介護保険の保険者とは?
介護保険制度のしくみと保険者の役割


公的介護保険の保険者とは誰なのか、どのような役割を担っているのかわからない方は少なくないでしょう。公的介護保険の保険者は公的介護保険制度を運営している全国の市町村や特別区などで、保険料の徴収や介護サービスの給付などの役割を担います。

転居などによって保険者が変更になったときには、一定の手続きが必要です。引き続き介護サービスを受けるためにも、保険者変更時の対応についても把握しておきましょう。

本記事では公的介護保険の制度のしくみや保険者・被保険者の概要、保険者の役割、保険者が変更になるケースと変更時の注意点について詳しく解説します。

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介護保険の保険者と被保険者とは

まずは、公的介護保険の制度について、保険者と被保険者は誰を指すのかについて見ていきましょう。

介護保険制度のしくみ

公的介護保険は社会全体で介護が必要となった方を支えるための社会保険制度であり、被保険者、保険者、介護サービス事業者の3者で構成されています。要介護・要支援認定を受けた被保険者は、原則1割(所得の多い方は2割または3割)の自己負担額で公的介護保険の介護サービスを受けられます。なぜなら、保険者が残りの費用を負担しているためです。

介護サービスを提供した介護サービス事業者は、保険者に介護サービス費用の請求を行い、被保険者が負担した分を差し引いた費用を保険者から受け取るしくみとなっています。

介護保険の保険者

公的介護保険の保険者とは、公的介護保険制度の運営を行っている全国の市町村ならびに特別区(東京23区)、広域連合を設置している場合は広域連合です
広域連合とは、介護保険事業を効率良く行うために組織された複数の自治体による特別地方公共団体です。広域にわたり処理することが適切であると認められた事務について、広域計画の作成後、総合的および計画的に広域行政を進めることが可能な制度です。

保険者は、その地域に住む公的介護保険の加入者(被保険者)から納付された保険料と公費を財源とし、被保険者に介護が必要となった場合に介護サービスの給付を行います。

介護保険の被保険者

公的介護保険の被保険者は、各市町村に住所がある40歳以上の住民です。年齢により、65歳以上の方は第1号被保険者、40歳~64歳までの医療保険加入者(全国健康保険協会、健康保険組合、市町村国保など)は第2号被保険者の2つに分類され、毎月介護保険料を納めます。

第1号被保険者は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。第2号被保険者は、加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。

第1号被保険者の介護保険料は所得や課税の有無、生活保護の受給状況などによって決まり、原則年金から天引きで徴収されます。

一方、第2号被保険者の介護保険料は社会保険と国民健康保険のどちらに加入しているかによって算出方法が異なる点が特徴です。それぞれ定められている項目や掛け率などによって算出された保険料から労使折半で1/2になった額が、医療保険料と一緒に徴収されます。

以下記事では被保険者が利用できるサービスや保険料など、公的介護保険制度についてさらに詳しく解説しています。

保険者のおもな役割は4つ

公的介護保険の保険者には、さまざまな役割があります。ここでは、保険者のおもな役割を4つ解説します。

介護保険加入者の資格管理

保険者の役割の一つに、公的介護保険加入者の資格管理があります。これは、公的介護保険に加入している人たち一人ひとりの台帳を作成したり、必要に応じて被保険者証の発行や更新を行ったりすることです。

公的介護保険では、原則として被保険者の住民票のある市区町村が保険者になります。ただし、被保険者が施設への入所にともない別の市区町村に住民票を移したとしても、元の自治体が引き続き保険者として介護保険の給付や保険料の徴収を行います(住所地特例)。
この住所地特例制度の管理も、保険者が担う役割の一つです。

介護保険料の徴収

第1号被保険者の介護保険料の徴収にかかわる事務も、保険者が行います。具体的には、第1号被保険者(65歳以上の人)の介護保険料率を決定し、被保険者ごとに定められた保険料を徴収します
第1号被保険者の介護保険料は、市区町村ごとの条例で定められた基準額をもとに、被保険者本人や世帯の所得などにより段階的に設定されます。
第1号被保険者の介護保険料は、原則、年金からの天引きです(特別徴収)。ただし、年金額が18万円未満の方などは、口座振替または納付書により徴収します(普通徴収)。

要介護・要支援認定、保険給付

要介護・要支援認定にかかわる事務や審査を行い、被保険者の要介護度を判定することも保険者の役割です。要介護認定の申請受付から保険給付まで、下記の流れで行います。

① 要介護認定申請の受付

被保険者から要介護認定の申請を受け付けます。

② 認定調査

被保険者の状態が介護保険の給付対象となるか、どの程度の介護を必要としているのかを判定します。

(一次判定)
被保険者本人や家族への聞き取り、主治医が作成した意見書などをもとに情報をコンピュータに入力し、算出された要介護認定等基準時間から要介護度を判定します。

(二次判定)
要介護・要支援レベルを公平かつ公正に審査・判定するため、各市区町村が設置している保健医療福祉の学識経験者で構成された「介護認定審査会」において二次判定が実施されます。

③ 認定

二次判定により要介護度が決まったら、結果通知書と介護保険被保険者証を被保険者宅へ郵送します。

要介護認定を受けた被保険者が介護サービス事業者の介護サービスを利用した際、保険者は被保険者の自己負担分を除く費用を介護サービス事業者へ支払います。

地域支援事業の実施

保険者は、地域支援事業の実施などにも携わっています。地域支援事業は、要支援または要介護になるおそれのある方を対象に、自治体が行う介護予防のためのサービスです。

また、地域に住む高齢者の生活を安定させるための支援を行ったり、相談を受けたりする「地域包括支援センター」の設置と運営をします。

ほかにも、認知症高齢者グループホームや、地域密着型特定施設入居者生活介護などといった「地域密着型サービス」についても、保険者が指定と指導監督を行っています。なお、市区町村単位で提供されている地域密着型サービスは、原則としてその自治体に住民票がある方が利用可能です。

保険者が変更になるケースと変更時の注意点

公的介護保険の被保険者が、ほかの市区町村へ転居するなどといった理由により、保険者が変更となるケースがあります。

その際、被保険者が要介護・要支援認定を受けていて、自治体をまたいで引っ越す場合には、原則として転居先の自治体であらためて認定を受けなければなりません。ただし、転入日から14日以内に手続きをすれば、転居前に受けていた介護サービスを同じように続けて受けられます。

要介護・要支援認定を受けていない場合であっても、引越しにともない保険者が変更になると、それまでの介護保険被保険者証は使えなくなります。転出元では介護保険被保険者証を返納するとともに、介護保険被保険者資格喪失届を提出しましょう。また、転入先に転入届を提出すると、新しい介護保険被保険者証が発行されます。

先述の通り、地域密着型サービスは住民票のある市区町村の住民が対象です。転居により該当の市区町村の住民ではなくなると、以前住んでいた場所での地域密着型サービスは受けられなくなるので、転居先に同様のサービスがあるか確認しておくとよいでしょう。

以下記事では、引越しで住所が変わる場合の介護保険の手続き方法や注意点について紹介しています。

介護保険のしくみ・保険者について理解しよう


介護保険制度は保険者、被保険者、介護サービス事業者の3者で構成された、介護が必要となった方を社会全体で支えるための制度です。

保険者は公的介護保険制度の運営を行っている市町村および特別区(東京23区)や広域連合のことで、被保険者は各市町村に住民票がある65歳以上の第1号被保険者、40歳~64歳の第2号被保険者に分類されます。

保険者のおもな役割には、公的介護保険加入者の資格管理や保険料の徴収などがあります。ほかの市区町村への転居などにより保険者が変更となったときには、14日以内に手続きを行うと要介護認定を引き継げる点を覚えておくとよいでしょう。

 
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CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2024年12月20日

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