在宅介護の費用はどれくらい?
施設介護費用との比較と選び方のポイント


高齢の家族を介護する状況になったとき、「在宅介護にはどのくらいの費用がかかるのか」と不安に思う方もいるでしょう。介護は長期にわたるケースも少なからずあり、経済的な備えは欠かせません。

本記事では、在宅介護費用の平均額や施設介護との違い、介護場所を選ぶ際のポイントについて詳しく紹介します。

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在宅介護にかかる費用は?

 
在宅介護を行うときに必要となる費用には、「一時的な費用」と「月額費用」があります。それぞれの金額を、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(令和6年)」のデータをもとに見ていきましょう。

一時的な費用の平均額は47万円

在宅介護を始める際には、介護用ベッドや手すりの設置のように、住宅の改修が必要になることがあります。

同調査では、こうした「一時的な費用」の平均額は47万円となっており、費用の分布は以下のとおりです。

一時的な費用

割合

費用なし

17.5

15万円未満

24.0

1525万円未満

10.1

2550万円未満

6.2

50100万円未満

7.2

100150万円未満

6.4

150200万円未満

1.8

200万円以上

4.7

不明

22.0

※介護サービスの自己負担費用を含む

15万円未満が最多で24.0%となっており、なかには費用がかからなかったケースもあります。一方で、200万円以上と高額になる家庭も4.7%存在します。住宅改修の規模や介護用品の導入状況によって差が出るといえるでしょう。

月額費用の平均は5.2万円

次に、在宅介護で毎月かかる費用を見ていきましょう。月額費用の平均は5.2万円で、費用の分布は以下のとおりです。

月額費用

割合

費用なし

0

1万円未満

8.6

1万~25千円未満

22.8

25千~5万円未満

18.4

5万~75千円未満

13.0

75千~10万円未満

4.0

10万~125千円未満

6.3

125千~15万円未満

1.2

15万円以上

6.9

不明

18.7

※介護サービスの自己負担費用を含む

約半数が5万円未満で収まっている一方、15万円以上かかる家庭もあることがわかります。

在宅介護費用の平均総額は333万円

では、在宅で介護を行った場合、総額ではどのくらいかかるのでしょうか。

同調査では、介護期間の平均は55カ月(約4年7カ月)とされています。こちらをもとに試算すると、在宅介護費用の総額は以下のようになります。
  • 一時的な費用:47万円
  • 月額費用:5.2万円×55カ月=286万円
  • 合計:333万円
もちろん、実際の負担額は介護を受ける方の状態や介護者の有無、介護サービスの利用状況などによって増減します。

例えば、独居の場合は訪問介護やデイサービスを多用することで、結果的に費用がかさむ可能性が高いでしょう。

施設介護は在宅介護よりも費用がかかる

在宅介護に比べ、施設介護はどうしても費用が高くなる傾向があります。

先の調査では、施設介護の月額費用の平均は13.8万円です。

介護期間を平均の55カ月とすると、施設介護の総額は約760万円になります。さらに、施設によっては高額な入居一時金が必要となるため、トータルで1,000万円を超える可能性もあるでしょう。

費用の面から見れば、在宅介護のほうが負担は小さくなる可能性が高いでしょう。

在宅介護と特別養護老人ホームの費用をシミュレーション

 
在宅介護と施設介護では毎月の費用にどの程度の差が出るのかを、シミュレーションしてみましょう。施設は特別養護老人ホーム(ユニット型個室)とし、いずれの場合も「要介護3」「支給限度額までサービスを利用」「自己負担1割」と仮定します。

項目

在宅介護

特別養護老人ホーム

(ユニット型個室)

介護サービス費

27,048

24,450

居住費

12,689

61,980

食費

54,000

(介護食1食当たり600円)

43,350

介護サービス費以外の費用

1万円

(おむつ代や交通費など含む)

1万円

(施設により異なる)

合計

103,737

139,780

1カ月を30日として計算

在宅介護の食費は、介護食の購入を想定しているため、家族が調理したり、配食サービスを一部利用したりする場合は金額が変動します。

また、特別養護老人ホームにおける介護サービス以外の費用には、医療費や理美容費、レクリエーション費、嗜好品の費用などを含みます。おむつ・尿取りパットの費用は施設負担なので、別途費用は生じません。

上記はあくまでも一例ですが、在宅介護は施設介護より費用が抑えられます。ただし、在宅介護では、リフォームが必要になればその分費用がかかる点には注意しましょう。

介護サービスの自己負担額の決まり方や軽減制度は、以下の記事で解説しています。

介護サービスの自己負担額は?負担額の判定方法と軽減制度も紹介

介護に必要な費用の目安は、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

介護に必要な費用はどのくらい?

在宅介護と施設介護はどちらが良い?選ぶときのポイント

 
在宅介護は施設介護と比べて費用を抑えられる傾向があります。介護サービスの利用を控えて自宅で家族が介護を行ったり、必要な時間に絞って介護サービスを利用したりするためです。

しかし、費用だけで介護場所を決めると後悔につながるかもしれません。介護は経済的な側面だけでなく、介護する側・される側の心身への影響も大きいため、慎重に検討しましょう。

以下では在宅介護と施設介護のメリット・デメリットを整理し、選択のポイントを解説します。

在宅介護のメリット・デメリット

ご自身に合った介護場所を選択するためにも、在宅介護と施設介護のメリット・デメリットを理解することは重要です。それぞれについて詳しく解説します。

在宅介護のメリット

まずは、在宅介護のメリットです。
  • 住み慣れた自宅で過ごせる
    在宅介護における最大のメリットは、介護を受ける本人が住み慣れた自宅で生活を続けられる点です。反対に、自宅から離れることにはリスクをともないます。

    例えば、認知症の方は環境変化に敏感です。環境が変わると適応できず、混乱してしまう恐れもあるでしょう。

    慣れた環境は安心感を与えます。また、思い出の品に囲まれた暮らしは、精神的な安定につながりやすいでしょう。

  • 介護サービスの種類や頻度も自由に選べて、施設入居より費用を抑えられる
    在宅介護では、訪問介護やデイサービスなど、必要に応じて介護サービスを組み合わせられます。

    施設に入居する場合に比べるとサービスの種類や頻度を調整しやすく、費用をコントロールできる点も特徴です。特に家族が日中の一部だけでも介護を担える場合は、月額費用を大きく抑えられる可能性があります。

在宅介護のデメリット

一方で、在宅介護は家族の負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。特に高齢の夫婦や親子による「老々介護」では、介護者の心身が疲弊し、共倒れのリスクが高まります。

関連記事:老老介護の現状は?共倒れを防ぐ4つの解決策

また、介護に時間を割くことで働けなくなり、収入減少や離職につながるケースも少なくありません。

関連記事:介護退職を考える前に|経済的・社会的リスクを回避するための介護者の支援制度

さらに、在宅では急な体調変化や転倒などの不測の事態にすぐ対応できないこともあります。家族だけで看る場合にはできることに限界があり、見守りサービスや緊急通報システムなどの併用が求められるでしょう。

在宅介護のメリットやデメリット、利用できるサービスは、こちらの記事でも解説しています。

在宅介護とは?メリット・デメリットや利用できるサービス

施設介護のメリット・デメリット

次に、施設介護のメリット・デメリットを確認しましょう。

施設介護のメリット

施設介護の最大の強みは、専門スタッフによる24時間体制の介護を受けられる点です。

痰の吸引や寝たきりの方の体位変換、急な病状変化への対応など、医療ケアを含むサポートが受けられるため、安心感は非常に大きいでしょう。

また、家族が介護に追われることがなくなり、肉体的・精神的な負担を大幅に減らせることも大きなメリットです。

施設介護のデメリット

施設介護は24時間体制でサポートしてもらえるため非常に助かるサービスですが、費用面の負担は大きくなりがちです。

施設によっては十数万円の月額費用に加え、入居一時金が必要になる場合もあり、家計への影響は小さくありません。経済的に利用を継続できるかどうかは、事前にしっかり検討しておく必要があるでしょう。

介護施設の費用相場や経済的な負担軽減方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

介護施設の費用はいくら?利用料の相場・負担軽減の方法

また、将来の経済的負担に備える方法としては、民間の介護保険を利用することも有効です。

ファイナンシャルプランナー100人を対象としたアンケートでは、介護への備えとして「民間の介護保険」を勧める声が最も多く、特に40代から準備を始めるべきという結果も出ています。

ファイナンシャルプランナーに聞きました!介護に関するQ&A

早いうちから将来を見据えて、民間の介護保険への加入も検討してみるとよいでしょう。

本人の意思を確認する

在宅介護と施設介護には、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが正解というものではありません。

大切なのは、本人がどのように暮らしたいかを尊重することです。家族だけで判断するのではなく、本人の気持ちを確認しながら話し合うことが重要になります。

また、介護が必要になる前から準備をしておくこともおすすめです。事前に選択肢や希望を整理しておけば、急な事態が起きたときでも慌てずに対応できるでしょう。

在宅介護の費用目安を知り、早めに備えを始めよう


在宅介護は施設介護と比較して費用が安い傾向にありますが、費用だけで介護場所を決めるのはおすすめできません。

介護は経済的な側面だけでなく、介護する側・される側の心身への影響もあります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえながら、本人や家族の意思も尊重のうえ、慎重に判断しましょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年10月15日

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