介護で活用すべき制度とは?介護休業と介護休暇


最近、耳にすることが多くなった「介護休業制度」は、親や配偶者など介護を必要とする家族のために仕事を休める制度であり、介護と仕事の両立に悩む方には心強い味方になってくれます。しかし、どのように使える制度か知らない方も多いのではないでしょうか?

この記事では、介護休業制度について、介護休業と介護休暇の概要を解説します。併せて、介護休業と介護休暇の違いや使い分け、活用できる介護サービスなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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介護と仕事を両立できる制度

仕事と介護を両立させるために、一定の期間休業できる制度が「介護休業制度」です。介護休業制度には、介護休業および介護休暇があります。

介護休業

介護休業は、要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できます。有期契約労働者も要件を満たせば取得が可能です。

介護休暇

介護休暇は、要介護状態にある対象家族が1人の場合、1年間で5日まで、2人以上の場合、1年間で10日まで、1日または時間単位で取得できます。

企業が講じる介護のための選択的措置と制限

介護休業制度のほかにも、介護のために企業に定められている以下の制度もあります。
  • 短時間勤務等の措置
  • 所定外労働の制限(残業免除)
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限
  • 不利益取扱いの禁止
  • ハラスメント防止措置
「短時間勤務等の措置」は、短時間勤務制度・フレックスタイム制度・時差出勤の制度・介護費用の助成措置のうち、いずれか1つ以上の制度を設けることを事業主に義務付けており、労働者はこれらの制度を利用できます。

また、「所定外労働の制限」や「時間外労働の制限」「深夜業の制限」があることで、労働者は、介護中の残業や法定労働時間を超える労働、午後10時から午前5時までの労働を免除または制限されます。

ほかにも、「不利益取扱いの禁止」により、労働者が介護休業などを理由に解雇などの不利益な扱いを受ける心配はありません。「ハラスメント防止措置」では、上司や同僚などから受ける介護休業などを理由とした嫌がらせなどを防止することを、事業主に義務付けています。

「介護休業」と「介護休暇」の違い

ここで、介護休業と介護休暇の違いを把握しておきましょう。

申請者の基準

介護休業と介護休暇では、申請者の基準が異なります。ただし、以下は共通の基準です。
  • 要介護状態の対象家族を介護する男女労働者であること(日々雇い入れられる者を除く)
  • 要介護状態の対象家族が、事実婚を含む配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫であること
以下で、それぞれの申請者の基準を詳しく見ていきましょう。

介護休業の場合

介護休業は、前述のとおり日々雇い入れられる方は申請不可です。期間を定めて雇用されている方は、申請時点において以下に該当すれば、介護休業の申請が可能です。

・取得予定日から起算して、93日を経過する日から6カ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

なお、労使協定を締結している場合、入社1年未満の方や、1週間の所定労働日数が2日以下の方、申請日から93日以内に雇用関係がなくなる方は、介護休業の対象になりません。

介護休暇の場合

介護休暇は、日々雇い入れられる方以外のすべての労働者が申請できますが、労使協定を締結している場合、入社6カ月未満の労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は、介護休暇の対象になりません。

取得可能な日数

介護休業と介護休暇では、取得可能な日数が異なります。

介護休業の場合

介護休業は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得可能です。例えば、休業日数を「10日・83日」と2回に分けたり、「30日・30日・33日」と3回に分けたりできます。

ただし、取得可能な日数は、1年間ではなく通算である点に注意しましょう。また、介護休業の93日には、土日や祝日、夏季休業、介護休業中に出勤した日なども含まれます。

介護休暇の場合

介護休暇は、対象家族が1人の場合、1年間で5日まで取得可能です。対象家族が2人の場合は1年間で10日まで取得できますが、3人以上の場合でも10日を超えての取得はできません。

また、介護休暇の取得単位は、2021(令和3)年1月1日から、1日または時間単位となりました。

申請方法

介護休業は、休業開始予定日の2週間前までに、事業主への申請が必要です。申請は書面等で行わなければならず、社内に規定の様式がある場合はそれに従い、必要事項を記載して申請します。

規定の様式がない場合、作成する書面には以下の項目を記載します。
  • 申請年月日
  • 労働者の氏名
  • 対象家族の氏名および続柄
  • 要介護の度合い
  • 介護休業の開始予定日、終了予定日
  • 対象家族のこれまでの介護休業日数
一方、介護休暇は、書面等での申請に限定されておらず、口頭でも可能です。急に介護休暇が必要になった場合は、電話で申請もできます。

給付金の有無

介護休業および介護休暇の給与の有無は、勤務先により異なりますが、どちらの場合も支払われないのが一般的です。ただし、介護休業の場合のみ介護休業給付金制度があります。

介護休業給付金の受給金額は「休業開始時の賃金日額×支給日数×67%」の計算で求められ、対象家族1人につき93日までを限度に、3回まで受給可能です。

例えば、賃金が月30万円程度の方が、1カ月間介護休業を取得したとすると、受給できる介護休業給付金は月20.1万円程度となります。

また、給付金には上限と下限が設定されています。賃金が高い場合に給付金が際限なく高くなるわけではありません。

なお、介護休業給付金の申請はハローワークで行います。原則として、申請は事業主を経由するため、まずは勤務先に相談しましょう。例外的に、労働者本人が申請できることもあります。

介護休業給付金は以下の記事も参考にしてください。

介護休業と介護休暇はどのように使い分ける?

介護休業と介護休暇は、それぞれの特徴を把握してうまく使い分ける必要があります。どのような場合にどちらを利用するのが適しているのでしょうか?

介護休業が適しているケース

介護休業は長期間休職でき、実際の介護だけでなく、介護と仕事の両立へ向けた準備期間が必要なときにも有用です。

例えば、介護施設への入居手続きが必要な場合には、介護休業が向いているでしょう。介護施設にはいくつか種類があり、入居条件も複雑です。入居する施設を決めるだけでも時間がかかり、見学なども含め入居するまでに1~2カ月ほど必要な場合もあります。

また、遠距離介護から同居介護へと切り替える際も、介護休業が向いているでしょう。ほかにも、対象家族の看取りが近いときには、残された時間をなるべくそばで過ごすために、介護休業の利用を検討してもよいでしょう。

介護休暇が適しているケース

介護休暇は、取得したい当日に電話やメールなどで申請可能であり、突発的に休みが必要になった際に向いています

例えば、対象家族の具合が悪くなった場合、まずは介護休暇で1日休みを取って様子を見るという使い方があります。その後の容体によっては、休暇を延長することも可能です。

ほかにも、日常生活の介護や公的介護保険に関する手続き、介護士との面談、通院の付き添いなど、1日で済む用事のときも介護休暇が向いているでしょう。これらのケースは短時間で済むこともあり、時間単位で休暇を取得するのもおすすめです。

ただし、介護休暇では給与が支払われないことが多いため、まずは有給休暇を利用するのも一つの手段です。有給休暇を使い切ってしまったあとに、介護休暇を利用するというパターンもあります。

介護で休職する際に活用できる介護サービス

介護で休職する際は、介護サービスも併せて活用するとよいでしょう。ここでは、介護サービスのなかから居宅サービスを3つ紹介します。

訪問サービス

訪問サービスは、ヘルパーが要介護者の自宅を訪問し、日常生活のさまざまなことを介助するサービスです。入浴や排せつ、食事などの介助はもちろん、洗濯や料理、掃除などの生活支援にも対応しています。
また、看護師や理学療法士、保健師などが要介護者の自宅を訪問し、必要な診療の補助や療養の世話などを行う訪問看護も、訪問サービスの一つです。

そのほか、専門家によるリハビリテーションや療養管理なども自宅で受けられます。

通所サービス

通所サービスは、デイサービスやデイケアとも呼ばれ、施設に通う要介護者に対して、施設スタッフが入浴や排せつ、食事など日常生活の介助を行うサービスです。なかには、軽い運動やレクリエーションなどで、スタッフやほかの施設利用者と交流できる機会を設けている施設もあります。

通所リハビリテーションでは、介護老人保健施設や病院などに通う要介護者に対して、心身機能の維持回復や、日常生活の自立を目的とするリハビリテーションを行います。

短期入所サービス

短期入所サービスは、一定期間施設に入居する要介護者に対して、短期入所生活介護や短期入所療養介護を提供するサービスで、ショートステイとも呼ばれます。
短期入所生活介護では、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどに短期間入所した要介護者に対して、入浴や排せつ、食事などの介助を行います。

短期入所療養介護では、介護老人保健施設や介護療養型医療施設に短期間入所した要介護者に対して、日常生活の介助を行うほか、医学的な管理が必要な介護や、機能訓練などを行います。

仕事と介護の両立に、介護休業や介護休暇を活用しよう

介護休業制度は、労働者が仕事と介護を両立できるようサポートする仕組みです。介護休業と介護休暇の違いを理解し、うまく使い分けるようにしましょう。

また、介護休業と併せて介護サービスを活用するのもおすすめです。さらに、安心して介護できる環境を整えるなら、民間介護保険への加入など、自助努力も検討する必要があるでしょう。
  
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年9月9日

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