介護ストレスに悩む孫のケア
祖父母の介護に疲れたときの対処法とは


家庭の事情により、孫が祖父母の介護をするケースは少なくありません。祖父母の介護に携わっている孫にはどのような悩み・問題があるのか、どのように対処すれば良いのかを知りたい方もいるのではないでしょうか。

介護をしていると社会から孤立しやすく、介護費用などの負担も大きいことから経済的な不安も感じやすくなります。悩んだ際は一人で抱え込まずに、周囲の人や専門機関に相談することが大切です。

当記事では、介護をする孫にはどのような悩みがあるのかを解説し、肉体的・精神的な負担を軽減する対処法を紹介します。

朝日生命では認知症介護などの経済的負担に備えられる介護・認知症保険をご提供しています。
詳しい資料はこちら

日本における介護の実態

まずは、日本の介護の実態を見てみましょう。総務省統計局が発表した「令和4年就業構造基本調査」によると、年代別の介護者数は以下のようになっています。

介護に従事している人の総数

6288,000

30歳未満

205,000

3039

289,000

4044

264,000

4549

512,000

上表から、50歳未満で介護に従事している人の割合は、全体の約2割を占めることがわかります。

日本では、18歳以下の介護者を「ヤングケアラー」、19歳~30代の介護者を「若者ケアラー」と呼び、2030年には若者ケアラーの数が318万人におよぶと予測されています。

ここで指す要介護者は祖父母だけではありませんが、年代的に祖父母の介護にあたっている孫も少なくないでしょう。

また、若い世代が介護に従事すると労働に影響が出ることも考えられます。これにより、労働力の減少から日本経済が損失を受ける可能性もあるでしょう。

介護ストレスを感じている孫の体験談

進学や就職を諦めて介護せざるを得ない、将来に対する漠然とした不安があるなど、祖父母の介護にストレスを感じている孫は少なくありません。

以下は、介護ストレスに関する体験談の一例です。
  • 祖父母の介護をしていた母が亡くなり、孫の自分が進学を諦めて介護をすることになった
  • 高校生の頃から祖父母の介護にあたり、友人と遊ぶことも部活動をすることもままならなくなった。次第に友人に連絡することも減ってしまった
  • 仕事を辞めて祖父母の介護をしていると、「若いのに仕事もしないで」と心ないことを言う近所の人もいて困惑する。加えて、祖母の行動が近所で問題視されるようになり、孫の自分への風当たりも強くなった
  • 祖母の介護にもいつか終わりが来ると思うが、それは祖母が亡くなることを意味するため、将来の夢を描くことに罪悪感がある
  • 学歴も職歴もなく、今後仕事に就けるのかが不安。このままだと結婚や子どもを諦めなければならないかもしれないと不安になる

介護ストレスから起こる問題

日々、介護のストレスにさらされていると、さまざまな問題が起こる可能性があります。

介護うつ

「介護うつ」とは、介護が原因でうつ病を発症した状態のことです。介護うつを発症すると介護自体が難しくなるだけでなく、自身の日常生活にも支障が出る場合があります。

介護うつは本人も気付かないうちに病状が進みやすいため、異変を感じたら早めに対処しましょう。以下は、介護うつの主な症状です。
  • 食欲不振
  • 睡眠障害
  • 疲労感
  • 焦燥感
  • ネガティブ思考
介護うつは、食事や排泄・入浴介助による肉体的負担、介護の長期化による精神的負担、離職や介護に関する出費での経済的負担などを原因とするストレスによって引き起こされます。

また、責任感が強く、完璧主義な人ほど介護うつを発症しやすいといわれています。他人に頼れず自分を追い詰めやすい、介護を完璧にできないと自分を責めやすいといった人は注意が必要です。

要介護者への暴言・暴力

介護では、食事や入浴、排泄介助からくる肉体的疲労をはじめ、精神的・経済的負担などさまざまな要因から精神疲労が起こりやすくなります。

ストレスが蓄積してしまうと要介護者にひどく当たってしまうケースもあり、エスカレートすると暴言・暴力につながるおそれがあるため、注意しなければなりません。

また、要介護者に食事を十分に与えない、医療機関を受診させないといった介護放棄(ネグレクト)につながる可能性もあります。介護放棄は虐待の一種で、おむつ交換をしない、話しかけられても無視する、部屋を汚いままにしておくなどの行為も含まれます。

介護をする孫にはどのような悩みがある?

介護をしていると、さまざまな悩みが出てくるでしょう。しかし、周囲の人に打ち明けられない、理解してもらえないといった状況ではストレスが溜まり、精神的にも追い詰められやすくなります。

ここでは、介護をする孫が抱えやすい悩みを解説します。

誰にも相談できない

介護をする孫に共通する悩みは、介護について誰にも相談できないことです。

介護者が若いと同世代に介護をしている人が少ないため、自分が介護に携わっていることを打ち明ける機会がありません。健康状態や経済的な問題など、プライベートの事情を他人に話すことも勇気がいります。

また、周囲も孫が介護をしている事実を知らないと、配慮のない言葉をかけてしまうことがあるでしょう。その結果、周囲に介護についての悩みを相談できず、社会から孤立しやすくなります。

介護が原因で恋愛や結婚、就職などのライフイベントを諦めるケースもあり、介護によって孫の人生が大きく変わってしまうことは少なくありません。

経済的不安

生活費と介護費の負担により、経済的に苦しくなる家庭も多く見られます。特に、10代・20代の場合は、自分で得られる収入がまだそれほど多くはありません。親が仕事を辞めて介護に専念すると家計全体の収入が減ってしまうため、やむを得ず孫が介護を担う家庭もあります。

介護中心の生活になってしまうと、自分の将来にまで気が回らなくなることも多いでしょう。まずは、年金や預貯金を含む祖父母の経済状況を確認するなどして、自分の将来の資金についても考えていくことが大切です。

仕事と介護の両立が難しい

介護では、要介護者の急な体調不良や通院の対応など、突発的な問題が発生しやすくなります。そのため、勤務先の制度では対応できない、介護の精神的負担が大きいなどを理由に、介護離職をする人も多いのが現状です。

厚生労働省が2019年度に発表した「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によると、介護離職者が「手助・介護」を機に仕事を辞めた理由について、「仕事と「手助・介護」の両立が難しい職場だったため」と回答した方が59.4%と最も多い結果になっています。

将来への不安

若い頃から長期的に介護に携わったことで、学歴や職歴がない人もいます。介護は先が見えないため、将来に漠然とした不安を抱えている人も多いでしょう。

将来への不安を打ち明ける相手がいないため、一人で不安や悩みを抱え込んでしまうヤングケアラーも少なくありません。社会において長期的な介護は評価されにくく、10代・20代で介護を担ってきた方の多くが、将来の生活に不安を感じているのが現状です。

自分の時間が取れない

介護で忙しいと自分の時間が取れないうえ、空いた時間に遊びに出かけることに対し罪悪感を覚える人もいます。なかには、自分の時間を持つことで、周囲から責められるといったケースもあります。

介護者が無理を続けるとストレスがたまり、先述したような介護うつを発症する可能性もあるため、意識して自分の時間をつくることが大切です。体をしっかりと休めたり、趣味を楽しむ時間を持ったりすることで、うまく気分転換ができるでしょう。

自分を大切にすることは、決して家族をないがしろにすることではないと、思考を切り替えることも必要です。

孫が介護に限界を感じたときの4つの対処法

介護には、経済的な負担や将来への漠然とした不安、介護と仕事の両立の難しさなど、悩みがつきものです。ここでは、介護の負担を感じている孫が、肉体的・精神的な負担を軽減するための対処法を4つ紹介します。

また以下の記事でも、介護の辛さを和らげるポイントや相談先について紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

家族に相談する

介護をしている人のなかには「すべて自分でなんとかしなければいけない」と考えてしまう人もいます。

介護は「自分がやらなければ」と抱え込まず、人の手を借りることも大切です。まずは身近な親や兄弟、姉妹などの家族に相談し、解決策を一緒に探ってみましょう。

実際に介護を分担できることが理想ですが、事情により難しい場合には、介護費用を負担してもらうなどの方法もあります。介護費用を負担してもらえれば介護サービスをより利用しやすくなり、介護の肉体的・精神的な負担が軽減される可能性が高くなります。

地域包括支援センターや保健センター、ケアマネジャーに相談する

祖父母の介護の負担が大きいと感じたら、自治体の介護サービスを利用するのもおすすめです。管轄の市町村経由で、地域包括支援センターや保健センター、ケアマネジャーに介護の不安や悩みについて相談してみましょう。

地域包括支援センターでは、要介護者の生活や介護、介護サービスの利用、介護と仕事の両立の悩みなどについて、無料で相談ができます。

経験や知識のある介護の専門家からアドバイスをもらえるうえ、サービスを利用することで介護士などとのつながりもできます。新たな介護の方法が見えてくることもあるでしょう。

また、自治体によっては配食サービスを通じて、安否確認などをしてくれるところもあります。

介護サービスをうまく活用して、介護の負担を軽減しましょう。

施設への入居を検討する

介護サービスを利用していても在宅介護に限界を感じ始めたら、介護施設への入居を検討するのもよいでしょう。特に、要介護者が寝たきりの状態の場合、介護者にかかる負担は非常に大きくなります。

家族での介護にこだわる必要はありません。無理をした結果、満足のいく介護ができなかったり、介護者が体調を崩してしまったりすることも考えられます。

介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、介護施設にはいくつかの選択肢があるため、必要に応じて検討しましょう。

レスパイトケアを試してみる

「レスパイトケア」とは、介護者が心身ともに休息を取れるようサポートするサービスのことです。介護をしていると疲れやストレスがたまりやすいうえ、周囲から孤立して孤独を感じることも少なくないでしょう。

介護は先が見えないため、要介護者と良い関係を保ちながら介護を続けるためにも、介護から一時的に離れて心身のリフレッシュを図ることが大切です。

以下は、レスパイトケアの一例です。
  • 訪問介護
  • 通所サービス(デイサービス、デイケア)
  • ショートステイ
  • レスパイト入院(医療ケアを受けられるサービス)
介護を受ける側が「家族の負担になってしまい申し訳ない」と悩んでしまうケースもあります。介護サービスを利用して介護者が休むことは、要介護者の精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。

介護ストレスを予防・軽減するために一人で抱え込まず周囲に相談しよう


介護は先が見えないため、経済的なことや仕事のことで将来に不安を感じる人は多いでしょう。介護ストレスがひどくなると介護うつを発症する可能性もあるため、辛い状況を我慢せず、周囲の人に相談したり、自分の時間を持ったりするなど早めに対処することが大切です。

介護の負担が大きいと感じたら、本記事で紹介した内容を参考に、ケアマネジャーに相談する、レスパイトケアを試してみるなどの対処法を検討してみましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年11月11日

介護について知る

介護を予防する

介護について考える

公的制度・支援サービス

介護の費用

介護が始まったら

認知症について知る

認知症とは

認知症の予防

もの忘れ・認知症の専門家の
特別コンテンツ

生活習慣病について知る

生活習慣病とは

生活習慣病の予防

老後の備え方

年代別アドバイス