認知症は脳細胞の一部が死滅したり、働きが悪くなったりすることによって発症します。発症の原因となる病気は複数あり、原因となる病気によって発生しやすい症状も異なります。
軽度認知障害(MCI)・認知症患者は、増加傾向にあり、2025年には65歳以上の約3人に1人に達すると予測されています。※
今後も、高齢化にともなって認知症患者は増えていくことが予想されるため、認知症は多くの人にとって身近なものになりつつあります。
※65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用。内閣府「平成29年度版高齢社会白書」、首相官邸認知症施策推進関係閣僚会議(第2回)資料、厚生労働省「今後の高齢者人口の見通し」より当社推計
認知症のおもな種類と原因
厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成25年5月報告)によると、認知症の原因となる主な病気は、アルツハイマー型認知症67.6%、脳血管性認知症19.5%、レビー小体型認知症4.3%、前頭側頭型認知症1.0%です。
各認知症の概要と症状を見ていきましょう。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、記憶障害(もの忘れ)や失語(名前が出てこない)、失認(視覚には問題ないのに見えているものが何かわからない)、失行(動作には問題ないのにどうすれば良いかわからない)などの症状が出ることが特徴的です。
治療法は確立されておらず、早期発見が重要とされていますが、加齢によるもの忘れと区別がつきづらいことから、受診が遅れてしまうケースもあります。アルツハイマー型認知症の原因には諸説あり、現在ではまだ全容が解明されていません。
脳血管性認知症
脳血管性認知症では、記憶障害から認知機能障害が少しずつ広がるのが特徴で、抑うつや感情失禁などの症状も出ます。脳血管障害を起こした部位によっても症状は変化し、歩行障害や手足の麻痺などの症状が見られる場合もあります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症のおもな症状は、記憶障害や認知機能障害、幻視、歩行等動作障害(パーキンソン症状)などです。夜中に大声で叫んだり身体を大きく動かしたりする(本人は夢を見ているような感覚で覚えていない)などの症状をともなう場合もあります。
レビー小体型認知症は症状の変動が大きいため、症状の特徴を理解したうえでの周囲の支援が必要になります。
前頭側頭型認知症
理性的な行動ができなくなり、言葉が出なくなるなどの症状が現れたりするほか、穏やかだった人が急に怒りっぽくなるといった性格変化が起きます。
認知症は高齢になると発症しやすくなりますが、前頭側頭型認知症は比較的若い人が発症することが多くあります。症状の進行が早いため、前頭側頭型認知症は早期発見が重要です。
そのほかの原因疾患
【そのほかの認知症原因疾患】
・神経変性疾患(大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺など)
・感染性疾患(ヤコブ病、クロイツフェルトなど)
・アルコール性疾患(コルサコフ症候群など)
認知症と間違われやすい疾患
【認知症と間違われやすい疾患】
・うつ病
・甲状腺機能低下症
・正常圧水頭症
・腫瘍性疾患(脳腫瘍など) など
認知症のおもな2つの症状
中核症状:脳の神経細胞の働きが低下して起こる症状
記憶障害 | 何度も同じことを話す。ものの位置や約束を忘れてしまう |
実行機能障害 | 計画や段取りを立てられなくなる |
見当識障害 | 時間や場所がわからなくなる。季節に合わせた服が選べない |
失語 | 言語の理解・表出が難しくなる |
失行 | 運動機能に問題はないものの、適切な行動をとれなくなる |
失認 | 視覚機能に問題はないものの、目の前のものが何か認識できなくなる |
*関連記事:認知症の中核症状とは?あらわれる障害や対応策
周辺症状:中核症状によって発生する症状(行動・心理症状)
抑うつ | 気分が落ち込み食欲不振や不眠などの症状が出る |
徘徊 | 今いる場所や行き先がわからなくなり、歩き回る |
幻覚・妄想 | ありえないものを現実に感じる、誤った認識を間違いないと思いこむ |
暴言・暴力 | 感情のコントロールができず、不満や不安により暴力や暴言が現れる |
介護拒否 | 介護の意味を理解できず介護を拒否する |
認知症を予防するには?
具体的には適度な食事、運動、睡眠を心がけ、生活習慣病にならないように健康的な生活を送ることが大切です。