認知症で要介護1になる?
要介護1の状態や利用可能なサービス


公的介護保険制度における要介護認定で、「認知症でも要介護1になり得るのか」「要介護1で利用できるサービスを知りたい」という方もいるかと思います。

介護と認知症は大きくかかわるため、双方への理解を深めることで、身近な人が認知症となった場合に知識が役立つ可能性があります。

当記事では、認知症と要介護1との関係性、要介護1の状態と認定基準、受けられる介護サービス、費用について解説します。

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認知症は介護が必要となる原因の第1位

介護が必要となった原因の第1位は認知症で、23.6%を占めます。第2位に脳血管疾患で、全体の約40.8%は生活習慣病を含む疾患です。

要介護度別でも、要介護1と認定された人の原因の第1位が認知症であり、その割合は26.4%です。
上記より、認知症で要介護1となる可能性は十分にあるでしょう。

要介護1の状態と認定基準

要介護1の状態と認定基準を見てみましょう。

要介護1の状態

介護の必要度合いを示したものを「要介護度」といいます。要介護度は要支援1・2と要介護1~5の7区分あり、要支援よりも要介護のほうが介護の必要性が高い状態といえます。

要介護1は、要介護度のなかでは最も軽い区分です。日常生活(食事、排泄など)はおおむね自分で行えますが、立ち上がりや歩行に一部介護が必要な状態です。

要介護1の認定基準

要介護認定は、申請者の心身状態の調査や主治医の意見書、要介護認定等基準時間などから総合的に判断されます。

要介護認定等基準時間とは、要介護者を介護するために必要な時間として厚生労働省が定めている時間です。判定区分は以下の7区分です。

判定区分

要介護認定等基準時間

要支援1

25分以上 32分未満

要支援2

32分以上 50分未満

要介護1

要介護2

50分以上 70分未満

要介護3

70分以上 90分未満

要介護4

90分以上 110分未満

要介護5

110分以上

要介護1の場合、要介護認定等基準時間は「32分以上50分未満」です。

認知症の人が要介護認定を受けるまでの流れやポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。

要支援2・要介護2との違い

要介護1は要支援2・要介護2と何が異なるのでしょうか。要介護1と要支援2・要介護2の状態の違いを解説します。

要支援2との違い

要支援状態は、日常生活(食事、排泄など)はおおむね自分でできるものの、時折介護が必要であり、歩行や立ち上がりに不安定な場合がある状態です。

要支援2と要介護1はどちらも要介護認定基準時間は同じですが、以下のいずれかに該当する場合は要介護1となります。
  • 認知機能の低下が見られる
  • おおむね6ヵ月以内に状態が悪化して介護必要度が変わる可能性がある
要支援2の状態や受けられる介護サービス、費用は以下で詳しく解説しています。

要介護2との違い

要介護2は、要介護1よりも介護必要度が高い状態です。

具体的には、日常生活(食事や排泄など)に何かしらの介護が必要であり、歩行や立ち上がりが難しいため支えを要します。理解力や思考力の低下も見られることがあります。

要介護認定基準時間も、要介護2では「50分以上70分未満」と要介護1よりも長く定められています。

要介護2の状態や受けられる介護サービス、費用は以下で詳しく解説しています。

要介護1で利用できる介護サービス

要介護1と認定されると、公的介護保険の介護サービスを少ない自己負担額で利用できます。

介護サービスは身体状態の維持・改善を目的に提供されるもので、要介護1ではおもに居宅サービス、施設サービス、地域密着型介護サービス、生活環境を整えるサービスを利用できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

居宅サービス

居宅サービスは、自宅で生活を続けながら利用できる介護サービスです。
居宅サービスには訪問サービス、通所サービス、短期入所サービスの3つがあります。

訪問サービス

介護職員などの有資格者が利用者の自宅を訪問して、必要なケアを提供するサービスです。訪問サービスには次のようなものがあります。
  • 訪問看護
  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

通所サービス

日中に介護施設に通ってケアを受けられるサービスで、利用者が自立した日常生活を送れるよう身体機能の維持を目的に提供されます。
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 療養通所介護
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護
通所サービスを受けることで介護者の負担軽減という点でもメリットがあります。

短期入所サービス

介護施設に宿泊して利用できるサービスで、日常生活上の介護やレクリエーション、リハビリなどの機能訓練を受けられます。24時間体制で職員が専門的なケアを提供していることも特徴です。

短期入所生活介護(ショートステイ)と短期入所療養介護(医療型ショートステイ)があり、どちらも連続して30日まで利用可能です。

施設サービス

介護施設に入所することで受けられるサービスです。

施設サービスにはリハビリを中心に行う介護老人保健施設(老健)、長期療養が必要な場合に介護・医療を提供する介護医療院、日常生活の介護やレクリエーションを行う介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などがあります。

ただし、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、やむを得ない理由がある場合を除き、要介護1で利用することはできません。

地域密着型サービス

住み慣れた地域で自分らしく生活することを目的に提供されるサービスです。利用者はその地域の人に限定されますが、地域や利用者のニーズにきめ細かく対応しているため安心して利用できます。

要介護1で利用できる地域密着型介護サービスには、次のようなものがあります。

【通所型】
  • 療養通所介護
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護
【訪問型】
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
【複合型(通所+訪問+宿泊)】
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護
【入所型】
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)
なお、地域密着介護サービスである地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)は、やむを得ない場合を除き、要介護1では利用できません。

生活環境を整えるサービス

安心して快適に自宅で過ごせるように生活環境を整えるためのサービスも提供されています。

要介護1で利用できるサービスはおもに3つです。

介護福祉用具のレンタル

公的介護保険では、必要な介護福祉用具を1~3割の自己負担でレンタル可能です。

要介護1でレンタルできるものは次の4つです。
  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助杖
介護ベッドや車いすは原則、対象外となるため注意が必要です。ただし、身体の状態などにより、市区町村の判断や市区町村への申請で給付の対象となる場合もあります。

介護福祉用具販売

レンタルに向かない介護福祉用具は購入費用が支給され、1~3割の自己負担で購入できます。

具体的には、再利用に心理的抵抗感がともなったり、使用によりもとの形・品質が変化して再利用が難しかったりするもので、腰掛便座や簡易浴槽などが該当します。

なお、支給限度額は年間10万円(1割負担の方であれば9万円が給付)です。

介護福祉用具の購入やレンタルの詳細は以下で詳しく解説しています。

住宅改修費用

段差の解消や手すりの設置など、在宅介護のための住宅改修費用は保険給付の対象となっており、1~3割の自己負担で改修可能です。

支給限度額は生涯で20万円ですが、要介護区分が一定以上重くなったり転居したりした場合、再度20万円までの限度額が設定されます。

ただし、原則として市区町村への事前申請が必要なので、忘れずに申請しましょう。

要介護1における介護サービスの費用

介護サービスの利用には支給限度額が決まっているものもあります。費用の目安を把握しておくことで、いざ利用するときに慌てずに済みます。

要介護1における支給限度額と、対象となる・ならない介護サービスを解説します。

要介護1の支給限度額

公的介護保険からの給付では、要介護ごとに支給限度額が決まっています。要介護1の支給限度額は月額16万7,650円です。

この限度額内で介護サービスを利用する場合は1~3割の自己負担で利用できますが、超過した場合は超過分が全額自己負担となります。

支給限度額に含まれるサービス・含まれないサービスの内容は次のとおりです。
 

支給限度額に

含まれるサービス

l   訪問看護

l   訪問介護

l   訪問入浴介護

l   訪問リハビリテーション

l   通所介護(デイサービス)

l   通所リハビリテーション(デイケア)

l   短期入所生活介護(ショートステイ)

l   短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

l   特定施設入所者生活介護※(介護付き有料老人ホームなど)

l   定期巡回・随時対応サービス

l   夜間対応型訪問介護

l   認知症対応型通所介護

l   小規模多機能型居宅介護

l   看護小規模多機能型居宅介護

l   認知症対応型共同生活介護※(グループホーム)

l   地域密着型特定施設入所者生活介護※(介護付き有料老人ホーム)

l   介護福祉用具のレンタル

支給限度額に

含まれないサービス

l   居宅療養管理指導

l   特定施設入所者生活介護(短期利用・外部サービスを除く)

l   認知症対応型共同生活介護(短期利用を除く)

l   地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)

l   介護老人保健施設(老健)

l   介護医療院

l   介護福祉用具の購入費

l   住宅改修費

短期利用に限る

施設サービスは支給限度額の対象外となります。

施設サービスの場合

施設サービスの費用は、要介護度に応じた「基本サービス費」と、施設の介護体制により異なる「加算」によって施設ごとに決まります。

厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」では、要介護度と利用したい介護サービスを選択することで介護サービス費の目安がわかります。

例えば、1割負担の人が認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を利用する場合、自己負担額の目安は月額約2万7,000円です。
このほかにも、食費や居住費など公的介護保険の適用外の費用が必要となります。

なお、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の入所条件や費用の詳細は以下で解説しています。

認知症で要介護1になったら、介護サービスを上手に活用しよう


介護が必要となった原因の第1位は認知症です。要介護1では、基本的な日常生活は自分で行えるものの、立ち上がりなどに助けが必要になることがあります。

介護サービスを利用することで、利用者が生活しやすくなるだけでなく、介護をするご家族の介護負担の軽減にもつながります。

ただし、介護サービスの利用には費用も生じます。その点も考慮しながら、上手に介護サービスを活用するとよいでしょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年1月17日

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