難病で公的介護保険は利用できる?
利用可能な条件と経済的負担を軽減する方法


突然、難病と診断されたとき、「今後の生活をどうしたらよいのか」と不安になる方もいるでしょう。

一部の難病では、第2号被保険者の方も公的介護保険の介護サービスを利用できる可能性があります。また、いくつか経済的な負担を軽減する方法もあります。

本記事では、難病の種類の違いを整理し、公的介護保険で受けられる介護サービスや、経済的な負担を軽減する方法について紹介します。

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「難病」とは?

はじめに、難病と指定難病の違いを解説します。

難病とは

難病とは、原因不明かつ治療法が確立していない希少疾患を指し、長期療養を必要とします。

症状や経過、治療状況などは個人差があるため、身体的・経済的に大きな負担となるケースもあるでしょう。

指定難病との違い

「指定難病」とは、難病のうち厚生労働省が定める条件を満たす病気のことです。具体的な条件は以下のとおりです。
  • 日本国内での患者数が人口の0.1%程度以下であること
  • 客観的な診断基準(または、それに準ずるもの)が確立していること
こちらの「指定難病」に該当する場合、医療費助成制度の対象となります。

特定疾病との違い

「特定疾病」とは、介護保険施行令第2条で定められた、加齢に起因して発症する疾病です。
現在は16種類の病気が指定を受けています。

どの難病なら介護サービスを利用できる?

公的介護保険は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳の「第2号被保険者」に分かれます。
第1号被保険者であれば、難病の種類を問わず、要介護認定か要支援認定を受ければ介護サービスの利用が可能です。
第2号被保険者の場合は「加齢によって発症する16の特定疾病」が原因で要支援・要介護状態になった場合に限り利用できます。

特定疾病に該当する代表的な難病は次のとおりです。
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 後縦靱帯骨化症
  • 進行性核上性麻痺
  • 大脳皮質基底核変性症
  • パーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 多系統萎縮症

難病の方が利用できる介護サービス

 
要介護認定または要支援認定を受けた難病の方が利用できる介護サービスは、通常の介護サービスと変わりありません。

1割の自己負担(所得に応じて2割、または3割)で、自宅での生活支援から施設入所まで幅広いサポートを受けられます。

なお、要介護認定を受けるには、自治体の窓口で手続きが必要です。手続きの流れについては、以下の記事で解説していますので、ご覧ください。

公的介護保険とは?公的介護保険申請から利用開始まで

居宅サービス

自宅で暮らしながら介護や日常生活の支援を受けられるサービスです。

訪問介護ではホームヘルパーが自宅を訪れ、食事や排せつなどをサポートします。訪問看護では看護師などの専門スタッフが体調管理や医療的ケアを行うため、安心して自宅での生活を続けられるでしょう。

介護施設や医療機関に通う通所サービスでは、リハビリや生活支援を受けながら利用者同士の交流も楽しめます。

また、短期入所サービス(ショートステイ)では短期間だけ施設に滞在し、介護や生活支援を受けられます。家族の休養や急な事情への対応にも役立つでしょう。

居宅サービスの種類や自己負担額、利用までの流れについては、こちらの記事で解説しています。

居宅サービスとは?種類や自己負担額・利用開始までの流れ

施設サービス

介護保険施設に入所して受ける介護サービスで、3種類の施設があります。
  • 特別養護老人ホーム:生活支援や機能訓練を受けられる。自宅介護が困難な要介護3以上の方が対象
  • 介護老人保健施設:在宅復帰を目的とする施設で、病状が安定している要介護1以上の方が対象
  • 介護医療院:医療ケアと介護サービスの両方を受けられる施設で、長期療養を必要とする要介護1以上の方が対象
それぞれの役割や対象が異なるため、本人や家族の希望、将来の暮らし方を踏まえて選ぶことが大切です。

施設サービスの種類や自己負担額については、こちらの記事で解説しています。

公的介護保険の施設サービスとは?種類や費用の目安

地域密着型サービス

認知症や要介護状態になっても、住み慣れた地域での生活が継続できるように支援するサービスです。

例えば、小規模多機能型居宅介護では通い・訪問・宿泊を組み合わせられるため、家庭の状況や体調に合わせて柔軟に利用できます。

認知症対応型通所介護では、専門スタッフによるケアを受けながら安心して生活できるでしょう。

このほか夜間対応型訪問介護など10種類のサービスがあり、利用者や家族の状況に応じて選択ができます。

地域密着型サービスの種類やメリット・デメリット、利用までの流れについては、こちらの記事で解説しています。

地域密着型サービスとは?サービスの対象者・種類・利用の流れ

福祉用具購入・レンタルサービス

公的介護保険を利用すると、車いすや介護用ベッド、手すりなどの福祉用具をレンタルまたは購入する際に給付を受けられます。

費用の負担を抑えながら必要な福祉用具を利用できますが、要介護度によってレンタルできる品目が決まっている点には注意しましょう。

また、基本的にはレンタルが優先されますが、再利用が難しいものや衛生面で心理的に抵抗のある品目(腰掛便座や入浴補助用具、簡易浴槽など)は購入が認められています。

福祉用具の種類やレンタル・購入までの流れについては、こちらの記事で解説しています。

公的介護保険の福祉用具購入・レンタルとは?利用の流れや選び方のポイント

経済的負担を減らす方法

 
難病の治療や介護には長期的な支出を伴うことが多いため、経済的な負担を減らす方法を知っておくことは大切です。

ここでは、代表的な方法を紹介します。

指定難病医療費助成制度を利用する

通常、医療行為を受ける際には3割の自己負担が必要です。しかし、指定難病に認定されて一定の条件を満たすと医療費助成制度が適用され、自己負担が2割に軽減されます。

さらに、所得に応じて1カ月の自己負担上限額が定められており、「2割負担額」と「上限額」のいずれか低い方が適用されるため、継続的な治療でも安心して受けられるでしょう。

対象となる指定難病は348疾病(2025年4月時点)です。なお、助成を受けるためには「特定医療費(指定難病)受給者証」が必要で、申請は自治体窓口で行います。

医療費助成制度の対象となる疾患や手続きの流れは、厚生労働省のリーフレットをご覧ください。

厚生労働省リーフレット「難病にかかる医療費の助成が受けられます」

障害基礎年金・障害厚生年金を受給する

病気やけがによって日常生活や就労が制限される場合には、障害年金を受給できる可能性があります。

これは、初めて医師の診療を受けた時点で加入していた年金制度に応じて、国民年金加入者は「障害基礎年金」、厚生年金加入者は「障害厚生年金」を受給できます。

両方に該当する場合には併給も可能です。介護費用や生活費の助けとなるでしょう。

ただし、難病であっても必ず受給できるわけではありません。一定の受給要件があり、申請も複雑な面があるため、不安な方は早めにお近くの市区役所や年金事務所に相談すると安心です。

障害者手帳を取得する

障害によって自立が難しい方は、障害者手帳を取得できます。

身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類があり、状況に応じて複数を持つことも可能です。

手帳を取得すると障害者総合支援法の対象となり、医療費の自己負担軽減や国税・地方税の減免・控除、就労支援など幅広いサポートを受けられます。

このように、医療費助成制度や障害年金、障害者手帳といった制度を組み合わせることで、経済的な負担を大きく減らせます。それぞれの制度を理解し、早めに行動することが安心につながるでしょう。

公的介護保険のサービスを活用して難病介護の負担を軽減しよう


難病を抱える本人や家族にとって、治療費や介護の負担を軽減することは大きな課題です。

公的介護保険をはじめ、医療費助成制度や障害年金、障害者手帳などの制度を活用することで、経済的な負担を軽減できるでしょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年10月15日

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