20代でも認知症になる可能性はある?
若年性認知症の症状や特徴


65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」といいます。若い方の認知症を考える際、「20代でも認知症を患うことはあるのだろうか?」「若年性認知症の症状や特徴は?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。

稀ではありますが、20代でも認知症を患う可能性はあります。認知症の疑いがある場合は、たとえ年齢が若くても、早めに専門家に相談することが大切です。

この記事では、若年性認知症の基礎疾患や症状、4つの特徴や検査手順などについて解説します。

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若年性認知症とは?

若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症を指します。若年性認知症の症状には、物忘れや判断力の低下などがあり、高齢者の認知症の症状とほぼ変わりません。

厚生労働省が公表している「若年性認知症実態調査結果概要(R2.3)」によると、年齢層階層別の若年性認知症有病率の推計は以下のようになっています。

 

人口10万人当たりの有病率(人)

年齢

男性

女性

総数

18歳~29

4.8

1.9

3.4

30歳~34

5.7

1.5

3.7

35歳~39

7.3

3.7

5.5

40歳~44

10.9

5.7

8.3

45歳~49

17.4

17.3

17.4

50歳~54

51.3

35.0

43.2

55歳~59

123.9

97.0

110.3

60歳~64

325.3

226.3

274.9

18歳~64

-

-

50.9

全国の若年性認知症患者数の推計は3万5,700人で、18歳~29歳の若年性認知症有病率の推計は、人口10万人当たり男性4.8人、女性1.9人と報告されています。

この調査結果からもわかるように、20代でも認知症を発症する可能性はあるのです。

若年性認知症の基礎疾患

次に、若年性認知症(調査時65歳未満)の基礎疾患の内訳を見ていきましょう。

1

アルツハイマー型認知症

52.6

2

脳血管性認知症

17.1

3

前頭側頭型認知症

9.4

4

外傷による認知症

4.2

5

レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症

4.1

6

その他

12.6

若年性認知症のなかで最も多い基礎疾患は、アルツハイマー型認知症で、その次に脳血管性認知症が続きます。

アルツハイマー型認知症は、時間の経過とともにアミロイドβやリン酸化タウなどのタンパク質が脳内に蓄積され、これらが神経細胞を減少させたり機能を妨げたりして発症する認知症です。

そして脳血管性認知症とは、脳出血や脳梗塞といった、脳の血管障害が引き起こす認知症です。脳の血管障害が生じると、その都度、認知機能の低下が段階的に進みます。

若年性認知症の症状とは?

若年性認知症の症状は、中核症状と行動・心理症状(BPSD)とに大きく分けられます。それぞれ、どのような症状があるのかを見ていきましょう。

中核症状

中核症状とは、脳神経細胞の障害による認知機能の低下が原因で生じ、どの認知症患者にも見られる症状です。具体例な症状は、次のとおりです。

症状

症状の概要

見当識障害

l  自分のいる場所、現在の月日や時間がわからなくなる

記憶障害

l  過去のことや、体験した出来事の記憶が抜け落ちる

実行機能障害

l  計画を立て、物事を効率的に進められなくなる

判断力・理解力の低下

l  適切な判断ができなくなる、物事を理解できなくなる

失語

l  話す、聞く、書く、読むといったことが困難になる

失認

l  人の顔や物体が認識できなくなる

失行

l  運動機能には異常がないものの、過去に身に付けた道具の使い方や一連の動作が行えなくなる

行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)は、中核症状にともなって表れる副次的な症状です。心理状態や本人の性格などが影響して表れるため、個人差が大きいことが特徴です。

おもな行動・心理症状には、徘徊・不安・幻覚・妄想・抑うつなどがあります。

若年性認知症4つの特徴

ここからは、若年性認知症の4つの特徴について解説します。

診断までに時間がかかる

若年性認知症は、患者の若さから、うつ・更年期障害・疲れなどが原因と思い込んでしまい、医療機関を受診するまでに時間がかかることが特徴です。診断までに時間がかかると症状が進み、認知症が悪化するおそれがあります。

男性のほうが多い傾向にある

高齢者の認知症は、男性よりも女性に多く見られます。それに対し、若年性認知症の場合は、女性よりも男性のほうがやや多い傾向にあります。

高齢者よりも進行が速い

若年性認知症は、高齢者の認知症よりも進行が速い傾向があります。また、行動・心理症状(BPSD)が早く表れることも特徴の一つです。

経済的な負担が大きくなる可能性がある

若年性認知症の多くは、働き盛りの年齢で発症します。そのため、症状が進行した場合は、仕事の継続が困難になるかもしれません。

働けないなかで認知症にかかる医療費や介護費がかさむと、生活が苦しくなることも考えられるでしょう。

若年性認知症の検査手順

20代で若年性認知症の疑いがある場合は、早めに専門家の診断を受けることが大切です。ここでは、若年性認知症の検査手順について解説します。

1.問診・面談

まずは、医師との問診・面談により、現在の状態や経過、過去の病歴、服用中の薬、家族歴などの聞き取りが行なわれます。

事前に気になることや、気づいたことをメモしておくと、スムーズに情報を医師に伝えられるでしょう。

2.身体的検査

身体の状態や認知症を引き起こす病気、認知症以外の病気の有無などを確認するため、心電図検査・感染症検査・血液検査・X線撮影などを行ないます。身体的検査は、今後の医療や介護の方針を決めるうえで重要な検査です。

3.神経心理学検査

認知機能をおおまかに調べるための検査です。簡単な作業や質疑応答をし、一定基準を下回った場合は「認知症の疑いがある」と診断されます。

神経心理学検査には、おもに以下のような種類があります。
  • 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
  • CDT(時計描画テスト)
  • MMSE(ミニメンタルステート検査)
  • ABC-DS(ABC認知症スケール)
  • Mini-Cog
  • DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)
  • MoCA

4.脳画像検査

脳画像検査には、脳の活動を調べる「機能画像検査」と脳の形状を見る「形態画像検査」があります。
  • 機能画像検査:SPECT検査・PET検査など
  • 形態画像検査:MRI・CT・VSRADなど

20代で若年性認知症と診断されたらすべきこと

最後に、20代の方が若年性認知症と診断された場合にするべきことを紹介します。

勤め先に相談する

認知症が進行すると、勤労意欲があったとしても、同じ勤労形態では働けなくなるおそれがあります。そのため、若年性認知症と判断された場合は、勤め先へ相談することが重要です。

相談すると、職場の人の協力や理解を得やすくなるでしょう。勤め先によっては、配置転換や職務内容の変更、障害者枠での再雇用などで雇用継続が可能となる場合があります。

再就職を考える

再就職を考える際のおもな相談先は、以下のとおりです。
  • 都道府県労働局
  • ハローワーク
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 地域障害者職業センターなど
例えば、若年性認知症の方の再就職では、就労継続支援事業所(A型・B型)を就労先とする方法もあります。

就労継続支援事業所とは、一般企業で働くことが難しい障害者に対して、働く機会を提供する事業所です。生産活動などの機会提供により、知識や能力を向上させるために必要な訓練を行ないます。

若年性認知症と診断されても働き続けることで、社会とのつながりを維持する、体を動かすなどの活動を通じ、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。

なお、再就職の就労条件を考える際は、若年性認知症の症状や体調を十分に考慮することが大切です。

経済的な計画を立てる

若年性認知症を患い、勤労形態の変化や再就職などの就業環境が変化すると、収入が減ることがあります。そのような場合に備え、まずは今後の収入と、生活費・医療費などの支出を確認しましょう。

また、若年性認知症の方が利用できる公的制度の情報収集をしたり、経済的な計画を立てたりすることも大切です。

若年性認知症の方が利用できるおもな公的制度は、次のとおりです。
  • 公的介護保険制度
  • 自立支援医療(精神科通院)制度
  • 障害福祉サービス(精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳)
  • 傷病手当金
  • 雇用保険制度(失業等給付)
  • 障害年金など
若年性認知症に関係する公的制度の情報を身に付け、必要に応じて活用するとよいでしょう。

20代でも若年性認知症の疑いがある場合は専門家に相談を


若年性認知症を患う方の数は、高齢者の認知症よりも少ない傾向があります。しかし、20代でも若年性認知症を発症する可能性は、ゼロではありません。

若年性認知症の症状には、見当識障害や記憶障害などを含む「中核症状」と、徘徊や幻想などを含む「行動・心理症状(BPSD)」があり、高齢者の認知症の症状とほぼ同様です。

また、若年性認知症は年齢の若さから、うつや更年期障害と思い込み診断までに時間がかかる、高齢者よりも進行速度が速いなどの特徴もあります。

20代で若年性認知症と診断されると、症状が進行した際にそのまま継続して勤務するのは困難となることが考えられます。その際には、勤め先に相談する、再就職を考える、今後の経済的な計画を立てるなどの対策が必要です。

20代で若年性認知症の疑いがある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年2月28日

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