母親の介護で娘が抱えやすい悩みとは?
無理をしすぎない向き合い方


母親の介護は、ある日突然始まることがあります。親を支えたい気持ちがあっても、実際には仕事や家事、育児との両立に悩んだり、将来への不安を感じたりすることもあるでしょう。

母娘は距離が近い関係であることも多く、娘が介護の負担を一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。

この記事では、母親の介護で娘が感じやすい悩みや、無理せず介護と向き合うための対処法を中心に解説します。

母親の介護で娘が負担を抱えやすい背景

 
母親の介護では、娘が中心的な役割を担うケースが少なくありません。母娘は距離が近い関係であることも多く、母親の体調変化や困りごとに気付いた娘が、自然と介護を引き受けるケースもあるでしょう。

厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」によると、同居しているおもな介護者のうち女の「子」は18.5%、男の「子」は8.1%で、息子よりも娘が介護を担う割合が高いことがうかがえます。

また、「今まで育ててもらった恩返しがしたい」「母親の力になりたい」という気持ちから、無理をしてでも介護を引き受けようとしてしまう方もいるかもしれません。しかし、介護は長期間続くこともあり、仕事や家事、育児と重なると負担が大きくなりがちです。

こうした背景から、母親に介護が必要になると娘が負担を抱えやすくなります。

母親の介護で娘が抱えやすい悩み

 
母親の介護では、娘だからこそ抱えてしまいがちな悩みがあります。ここでは、具体的な悩みを紹介します。

介護を一人で頑張りすぎてしまう

母娘は距離が近い関係だからこそ、「自分が支えなければ」と責任感を抱きやすいものです。母親から頼られることで断れず、一人で頑張りすぎてしまうケースもあります。

また、お互いに遠慮がない関係だからこそ、介護の方針や日常生活のことで衝突してしまう場合もあるでしょう。

さらに、入浴や排泄の介助などは身体的な負担も大きくなります。体格差のある男性と比べると、介助による身体的な疲労を感じやすい場面もあるかもしれません。

母親を支えたいという気持ちは大切ですが、一人で無理を続けると心身の負担が積み重なり、結果として共倒れになるケースもあるため注意が必要です。

介護と育児のダブルケアになる

介護では、通院の付き添いや買い物のサポート、日常的な見守りなどに時間を取られます。そのため、仕事との両立に難しさを感じる人も少なくありません。

さらに、子育て中の世代では、育児と介護を同時に担う「ダブルケア」の状態になることもあります。子どもの送り迎えや学校行事への対応をしながら、親の介護も行う生活は、想像以上に負担が大きいものです。

家族のために頑張ろうとするあまり、十分な睡眠を取ったり気分転換をしたりできない状態が続くと、心身ともに疲労しやすくなります。

経済的な負担への不安が大きくなる

介護が始まると、さまざまな費用が発生します。おもな支出例は次のとおりです。
  • 介護サービスの自己負担費用
  • 医療費
  • 通院時の交通費
  • おむつ代などの介護用品費
  • 手すり設置などの住宅改修費
  • 配食サービスなど保険外サービスの利用料
このような支出が継続的に発生するため、家計への負担を感じる方も少なくありません。

また、介護のために勤務時間を減らしたり、働き方を見直したりすると、収入が減少する可能性があります。場合によっては離職を選択せざるを得ないケースもあるでしょう。

厚生労働省の「雇用動向調査(2024年)」によると、介護・看護を理由に離職した方は男性約3万4,000人、女性約5万8,700人で、女性が離職者の6割以上を占めています。

介護はいつまで続くかわかりません。長期化すると経済的な負担も大きくなる可能性があります。

母親の介護を一人で抱え込まないための対処法

 
介護は、一人で頑張るものではありません。家族や外部の力を借りながら向き合うことで、負担を軽減しやすくなります。

ここでは、無理なく介護を続けるための対処法を確認していきましょう。

家族で役割分担をする

介護の負担を軽減するためには、役割を分担することが重要です。

兄弟姉妹や配偶者、親戚などがいる場合は、それぞれができる範囲で協力や分担をする方法を考えてみましょう。
  • 病院への付き添い
  • 日用品や食料品の買い物
  • 介護施設やサービス事業者との連絡
  • 介護サービスの申請など各種手続き
  • 定期的な見守りや安否確認
このように役割を分けることで、特定の人に負担が集中するのを避けやすくなります。

必ずしも全員が同じ量の介護を担う必要はありません。家族や親戚と話し合いながら、それぞれが無理なく介護にかかわれる形を見つけていくことが大切です。

介護サービスを活用する

介護サービスを積極的に活用することも一つの方法です。

介護を家族だけで担おうとすると、身体的・精神的な負担が大きくなりがちです。訪問介護やショートステイなどのサービスを利用すれば、介護にかかる時間や労力を減らしやすくなるでしょう。

どのようなサービスが適しているかは、本人の状態や家族の状況によって異なります。ケアマネジャーに相談しながら必要なサービスを取り入れ、介護の負担を軽減しましょう。

介護サービスの活用は、自分自身の休息時間を確保しやすくなる点もメリットです。介護を長く続けるためには、介護する側が無理をしすぎないことも重要です。

将来の介護について早めに備えておく

親が元気なうちに将来の介護について話し合っておくことも大切です。

どのような介護を希望しているのか、誰が中心となって対応するのかを事前に共有しておけば、介護が必要になった際の戸惑いを減らしやすくなります。家族や親族間の認識のずれを防ぐことにもつながるでしょう。

また、介護には費用面の備えも欠かせません。介護にかかる費用は平均で約542万円*1、月額では平均約9万円*2です。施設に入居する場合はさらに費用が発生することもあります

*1(公財)生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」より当社試算

*2(公財)生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」

介護が必要になったときに慌てないためにも、親の資産状況や年金収入などを事前に確認しておきましょう。民間介護保険を活用し、将来の介護費用に備える方法もあります。

早めに準備を進めておくことで、介護への不安を軽減し、自分自身の生活や働き方についても考えやすくなるでしょう。

母親の介護と上手に向き合うためのポイント

母親の介護では、親を大切に思う気持ちから無理をしてしまうことがあります。しかし、介護を長く続けるためには、介護する側の心身の健康にも目を向けることが大切です。

「自分だけで支えなければ」と思い込みすぎない

「自分が頑張れば何とかなる」「もっとできるはず」と考え、一人で介護の負担を抱え込んでしまう方もいます。

しかし、状態によっては数年単位で介護が続くこともあり、一人だけで支え続けるには限界があります。無理を重ねると、身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスも大きくなるでしょう。

自分だけで完結しようとするのではなく、周囲の助けや公的制度など「頼れるものは頼る」という考えを持つことも大切です。

母親との距離を近づけすぎない

母娘は遠慮なく話せる関係である一方、距離が近いからこそ感情的になりやすい面もあります。生活習慣や介護の方針について意見がぶつかったり、母親からの要求が増えたりして、つい強い口調になってしまうこともあるでしょう。

また、親を思う気持ちから、母親が自分でできることまで介助してしまうケースもあります。しかし、必要以上の介助は本人の身体機能や認知機能の低下につながりかねません。

介護サービスを活用し、適度な距離感を保つことも一つの方法です。外部の力を借りることは決して手を抜くことではありません。家族だけで抱え込まず、必要な支援を利用することで、介護の負担を軽減しましょう。

母親の介護は「できることから」で大丈夫

介護は、一人で完璧を目指すものではありません。周囲の協力を得ながら、無理なく続けていくものです。

嫌々介護を続けたり、自分の生活を犠牲にしたりすると、介護する側・される側双方の心身の負担になってしまいます。

外部に任せられることと、家族だからこそできることを整理し、自分にできることから少しずつ取り組む姿勢が大切です。

また、母娘には、長年のかかわりのなかで育まれてきた信頼関係があります。その関係性は、母親が安心して介護を受けるうえでの支えにもなるでしょう。

心に余裕を持って向き合うことが、母親と過ごす穏やかな時間にもつながります。

一人で抱え込まず、適度な距離感で母の介護と向き合おう


母親の介護では、娘が中心となって支えるケースも多く、精神的・身体的・経済的な負担を抱えやすくなります。

しかし、介護を一人で背負い続ける必要はありません。家族で役割を分担したり、介護サービスを活用したりしながら、無理のない形で続けることが大切です。

適度な距離感を保ちながら、自分自身の生活も大切にしつつ、母親の介護と向き合っていきましょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

小玉 有紀[介護福祉士]

1986年生まれ。福祉系専門学校にて介護福祉士・介護事務士を取得。介護業務を経験。その後、生活相談員・ケアマネジャーとしても勤務。全国展開する有料老人ホームにてアセスメントツールの開発事業に携わる。また系列施設で社員研修の講師となる。現在も、ケアマネジャーとして勤務するかたわら、ライターとして活動中。

資格:介護福祉士・介護事務士・介護支援専門員

公開日:2026年7月14日

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