認知症の原因とは?代表的な認知症の種類と原因

脳の病気や萎縮などさまざまな原因により脳の機能が低下することによって日常生活全般に支障が出る状態を認知症と呼びます。認知症にはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症などいくつかの種類があります。

認知症の種類によって、症状や対処法は異なります。認知症の種類ごとの症状などを知ることにより、認知症への適切な対処につながるでしょう。

本記事では認知症の概要と、代表的な認知症の種類、および発症する原因について解説します。

認知症は病気を総称する「症候群」

認知症とは特定の病気の呼称ではありません。認知症は特有の症状を示す状態を総称したものであり、病気や障害などを理由に日常生活全般に支障が出る状態が「認知症」と呼ばれます。

認知症は脳細胞の一部が死滅したり、働きが悪くなったりすることによって発症します。発症の原因となる病気は複数あり、原因となる病気によって発生しやすい症状も異なります。

軽度認知障害(MCI)・認知症患者は、増加傾向にあり、2025年には65歳以上の約3人に1人に達すると予測されています。※

今後も、高齢化にともなって認知症患者は増えていくことが予想されるため、認知症は多くの人にとって身近なものになりつつあります。

65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用。内閣府「平成29年度版高齢社会白書」、首相官邸認知症施策推進関係閣僚会議(第2回)資料、厚生労働省「今後の高齢者人口の見通し」より当社推計

認知症のおもな種類と原因

認知症は、病型・症状によってアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症およびそのほかの疾患を原因とする認知症に大別されます。

厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成25年5月報告)によると、認知症の原因となる主な病気は、アルツハイマー型認知症67.6%、脳血管性認知症19.5%、レビー小体型認知症4.3%、前頭側頭型認知症1.0%です。

各認知症の概要と症状を見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は脳内にたまったアミロイドβと呼ばれる異常たんぱく質によって脳神経が変性し、脳の一部が萎縮する過程で発症すると言われています。

アルツハイマー型認知症は、記憶障害(もの忘れ)や失語(名前が出てこない)、失認(視覚には問題ないのに見えているものが何かわからない)、失行(動作には問題ないのにどうすれば良いかわからない)などの症状が出ることが特徴的です。

治療法は確立されておらず、早期発見が重要とされていますが、加齢によるもの忘れと区別がつきづらいことから、受診が遅れてしまうケースもあります。アルツハイマー型認知症の原因には諸説あり、現在ではまだ全容が解明されていません。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症する認知症です。血液が不足して神経細胞の機能が失われたり、たまった血液によって脳が圧迫されたりすることによって、さまざまな症状が現れます。

脳血管性認知症では、記憶障害から認知機能障害が少しずつ広がるのが特徴で、抑うつや感情失禁などの症状も出ます。脳血管障害を起こした部位によっても症状は変化し、歩行障害や手足の麻痺などの症状が見られる場合もあります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、レビー小体という異常たんぱく質が神経細胞にたまることで発症する認知症です。女性より男性のほうが発症しやすく、ほかの認知症よりも進行が早いという特徴があります。

レビー小体型認知症のおもな症状は、記憶障害や認知機能障害、幻視、歩行等動作障害(パーキンソン症状)などです。夜中に大声で叫んだり身体を大きく動かしたりする(本人は夢を見ているような感覚で覚えていない)などの症状をともなう場合もあります。

レビー小体型認知症は症状の変動が大きいため、症状の特徴を理解したうえでの周囲の支援が必要になります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉と側頭葉で神経が変性して発症する認知症です。発症には特定のたんぱく質が関与していることはわかっていますが、なぜたんぱく質が変質するかはわかっていません。

理性的な行動ができなくなり、言葉が出なくなるなどの症状が現れたりするほか、穏やかだった人が急に怒りっぽくなるといった性格変化が起きます。

認知症は高齢になると発症しやすくなりますが、前頭側頭型認知症は比較的若い人が発症することが多くあります。症状の進行が早いため、前頭側頭型認知症は早期発見が重要です。

そのほかの原因疾患

上記4種類以外にも認知症の疾患となる病気があります。

【そのほかの認知症原因疾患】
・神経変性疾患(大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺など)
・感染性疾患(ヤコブ病、クロイツフェルトなど)
・アルコール性疾患(コルサコフ症候群など)

認知症と間違われやすい疾患

認知症と同じような症状を呈するため、一見認知症と診断されやすい疾患もあります。これらの疾患であれば、身体あるいは精神の原因を取り除くことができれば、症状が回復することがあります。

【認知症と間違われやすい疾患】
・うつ病
・甲状腺機能低下症
・正常圧水頭症
・腫瘍性疾患(脳腫瘍など) など

認知症のおもな2つの症状

 
認知症の症状は、脳の働きが低下することによって発生する中核症状と、中核症状に周辺環境や患者本人の性格などが影響して発生する周辺症状とに大別されます。中核症状と周辺症状で起こる症状をそれぞれ見ていきましょう。

中核症状:脳の神経細胞の働きが低下して起こる症状

中核症状には記憶障害、実行機能障害、見当識障害などが挙げられます。代表的な中核症状と症状の内容は以下のとおりです。
  
記憶障害 何度も同じことを話す。ものの位置や約束を忘れてしまう
実行機能障害 計画や段取りを立てられなくなる
見当識障害 時間や場所がわからなくなる。季節に合わせた服が選べない
失語 言語の理解・表出が難しくなる
失行 運動機能に問題はないものの、適切な行動をとれなくなる
失認 視覚機能に問題はないものの、目の前のものが何か認識できなくなる

周辺症状:中核症状によって発生する症状(行動・心理症状)

周辺症状は患者本人の性格や周辺環境によって左右されるため、特徴的な症状が出ない方もいます。おもな周辺症状とその内容は以下のとおりです。
抑うつ 気分が落ち込み食欲不振や不眠などの症状が出る
徘徊 今いる場所や行き先がわからなくなり、歩き回る
幻覚・妄想 ありえないものを現実に感じる、誤った認識を間違いないと思いこむ
暴言・暴力 感情のコントロールができず、不満や不安により暴力や暴言が現れる
介護拒否 介護の意味を理解できず介護を拒否する
 

認知症を予防するには?

認知症の原因の多くは解明されておらず、具体的な予防方法はありません。しかし、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は生活習慣病と関連があるとされており、生活習慣の改善によって認知症予防につながる可能性があります

具体的には適度な食事、運動、睡眠を心がけ、生活習慣病にならないように健康的な生活を送ることが大切です。
明確な予防法が確立されていない認知症は、早期段階での発見・対応が重要となります。症状に気づいたら、早めにかかりつけ医や保健師など専門家に連絡し、どのように対応すれば良いかを相談しましょう。

認知症は誰にでも起こりうるものです。認知症にはアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの種類があり、それぞれ発生する症状に違いがあります。

認知症は予防が難しく、根本的な治療方法も確立されていません。症状の悪化を防ぐためにも、認知症の種類や症状を知り、少しでも気になったら可能な限り早く医師や保健師などに相談しましょう。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年4月28日

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