介護ロス症候群とは?起こる理由や治療法


高齢化が進む日本では、誰がいつ介護をすることになってもおかしくありません。多くの場合、介護にはさまざまな負担、ストレスが伴います。大きな精神的負担を抱えながら介護を続けた結果、うつ病になってしまったケースも少なくありません。

介護うつに似た病気の一つに「介護ロス症候群」があります。介護ロス症候群とは、介護から解放されたタイミングで心身のバランスを崩してしまうことです。

自分が将来家族を介護することになった際に、介護ロス症候群にならないためにはどうしたらよいでしょう。本記事では、介護ロス症候群になってしまう理由や防ぐ方法などを紹介します。

朝日生命では認知症介護などの経済的負担に備えられる介護・認知症保険をご提供しています。
詳しい資料はこちら

介護から解放されたあとに起こる「介護ロス症候群」とは?

介護ロス症候群とは、介護していた人が亡くなったあと、その喪失感からいつまでも抜け出せずに燃え尽きたような状態になってしまい、心身のバランスを崩してしまうことです。

生活の多くを介護に費やし、一生懸命に向き合えば向き合うほど、見送ったあとの悲しみは大きいでしょう。「大切な家族を支えたい」という使命感で頑張ってきた人は、その使命を失ったときに、どうしたら良いかわからなくなってしまうことがあります。

介護ロス症候群になってしまう理由とは

介護は、精神的にも肉体的にも大きな負担がかかるものです。毎日くたくたになるまで身を削り、自分のやりたいことを諦める日々を過ごしていると、心身ともに消耗してしまうでしょう。

ただし、心身が消耗した状態でも、やるべきことがあるうちはなんとかなる場合も多いといわれています。憂鬱でつらい気持ちを抱えながらも、自分を奮い立たせて介護に取り組むことで、気を紛らわせられるのです。

しかし、介護から解放され、やるべきことがなくなって安心すると、それまで抑えつけていた憂鬱さやつらさが急に押し寄せてきます。心身の消耗が重く感じられるようになり、うつ病のような症状が現れることもあります。

これが、介護から解放されたあとに起こる介護ロス症候群の正体です。

介護ロス症候群になるとどのような症状が出る?

介護ロス症候群になると、大仕事を終えて重荷から解放されたあとに発症する「荷下ろしうつ病」の症状が出ます。

荷下ろしうつ病の症状はうつ病と同じです。具体的にどのような症状が出るのか、確認しておきましょう。

食欲がなくなる

食べたい気持ちがなくなり、食べようとしても食べられなくなるといった症状が出ます。好きなものを食べても「おいしい」と思えなくなり、ますます食べようとしなくなるため、体重の減少や体力の低下も起こりやすいです。

睡眠障害が起こる

疲れているのに眠れない、眠れたとしても何度も目が覚めてしまうといった睡眠障害の症状が出やすくなります。明け方に目覚めてしまい、そのあと寝付けないまま朝を迎える早朝覚醒も、睡眠障害の一つです。

睡眠障害が起こると、思うように睡眠が取れないため、疲れや気怠さを感じることが増えます。不眠はうつ状態を悪化させるといわれているため、注意すべき症状です。

身体が動かなくなる

身体が疲れやすくなり、疲労感や倦怠感が抜けなくなります。家事や仕事など、何をするにも億劫になり、活動量が減って無気力になってしまうのです。

ときには身体が思うように動かず、ベッドから起き上がることさえ困難になる場合もあります。何日も前から段取りをしておかないと、出かけられない状態になることもあるほどです。

また、人によっては、重い肩こりや頭痛を感じることもあります。

気持ちが落ち込む

気分が落ち込み、人とのかかわりを避けて殻に閉じこもるようになります。頭が思うように働かなくなり、作業効率が下がるでしょう。

なかには人生に希望を持てず、世界から色がなくなったような感覚になる人もいます。物事を何でもネガティブに考えるようになり、「自分なんて必要ない」と自殺願望を抱いてしまうこともあるほどです。

介護ロス症候群になりやすいのはどのような人か

ここでは、どのような人が介護ロス症候群になりやすいのかを解説します。

責任感が強く完璧主義な人

責任感が強くて真面目な人は、「すべて完璧にやらなくてはいけない」と抱え込んでしまいがちです。手を抜くことが苦手なので、自分だけの力で頑張ろうとする傾向があります。

しかし、介護は必ずしも自分の思い通りにできるものではありません。人を相手にする作業であるため、思うように進まないことも多くあります。

その結果、頑張りすぎて疲れがたまり、心身ともに消耗してしまう人が多いようです。

物事に熱中しのめり込みやすい人

時間を忘れて物事に熱中してしまうような、のめり込みやすい人も介護ロス症候群になりやすいでしょう。

物事にのめり込みやすい人も手抜きができず、自分の時間のほとんどを介護にささげてしまう傾向があります。介護が生きがいになっているため、介護から解放された途端、心にぽっかりと穴が開いたような気持ちになってしまうのです。

人間にとって、大きな変化はストレスになります。これまで生きがいとしてきた介護から急に解放されると、脳がストレスを感じ、倦怠感や気持ちの落ち込みといった症状が出てしまうことがあるのです。

頼れる人がいない人

周囲に頼れる人や相談できる人がおらず、介護のすべてを自分で背負わねばならない人も、介護ロス症候群になりやすいといえます。

介護は重労働であり、一人ですべてをこなすのは非常に大変です。精神的な負担も重いため、悩みやつらさを相談できる相手がいないと、孤独感や虚無感が増していくでしょう。

また、介護のために仕事を辞めざるをえない状態になった場合は、収入がないことや社会と疎遠になることへの不安も増えます。その結果、ますますストレスが大きくなってしまうのです。

介護ロス症候群を防ぐ方法4選

ここでは、介護ロス症候群を防ぐ方法を紹介します。介護ロス症候群になりやすい傾向がある人は、少しでも多くの回避策を知っておくとよいでしょう。

自分を大切にする

「自分を犠牲して介護に取り組む」という気持ちでいると、介護ロス症候群になりやすくなる傾向があります。すべてが介護優先になってしまうと、精神的に消耗してしまうため注意が必要です。

自分を犠牲にせず、自分のための時間をつくり、介護以外の生きがいを見つけましょう。

疲れやストレスへの自覚を持ち、悪化する前に早めに休みを取ることをおすすめします。たまには身体を休めて趣味を楽しむなど、心身ともにリフレッシュする時間も必要です。

介護を分担する

介護をすべて一人でやるのは困難です。自分だけで頑張ろうとすると、心身に大きなストレスがかかり、消耗してしまいます。介護する側はもちろん、介護される側にも悪影響をおよぼすことがあるでしょう。

決して一人で抱え込まずに、家族と話し合うことが大切です。介護の負担はできるだけ複数人で分担することをおすすめします。

プロに相談する

介護に関する悩みがある場合は、一人で悩まず、信頼できる相手に相談しましょう。家族や友人でもよいですが、ケアマネージャーといった介護のプロに相談するのもおすすめです。

専門知識を持ったプロに相談することで、介護の正しい知識が身に付き、不安や悩みを解消できます。介護による社会的孤立を防ぐ効果があるのもメリットです。

ケアマネージャーのほか、地域包括支援センターや医師に相談するのもよいでしょう。自治体が行なっている介護相談会に参加するのもおすすめです。

介護サービスで負担を減らす

心身の負担を減らすために、ホームヘルパーやデイサービス、ショートステイなどの介護サービスを利用するのもよいでしょう。

介護の負担が大きければ、介護施設への入所という選択肢もあります。「大切な親を自分で介護しないのは親不孝ではないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、必ず家族が自宅で介護をしなければいけないわけではないのです。

誰が介護を担うかよりも、介護される側とする側の両方が幸せに暮らせる選択をすることが大切です。

介護ロス症候群になってしまった場合の治療について

万が一、介護ロス症候群の症状が2週間以上続く場合は、心療内科や精神科を受診することをおすすめします。医師の指示に従い、治療を行ないましょう。

おもな治療法は、「休養を取る」「薬物療法を行なう」「精神療法を行なう」の3つです。

休養を取る

まずは十分な休養を取ることが、介護ロス症候群の治療の第一歩です。できるだけ睡眠時間を確保したりリラックスする環境を整えたりすることで、頭をしっかりと休ませる必要があります。

ゆっくりと休養を取り、周囲からのストレスと、自分自身に向けてしまうストレスを減らしましょう。

薬物療法を行なう

回復スピードを速めたり、再発を防いだりする目的で、薬を用いる場合もあります。使用するおもな薬は、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、漢方薬などです。

精神療法を行なう

カウンセリングで問題の原因を探り、認知療法や行動療法によって改善を図るのが精神療法です。対話によって精神状態や思考の癖を改善します。

早めの対策で、介護ロス症候群を防ぎましょう


介護に熱心に取り組んだ人や、誰にも頼らず自力で頑張った人は、解放されてから介護ロス症候群になる可能性が高いといわれています。

介護ロス症候群を防ぐためには、つらい状況を一人で抱え込まず、周囲に頼りながら介護を行なうことが大切です。自分の心身状態に耳を傾け、ストレスや疲労をためこまないようにしましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年2月27日

介護について知る

介護を予防する

介護について考える

公的制度・支援サービス

介護の費用

介護が始まったら

認知症について知る

認知症とは

認知症の予防

もの忘れ・認知症の専門家の
特別コンテンツ

生活習慣病について知る

生活習慣病とは

生活習慣病の予防

老後の備え方

年代別アドバイス