介護について知る

介護費用や介護期間の平均はどれくらい?

介護が必要になった場合、生活費とは別に介護費用がかかります。

自分の介護について考える際、「介護費用はどれくらい必要?」「自己資金での捻出が難しい場合の解決策はある?」などの疑問を持つ方もいるでしょう。

自分の介護に備えるには、介護制度に関する知識を身につけ、早めの準備をしておくことが大切です。

この記事では、介護に必要な費用の平均額・平均介護期間・公的介護保険制度の自己負担割合を解説します。併せて、介護費用を賄えない場合の対処法も紹介するので、参考にしてください。

介護費用の平均はどれくらい?

まずは、介護費用の平均額について解説します。

一時的な介護費用の平均は74万円

公的介護保険制度の自己負担費用を含む、介護に要した一時的な費用の平均は74万円です。一時的な費用には、介護用ベッドの購入や住宅の改造などが含まれます。介護に要した一時的な費用における金額とその割合は、以下のとおりです。
  介護に要した一時的な費用のデータ

※「かかった費用はない」を0円として平均を算出

介護費用の平均月額は8万3,000円

公的介護保険制度の自己負担費用を含む、介護に要した平均月額は8万3,000円です。最も多くの割合を占めたのは、15万円以上の16.3%でした。
介護費用の平均月額のデータ 
※「支払った費用はない」を0円として平均を算出

施設を利用する場合の平均月額は12万2,000円

介護費用は、在宅介護または施設介護かによってかかる費用が異なります。介護が行なわれる場所の割合を見てみましょう。

介護が行われる場所に関するデータ 
介護が行なわれる場所は、施設よりも在宅のほうが多くなりました。在宅介護と施設介護の費用の平均は、次のとおりです。

・ 在宅介護費用の平均月額:4万8,000円
・ 施設介護費用の平均月額:12万2,000円

介護費用は、要介護度が上がるにつれ、平均月額も上がる傾向にあります。

要介護度別の介護費用平均月額のデータ 
※要支援1~要介護5は、公的介護保険制度の利用経験がある人の平均額
※「支払った費用はない」を0円として平均を算出

介護期間と介護費用の総額の平均は?

介護費用は、介護期間が長くなるほど総額が大きくなります。ここでは、介護期間と介護費用の総額の平均について見ていきましょう。

介護期間の平均は5年1カ月

介護を始めてからの期間(介護中の場合は経過期間)の平均は、5年1カ月です。以下の表は、介護期間とその割合です。
 介護の平均期間とその割合のデータ
介護期間は、「4年~10年未満」の31.5%が最も多くを占め、4年以上の割合は49.1%で全体の約半数を占めました。介護期間4年以上の割合は、2009年(平成21年)以降の調査のなかで最も多くなっています。

介護費用の総額の平均は約580万円

一時的な介護費用の平均額74万円、介護費用の平均月額8万3,000円、平均介護期間5年1カ月から算出すると、介護費用の総額の平均は約580万円になります。

厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」によると、平均寿命は男性81.47年、女性87.57年です。平均寿命の推移は、一時的に前年を下回る年があるものの、男女ともに延びています。

今後も平均寿命が延び続けた場合、介護期間も長くなる可能性があり、将来的には介護費用の増加も考えられるでしょう。

65歳以上の公的介護保険サービスの自己負担割合は?

介護費用を考えるときは、公的介護保険制度を利用する際の自己負担割合について知っておくことが重要です。ここからは、65歳以上の公的介護保険制度の自己負担割合について解説します。
  

65歳以上の自己負担割合は本人や世帯の合計所得金額による

公的介護保険制度は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」に分かれます。

65歳以上の「第1号被保険者」は、要支援または要介護状態にあれば、原因を問わず公的介護保険制度の利用が可能で、本人や世帯の合計所得金額によって自己負担割合が異なります。

第2号被保険者は、加齢にともなう特定疾病で要介護(要支援)状態の認定を受けた場合に利用が限られ、自己負担割合は1割です。

一方、65歳以上の「第1号被保険者」が公的介護保険制度を利用する際の自己負担割合は、以下のように分かれています。
公的介護保険の自己負担割合 判別チャート 

公的介護保険サービスの補助には上限がある

公的介護保険制度では、要介護度に応じて1カ月あたりの支給限度額が定められています。支給限度額を超える場合、越えた分の費用は、全額自己負担です。

在宅サービスや地域密着型サービスの1カ月あたりの利用限度額の目安

在宅サービスとは、高齢者が自宅で自立生活をしながら受ける介護サービスを指します。

地域密着型サービスは、中重度の要介護高齢者や認知症を患っている高齢者などが、可能な限り住み慣れた地域で生活するための、市町村認定の事業者が提供するサービスです。

在宅サービスや地域密着型サービスの利用における、1カ月あたりの要介護度別の支給限度額と自己負担割合は以下のとおりです。
公的介護保険制度 要介護度別の支給限度額と自己負担割合のデータ
※支給限度額は、標準的な地域の例です。地域によっては上記金額よりも高くなる場合があります。
※1・2・3割負担の額は、高額介護サービス費適用前の金額です。

例えば、要介護3の場合、2カ月に1週間程度の施設への短期入所が可能です。ただし、施設で過ごす際の居住費・食費・日常生活費・滞在費などは、これらの公的介護保険制度の給付対象にはなりません。

公的介護保険制度で利用できるサービスは?

公的介護保険制度には、利用できるサービスと利用できないサービスがあります。

利用できるサービス

公的介護保険制度で利用できるおもなサービスは、以下のとおりです。
在宅サービス ・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・ 訪問介護
・ 訪問入浴介護
・ 訪問看護
・ 特定福祉用具購入費、住宅改修費の支給
・ 福祉用具貸与
地域密着型サービス ・ 夜間対応型訪問介護
・ 小規模多機能型居宅介護
・ 認知症対応型通所介護
施設サービス ・ 介護療養型医療施設への入所
・ 介護医療院への入所
・ 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入所
・ 介護老人保健施設への入所
※要支援1・要支援2の場合は、一部の「地域密着型サービス」または「施設サービス」の利用はできません。
※介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)への入所は、原則要介護3以上の方に限られます。

利用できないサービス

公的介護保険制度で提供可能なサービスには限りがあり、民間の介護サービスを利用する場合は、全額自己負担です。以下のようなサービスを希望する場合、公的介護保険制度は利用できません。

・ 送迎
・ 移送
・ 宅配や配食サービス
・ 訪問理美容
・ 外出支援
・ 家事代行 など

民間の介護サービスの利用では、介護生活の質の向上や、本人または家族の安全性や安心感を高められるなどのメリットを得られます。

介護費用を賄えない場合はどうする?

最後に、介護費用を賄えない場合の対処法を4つ解説します。

ケアマネジャーに適切なプランを作成してもらう

要支援または要介護に認定され、公的介護保険制度を利用する際、一般的にケアマネジャーや地域包括支援センターにケアプラン(介護サービス計画書)を作成してもらいます。

ケアプランは、居宅サービス計画・施設サービス計画・介護予防サービス計画の3つに分類され、利用者ごとに適切なサービスを提供するために欠かせないものです。

ケアプランを作成する際、利用者または家族とケアマネジャーなどによる話し合いが行なわれます。

介護費用を抑えるためには、支払い可能な金額を提示し、その金額をもとにケアプランを作成してもらったり、必要のないサービスを省いてもらったりするとよいでしょう。

公的制度を利用する

介護費用を軽減させるためのおもな公的制度には、以下のようなものがあります。

・ 高額介護サービス費支給制度
・ 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
・ 特定入所者介護サービス費

公的制度を知っておくことで、介護費用の払い戻しや、条件によっては貸付けや補助を受けられる場合があります。

予算に見合う施設を利用する

介護施設には、公的施設と民間施設があり、公的施設のほうが費用を抑えられる傾向にあります。予算に見合う介護施設を利用するだけでなく、施設が提供するサービスの質に満足できることも重要です。

民間の介護保険で備える

民間の介護保険を利用し、早いうちから介護費用を用意しておくのも一つの方法です。民間の介護保険に加入する主なメリットは、次のとおりです。

・ 現金給付を受けられる
・ 生命保険料控除の対象になる
・ 経済的安心感を得られる


以下のような条件に当てはまる場合は、民間の介護保険への加入を考えるとよいでしょう。

・ 自分に介護が必要になった際、介護費用の捻出が難しいと予想される
・ 周囲に頼る人がいないため、公的介護保険制度外のサービスを多用する可能性がある
・ 65歳未満で介護が必要になった場合に備えたい

民間の介護保険は、商品によって加入や給付条件が異なるため、十分に確認したうえで加入してください。

介護費用は、介護する場所や要介護度、入居する施設、利用者や家族の介護に対する価値観などによって大きく異なります。

公的介護保険制度では、さまざまなサービスや金額的補助を受けられますが、なかには利用できないサービスもあり、その場合は自己負担しなければなりません。

将来発生しうる介護に備えるには、なるべく早いうちから計画的に準備を進める必要があるでしょう。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年5月22日

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