各市町村に設置されている「地域包括支援センター」は、介護に関するあらゆる相談を受け付けています。
センターには、社会福祉士・ケアマネジャー・保健師などの専門職が在籍し、介護や福祉、医療などの面から総合的に支援します。必要に応じて、介護サービスや医療機関、行政の窓口などにつないでもらえ、相談は無料です。
「どのような支援があるかわからない」「どこに相談したらいいのか迷っている」という方は、まずは地域包括支援センターに相談してみましょう。専門職の人が一緒に現状を整理し、今後の方向性を考えてくれます。
地域包括支援センターの役割や相談できる内容は、下記記事で詳しく解説しています。
地域包括支援センターとは?役割と相談できる内容・利用方法
公的介護保険制度を利用すれば、所得に応じて1~3割の自己負担で多様な介護サービスを受けられます。
自宅で介護を続けたい場合は、訪問介護・訪問看護・デイサービス・ショートステイなどを組み合わせることで、負担を軽減できます。例えば、「平日はデイサービスを利用し、休日は家族が介護を担当する」など、柔軟な使い方が可能です。
一方、要介護度が高いなどの理由から自宅での介護が難しい場合は、特別養護老人ホームなどの施設入居も選択肢となるでしょう。
なお、介護サービスを利用するには自治体から「要介護認定」を受ける必要があります。
介護サービスの申請や利用の流れ、種類はこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
介護サービスの種類とは?3つの分類と各サービスの特徴
公的介護保険とは?公的介護保険申請から利用開始まで
介護を一人で抱え込むと、心身ともに疲弊してしまいます。兄弟姉妹などの親族がいる場合は、それぞれの得意分野や生活環境に合わせて分担しましょう。
例えば、「通院の付き添いは長男」「買い物支援は長女」「金銭管理は次男」といった形で役割を分けると、負担をバランスよく分担できます。
大切なのは、互いの状況を共有し、理解し合うことです。
ただし、介護の状況は時間とともに変化するため、定期的に話し合う機会を持つことをおすすめします。
「介護は無理かもしれない」と思っても、どこまで責任が生じるのか気になる方も多いでしょう。ここでは、親の介護をしない場合に生じる法的な義務や注意点をわかりやすく解説します。
民法第877条では、「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と定められています。この「扶養義務」には、親の介護も含まれるとされています。
そのため、親に介護が必要だと知りながら放置した結果、けがを負わせたり死亡させてしまったりした場合、状況によっては「介護放棄」などで罪に問われる可能性があります。
なお、扶養義務があるのは直系血族、兄弟姉妹、配偶者です。配偶者とは介護される当人の配偶者で、子どもの配偶者に扶養義務はありません(民法第752条「協力・扶助の義務」)。
扶養義務には、次の2つの義務があります。
これらは必ずしも両方を行う必要はありません。そのため、介護する時間がない場合は、
「介護費用の負担」という形でも扶養義務を果たせます。
さらに、家庭裁判所が「経済的な余裕がない」と判断した場合は、扶養義務が強制されることはありません。無理をして自分の生活を犠牲にする必要はないのです。
親を介護しない場合の法的責任は、下記記事でも詳しく解説しています。
親の介護は放棄できる?介護放棄の原因と解決策についても解説
要支援・要介護の認定者数は、2030年には約949万人※1にのぼると試算されています。また、同年には65歳以上の約4人に1人※2が要支援・要介護認定者となる見込みです。
介護は、誰にとっても「遠い将来の話」ではなくなりつつあります。以下では、将来の介護に備えて事前にできることを紹介します。
※1厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」より当社にて推計
※2厚生労働省「令和4年度 介護保険事業状況報告(年報)」および内閣府「令和6年版高齢社会白書」より当社にて推計
介護が必要になる前に、家族でしっかり話し合う時間を作っておきましょう。
「自宅で介護を受けたい」「施設に入りたい」といった親の希望を確認しておくことが第一歩です。そのうえで、介護が始まった場合に誰がどのような役割を担うかを、事前に決めておくと安心です。
また、公的介護保険制度の仕組みや利用できる介護サービスについても、早めに情報を集めておくとよいでしょう。地域包括支援センターへの相談や自治体が主催する家族介護教室への参加は、介護が始まる前から利用できるため、より深く制度や介護を理解したい方におすすめです。
どのような介護スタイルを選ぶにしても、一定の費用負担は必要になります。そのため、
親の年金や貯金、保険などの財産状況を確認し、どの程度の支出に対応できるのかを把握しておきましょう。
親がまだ年金を受け取っていない場合は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で将来の受給見込み額を確認できます。また、経済的な備えとして、民間の介護保険を検討するのも有効です。
さらに、親が認知症になった場合に備えて、財産管理や契約手続きをサポートする「成年後見制度」や「任意後見制度」を理解しておくと、いざというときに慌てず対処できるでしょう。
成年後見制度の概要やメリット・デメリットは下記記事で詳しく解説しています。
認知症になると成年後見人が必要?制度のメリットやほかの対策