要介護認定における区分変更とは?
メリットと注意点を正しく理解しよう


家族を介護するなかで要介護度や要支援度が実態にあっていない、あるいは最近の深刻化によってあわなくなったと感じている方もいるかもしれません。

そうした場合に有効な手段が区分変更です。区分変更により要介護度が見直されると、受けられる介護サービスの幅が広がり、介護の負担も軽減される可能性があります。

この記事では、要介護認定における区分変更の概要や申請の流れ、区分変更を行なうメリットと注意点も解説します。

要介護認定の基本と区分変更とは

まずは、要介護認定や区分変更とはどのようなものか解説します。

7つの区分からなる要介護認定

対象者が要介護状態・要支援状態にあるのか否か、ある場合にはどの程度の介護や支援を必要とするのかを判定する仕組みが、要介護認定です。介護の必要度合いに応じて、要支援1・2と要介護1~5の7区分が設定されています。

区分の判定には「要介護認定等基準時間」という考え方が用いられます。これは直接生活介助(入浴や排せつなど生活に最低限必要な行為の介助)、間接生活介助(家事などの援助)、問題行動関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為の5分野について、介護を要する時間を算出するものです。

要介護認定等基準時間が長くなるほど手厚い介護が必要ということになります。

要支援1

要介護認定等基準時間が25分以上32分未満またはこれに相当すると認められる状態

要支援2

要介護1

要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当すると認められる状態

要介護2

要介護認定等基準時間が50分以上70分未満またはこれに相当すると認められる状態

要介護3

要介護認定等基準時間が70分以上90分未満またはこれに相当すると認められる状態

要介護4

要介護認定等基準時間が90分以上110分未満またはこれに相当すると認められる状態

要介護5

要介護認定等基準時間が110分以上またはこれに相当すると認められる状態


要介護認定の決め方と判定基準

認定するにあたって、主治医による意見書と、各自治体の認定調査員が本人や家族に対して聞き取りを行なう介護認定調査の結果をもとに、コンピュータ判定を実施します。これが一次判定と呼ばれるものです。

一次判定の結果を踏まえ、保険者たる市区町村に置かれる介護認定審査会で判定(二次判定)が行なわれ、区分が決定します。

要介護認定の更新時期を待たずに申請する区分変更

要介護認定には有効期間が設けられていて、新規申請の場合は6カ月、更新申請の場合は12カ月というのが原則です。ただし、本人の状態をもとに、自治体の判断で3カ月~48カ月の間で個別に有効期間が設定される場合もあります。

区分変更とは上記の認定有効期間内において、更新を待たずに区分を変更する手続きのことをいいます。認定を受けている本人の心身状態が著しく変化した場合に申請可能です。

区分変更の申請手続きの基本

区分変更の手続きがどのような流れで進み、どのような書類を準備する必要があるのか解説します。

介護の区分変更の流れ

区分変更の申請から認定までの一般的な流れを見てみましょう。

1)ケアマネージャーのアセスメント

利用者・家族と面談を実施し、利用者の状態や介護における課題を抽出。ケアマネージャーは暫定ケアプランを作成し、担当者会議にて区分変更の申請を決定します。

2)必要書類の準備、窓口への提出

必要書類を市区町村の窓口へ提出します。

3)主治医による意見書の提出

判断要素の一つとなる意見書を主治医に作成してもらいます。(市区町村から主治医に直接依頼)

4)認定調査

自治体の認定調査員などによる訪問聞き取り調査が行なわれます。

5)一次判定

コンピュータ判定を行ない、要介護認定等基準時間の推計を実施します。

6)二次判定

自治体に設置された介護認定審査会で最終的な審議が行なわれ、区分を決定します。

7)認定結果の通知

原則として、申請日から30日以内に認定し、結果が通知されます。

区分変更の申請にあたって必要なものとは

上の表の(2)において、市区町村窓口に区分変更を申請する際、提出や提示を求められる書類は次のとおりです。
  • 介護保険被保険者証
  • 医療保険被保険者証
  • 要介護認定変更申請書
  • 申請者の本人確認書類
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカードで本人確認書類と兼ねても可)
介護を受ける本人による申請が難しい場合、家族やケアマネージャーによる代理申請も可能です。代理申請するときは委任状、印鑑、代理人の身元確認書類なども併せて提示する必要があります。

入院中でも区分変更申請は可能

入院により本人の心身状態に大きな変化があった場合も区分変更申請が可能です。ただし、認定調査に応じられる身体状態であることが条件となります。

介護保険と医療保険の併用は原則として認められないため、長期入院が見込まれる時点で申請しても認定期間を消費するだけになりかねません。申請から30日以内に結果が出ることから逆算して、退院の1カ月程度前に申請手続きをするとよいでしょう。

介護の区分変更申請による2つのメリット

区分変更を行なうことによるメリットとして次の2点が挙げられます。

(1)使える介護サービスの選択肢が増える

1つ目のメリットは、利用できる介護サービスの選択肢が増えることです。介護サービスのなかには要介護度が高くないと使えないものがあります。

特に影響が大きいのは介護施設の入所に関するサービスです。特別養護老人ホームは原則要介護3以上、グループホームは要支援2以上など、施設の種類ごとに必要な要介護度が定められている場合があります。また、要介護度の高い方ほど特別養護老人ホームの入居優先度も上がる傾向です。

このように区分変更により要介護度を見直すことで、選べるサービスメニューが増える可能性がある点は大きなメリットです。

(2)区分支給限度基準額がアップする

介護保険では、要介護度によって使えるサービスの「単位」の上限が決まっています。これを区分支給限度基準額と呼びます。要介護度が高くなれば区分支給限度基準額も高くなり、1カ月で使える介護サービスの量も増えるという点が2つ目のメリットです。

なお、区分支給限度基準額を超えた分は保険適用外となるため、万が一超過してしまうと負担が増えてしまいます。

区分変更を検討するにあたっての注意点

要介護度の区分変更を検討する場合に注意すべきポイントが3点あります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

区分変更の必要性には十分な検討が必要

区分変更で要介護度が上がると、デイサービスやショートステイなどのサービス費用は高くなります。しっかりと検討せず区分を変更してしまうと、むしろ費用負担が増えてしまうリスクもあるのです。

区分変更の申請前にあらかじめケアマネージャーに相談し、本当に申請すべきか十分に検討しましょう。

認定調査ではありのままを正確に伝える

認定調査ではありのままの状況を調査員に伝えることで、本人にとって最適な要介護認定を受けられる可能性が高まります。本人になるべくありのままを伝えてもらうのはもちろん、普段の様子を知る家族も同席して正確に状況を伝えましょう。

現状と異なる内容が伝わってしまうと、実態に不適正な認定結果になる場合もあります。
被介護者本人の前で話すことが難しい場合などは、必要事項や困りごとをまとめて記したメモを認定調査員に渡すのも有効です。

区分変更による認定の有効期間は短い

認定の更新期間に合わせて更新する場合、更新後の有効期間は原則12カ月です。一方、区分変更による認定有効期間は原則6カ月、最大でも12カ月程度と短めに設定されている点も注意しましょう。

区分変更は本人の心身状態の変化があった際に行なうものであり、こまめに変化を確認する必要があるため、期間が短く設定されているのです。

適切な区分で認定を受けて介護の負担を減らそう


要介護認定の区分変更とは、更新時期を迎える前に認定区分の変更を行なうことを指します。要介護度が実態と合っていないように感じているなら、区分変更で負担を減らせるかもしれません。

要介護度が上がれば、介護サービスの選択肢や利用できる量が増える点はメリットといえます。ただし、メリットありきで考えるのではなく、現状を正しく認定調査員に伝えて、本人にとって最適な要介護認定を受けることが重要です。

現状はまだ介護サービスを受けていない方でも、将来の介護費用負担に備えて、民間の介護保険への加入を検討してもよいでしょう。

 
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年1月26日

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