担してくれます。例外として、施設の医師に許可なく他の医療機関を受診した場合などは全額自己負担になる場合があります。

介護老人保健施設の対象者

介護老人保健施設は、要介護1以上の認定を受けた方を対象とする施設です。ただし、病状が安定しており、在宅復帰のための支援が必要な場合に限ります。

例えば、退院が決まったものの、在宅での日常生活の動作に不安があり、すぐには自宅での生活に戻ることが難しい方などが対象となります。

介護老人保健施設の利用料

介護老人福祉施設と同じく、介護老人保健施設の居室も4つのタイプがあり、居室形態や要介護度により利用料(施設サービス費)が異なります。1日あたりの基本金額は、以下のとおりです。

 

従来型個室

多床室

ユニット型個室

ユニット型個室的

多床室

要介護1

717

793

802

802

要介護2

763

843

848

848

要介護3

828

908

913

913

要介護4

883

961

968

968

要介護5

932

1,012

1,018

1,018

※1単位10円、自己負担1割の場合。施設の機能や地域によっても変わります。

介護医療院

長期療養と生活のための機能を兼ね備えた介護医療院について解説します。

介護医療院の特徴

介護医療院は、医学的管理のもとで長期にわたって療養が必要な方が入所する施設です。介護医療院では、医療ケアと介護サービスの両方を受けられます。
  • 医療ケア:痰の吸引、点滴、薬の処方、看取り・ターミナルケアなど
  • 介護サービス:食事、入浴、排泄介助・機能訓練・レクリエーションなど
介護医療院は、介護療養型医療施設の廃止にともない、2018年に新たに創設された介護保険施設です。そのため、介護老人福祉施設・介護老人保健施設に比べると施設の数は少ないのが現状です。

介護医療院の対象者

介護医療院は、要介護1以上の認定を受けた方を対象とする施設です。介護医療院にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は非常に重い身体疾患がある方や身体合併症を有する認知症の方を、Ⅱ型はⅠ型に比べると容体が安定している方を対象としています。

そのため、Ⅱ型よりもⅠ型のほうが、利用者1人に対して医師や看護師が手厚く配置されています。

介護医療院の利用料

介護老人福祉施設・介護老人保健施設と同じく、介護医療院の居室も4つのタイプがあり、居室のタイプや要介護度により利用料(施設サービス費)が異なります。Ⅰ型とⅡ型それぞれの1日あたりの基本金額は以下になります。

 【Ⅰ型】

 

従来型個室

多床室

ユニット型個室

ユニット型個室的

多床室

要介護1

721

833

850

850

要介護2

832

943

960

960

要介護3

1,070

1,182

1,199

1,199

要介護4

1,172

1,283

1,300

1,300

要介護5

1,263

1,375

1,392

1,392

【Ⅱ型】

 

従来型個室

多床室

ユニット型個室

ユニット型個室的

多床室

要介護1

675

786

849

849

要介護2

771

883

951

951

要介護3

981

1,092

1,173

1,173

要介護4

1,069

1,181

1,267

1,267

要介護5

1,149

1,261

1,353

1,353

※いずれも1単位10円、自己負担1割の場合。施設の機能や地域によっても変わります。

施設サービスを利用した際の自己負担額は?

上記で紹介した各施設の利用料は、その施設で受ける介護サービスに対する費用です。介護保険施設に入所すると、施設サービス費(自己負担1~3割)に加えて、居住費・食費・日常生活費の支払いが発生します。居住費・食費・日常生活費は、全額を自己負担しなければなりません。

それぞれの金額は施設との契約で決まりますが、居住費・食費には以下のように1日あたりの基準費用額が定められています。

居住費・食費の基準費用額(1日)

居住費

食費

従来型個室

多床室

ユニット型個室

ユニット型個室的

多床室

1,728

1,231円)

437

915円)

2,066

1,728

1,445

※( )内は介護老人福祉施設または短期入所生活介護を利用した場合
それでは、介護保険施設を利用したときの1カ月あたりの自己負担額はどれくらいになるのか、具体例を見てみましょう。

 

要介護3で自己負担割合が1割の方が、介護老人福祉施設の多床室を利用した場合

施設の利用料

21,960円(732円×30日)

居住費

27,450円(915円×30日)

食費

43,350円(1,445円×30日)

日常生活費

1万円(施設によって決められます)

合  計

102,760

 

以下の記事では公的介護施設・民間介護施設の利用料の相場や負担を軽減する方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:介護施設の費用はいくら?利用料の相場・負担軽減の方法

施設サービスの種類や特徴を把握し、将来の介護に備えよう


施設サービスは、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院に入所して受けるサービスで、施設ごとに介護の内容や入所条件、利用料が異なります。将来の介護に備え、施設サービスの種類や特徴を理解しておきましょう。

また、施設サービスの利用にかかる費用負担は決して小さくありません。将来のために、介護資金をしっかりと準備しておくことも大切です。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2025年3月10日

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