研究によって結果は異なりますが、認知症を発症してからの余命は、おおむね5年~12年といわれています。
認知症の寿命には、さまざまな要因が関係していると考えられており、年齢や性別、身長、病型、症状の進行度合いなど、患者の状態に個人差が見られることは想像に難くありません。
なお、公益社団法人「認知症の人と家族の会」の調査※によると、認知症の介護に要する時間は、要介護2以上になってから平均で約8年という結果があります。しかし、病型の違いや進行スピードは患者によって異なり、早く経過する人もおられます。認知症の診断を受けてすぐに要介護認定の2以上になる人は多くはなく、長い人では20年以上介護を続けているという人もおられます。平均年数はあくまでも参考として考えておくとよいでしょう。
参照:中等度・重度認知症の人の在宅生活継続に関する調査研究事業報告書(公社認知症の人と家族の会,2023)令和4年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業
認知症の寿命(余命)に関与する要素
・ 発症年齢
・ 性別
・ 症状の進行具合
年齢を重ねることで、身体機能や精神機能など、さまざまな機能が低下し、合併症を起こす可能性が高まります。高齢になると、自身で医療機関に出向くのが困難になったり、症状を思うように伝えられなくなったりすることで、合併症への対応が遅れてしまう可能性があることに注意が必要です。
性別においては、さまざまな研究データが報告されていますが、明確な根拠があるとはいえません。しかし、多くのデータによれば、女性よりも男性のほうが認知症発症後の寿命は短いことが判明しています。
また、症状の進行が早いと寿命が短くなる傾向にあります。病型によっても進行スピードに違いはありますが、病型と寿命の関係性はこの限りではありません。
認知症の進行段階と末期段階での症状
それぞれの段階における症状を理解していれば、進行を緩やかにしたり、適切に対応したりすることが可能です。症状を見落とさないためにも、段階ごとの進行状況を確認していきましょう。
前兆(軽度認知障害)
軽度認知障害は、10年ほど前から兆候が出現するケースもあり、年間10%~15%の人は認知症に移行する可能性があるといわれています。早期に発見できれば早めに治療できる可能性が高いため、進行を緩やかにすることが可能な状態といえるでしょう。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット「軽度認知障害」
初期(軽度)
前兆期よりもできないことが増えるため、日常生活に支障が出始める時期といえます。また、自信喪失によって感情表現が乏しくなることもあり、うつ病を疑われるケースもあるため注意が必要です。診察時には、状況を適切に伝えることが大切といえるでしょう。