前頭側頭型認知症の症状は、認知症によく見られる物忘れなどのとは異なるのが特徴です。
以下では前頭側頭型認知症でみられる症状について解説します。
前頭側頭型認知症は、前頭葉と側頭葉を中心に、脳細胞が少しずつ壊れ萎縮していくことで発症します。初期には以下のような症状がゆっくりと現れ、やがて進行していきます。
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性格が変わったように感じる
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言葉をうまく話せなくなる
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普段と異なる行動を見せる
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動きがぎこちない
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物事を考えたり覚えたりする能力が低下する
前頭側頭型認知症は、「人格・社会性・言語」をコントロールする前頭葉の働きが阻害されます。前頭葉は、注意力や自制心、想像力などの高次脳機能にかかわる重要な部分なので、行動や感情のコントロールが難しくなるのです。
また、「記憶・聴覚・言語」をつかさどる側頭葉の働きも阻害されるので、言語障害や記憶障害にもつながります。
前頭葉・側頭葉に影響が出る前頭側頭型認知症では、以下が二大症状です。
人格変化や行動障害では以下のような症状が見られます。
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抑制が利かない
衝動的に行動する(暴力・暴言)、礼儀やマナーが欠如する、社会的に適さない行動をする、周囲の目を気にしなくなる、欲しいものを勝手に持ち出したり食べたりする(万引き・盗食)など
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無関心・無気力・共感の欠如
家族や他人に無関心になる、共感できない、喜びや悲しみなどの他者の感情が理解できず感情移入できない、感覚が鈍い、入浴や着替えなど身だしなみに気を使わなくなる、趣味などに熱中できなくなるなど
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同じことを繰り返す(常同行動)
散歩で同じ道順を歩き続ける、同じ動作を繰り返す、同じ食事メニューに固執する、時刻表のような生活パターンで過ごすなど
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食行動変化
過食になり満腹でも食べ続ける、濃い味や甘いものを好むようになるなど嗜好が変化する、以前は好きでなかったものを急に食べ始める、思いついたときに食べるなど
言語障害では以下のような症状が見られます。
上記以外に、以下のような症状がみられる場合があります。
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パーキンソン症状(体が震える、動作が遅くなる)
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運動ニューロン症状(筋力低下、体のつっぱり)
前頭側頭型認知症の進行速度はゆるやかです。人格変化・行動障害や言語障害が悪化していく場合と、別の運動症状が合併する場合があります。ただし、すべての方がこのような経過をたどるわけではなく、無気力・無関心の症状が次第に強くなることで、行動障害が目立たなくなるという場合もあります。
また、発症後平均6年~8年で寝たきりになる といわれています。
「性格が変わったように感じる」「言葉をうまく話せなくなった」などの気になる症状が見られる場合、どこで検査を受けるべきでしょうか。
前頭側頭型認知症の疑いがある場合、まずは物忘れ外来が設置されている精神科や脳神経内科を受診しましょう。
受診すると初めに問診が行われ、前頭側頭型認知症にみられる症状があるかどうか確認されます。問診には家族も同席するようにし、客観的にみた自宅での様子などを伝えます。受診前に、症状が出始めた時期や経過、本人の具体的な様子などを書き留めておくとよいでしょう。
問診を経て、前頭側頭型認知症が疑われる場合は、CT検査やMRI検査が行われます。これはアルツハイマー病と区別するため、前頭葉や側頭葉の萎縮を画像で確認する検査です。
脳の萎縮があまり進んでおらず、CT検査やMRI検査で判断できない場合は、脳血流シンチグラフィーやPET検査が行われます。
これらの検査により、前頭葉や側頭葉の萎縮のほか、血流や代謝の低下が認められる場合、前頭側頭型認知症と診断されます。