介護保険料の支払いはいつから?
支払方法や介護サービス適用条件


介護保険制度は、介護を社会全体で支えることを目的とする制度です。
介護保険料は、公的介護保険の被保険者が負担します。自分や家族の介護について考えている方のなかには「介護保険料の支払開始時期や、支払方法は?」「介護サービスは何歳から受けられる?」といった、疑問を持つ方もいるかもしれません。

介護保険料は「40歳の誕生日の前日を含む月」から支払いが始まり、生涯にわたって納める義務があります。介護保険料は、自身が介護サービスを利用する際に困ることがないよう、きちんと納め続けることが大切です。

今回は、介護保険料の支払開始時期や支払方法、介護サービスの適用年齢、条件について解説します。

介護保険料の支払い開始時期は?

まずは、介護保険料の支払い開始時期や、支払いが減額・免除されるケースについて解説します。

介護保険料は「40歳に達した月」から生涯にわたり支払う

介護保険料は「40歳に達した月」から徴収が始まり、支払いは生涯にわたって続きます。「40歳に達した月」とは、公的介護保険の第2号被保険者の資格取得日である「40歳の誕生日の前日」を含む月のことです。

  • 誕生日が8月1日の場合:資格取得日は7月31日となり、7月分から介護保険料が徴収される
  • 誕生日が8月2日の場合:資格取得日は8月1日となり、8月分から介護保険料が徴収される
このように、介護保険料は40歳の誕生日の前日を含む月から徴収が始まります。

介護保険料の支払いが減額・免除されるケース

介護保険料は、原則40歳以上のすべての方に支払義務があります。ただし、心身に重大な障害を受けたり、収入が大きく減少したりなど一定の条件を満たし、市町村に認められた場合は、減額や免除の措置を受けることが可能です。

介護保険料の支払方法は?

次に、公的介護保険制度の「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の違いを解説します。それぞれの介護保険料の支払方法や算出方法についても見ていきましょう。

公的介護保険制度には「第1号被保険者」と「第2号被保険者」がある

公的介護保険制度には、第1号被保険者と第2号被保険者の2つがあり、65歳以上の方は第1号被保険者、40歳~64歳の方は第2号被保険者に該当します。それぞれの違いは、以下のとおりです。

 

1号被保険者(65歳以上)

2号被保険者(40歳~64歳)

対象者

65歳以上の方

40歳~64歳で、おもに下記の医療保険加入者

l  健康保険組合

l  全国健康保険協会

l  国民健康保険

受給要件

要介護状態または要支援状態

要介護状態または要支援状態が老化に起因する特定疾病の場合

保険料の徴収方法

l  65歳になった月から徴収開始

l  市町村と特別区が徴収し、原則年金からの天引き

l  40歳になった月から徴収開始

l  医療保険料と一体的に徴収

 

第1号被保険者(65歳以上)の場合

第1号被保険者の資格認定日は、40歳のときと同様に「65歳の誕生日の前日」です。そのため、65歳の誕生日の前日を含む月から「第1号被保険者」としての徴収が始まります。

第1号被保険者の介護保険料は、市町村と特別区が徴収し、原則年金からの天引きです。ただし、年金受給額が年18万円未満の場合は、口座振替や納付書にて納付しなければなりません。

介護保険料は、各自治体が条例で定めた「基準額」をもとに、本人や世帯の所得に応じて設定されています。

第2号被保険者(40歳~64歳)の場合

健康保険組合や全国健康保険協会に加入している方の介護保険料は、医療保険料とあわせて徴収されます。介護保険料は、被保険者の標準報酬月額をもとに算出され、負担割合は原則、勤務先の事業者と被保険者とで2分の1ずつです。

一方、国民健康保険に加入している方の介護保険料は、国民健康保険の保険料とあわせて徴収されます。介護保険料は、被保険者の前年の所得額や世帯の被保険者数、資産額などによって異なり、納税義務者は世帯主です。

介護保険料を滞納するとどうなる?

介護保険料には、納付期限が定められています。ここからは、介護保険料を滞納した場合の措置について解説します。

納付期限から1年未満の場合

介護保険料の納付期限から20日以内に督促状が発送されます。この際、延滞金や督促手数料が加算されることがあります。

1年以上滞納の場合

介護保険料を1年以上滞納したうえで介護サービスを利用した場合、介護サービス費はいったん全額自己負担しなければなりません。後日、給付の申請をすると、本来の自己負担額を除く費用が払い戻されます。

1年6カ月以上滞納の場合

介護保険料の滞納期間が1年6カ月以上の場合は、1年以上滞納の場合と同様に、介護サービスを利用した際の介護サービス費はいったん全額自己負担になります。

ただし、給付の申請をしたとしても、保険給付費の一部または全額が一時的に差し止められます。さらに滞納が続く場合、差し止めた保険給付費から介護保険料に充てる場合があります。

2年以上滞納の場合

介護保険料を2年以上滞納すると、「未納」と見なされます。本来の介護サービス費の自己負担割合は1割~3割ですが、未納と判断されると、自己負担割合は3割~4割に引き上げられます。 2年以上の滞納では、特定入所者介護サービス費や高額介護サービス費が利用できなくなることも考慮しなければなりません。

公的介護保険の適用はいつから?

ここからは、公的介護保険が適用になる時期や条件について解説します。

第1号被保険者(65歳以上)は「要支援・要介護認定を受けたあと」

介護サービスの必要性を感じたら、まずは市区町村や地域包括支援センターなどの窓口に「要介護(要支援)認定」の申請をしましょう。

介護認定には、要支援は1~2、要介護は1~5の7つの段階があり、要介護(要支援)の認定を受けると、施設の介護支援専門員がケアプランを作成し、要介護度に応じた介護サービスを受けられるようになります。第1号被保険者の介護サービスの利用では、要支援や要介護の要因は問われません。

第2号被保険者(40歳~64歳)は「要件を満たす方のみ」

第2号被保険者の介護サービスの利用は、要支援・要介護状態の原因が、老化に起因する16種類の特定疾病に該当する場合に限られます。16種類の特定疾病は、次のとおりです。

1. がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
2. 関節リウマチ
3. 筋萎縮性側索硬化症
4. 後縦靱帯骨化症
5. 骨折をともなう骨粗鬆症
6. 初老期における認知症
7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
8. 脊髄小脳変性症
9. 脊柱管狭窄症
10. 早老症
11. 多系統萎縮症
12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
13. 脳血管疾患
14. 閉塞性動脈硬化症
15. 慢性閉塞性肺疾患
16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形をともなう変形性関節症
第2号被保険者が病気を患ったとしても、上記の特定疾病に該当しない場合は介護サービスを受けることはできません。

公的介護保険だけで介護費用は賄える?

最後に、公的介護保険だけで介護費用が賄えるのかと、民間の介護保険の特徴について解説します。

介護サービスには支給限度額がある

第1号被保険者(65歳以上)の介護サービスの自己負担割合は1割~3割です。第2号被保険者(40 歳以上 65 歳未満の方)、市区町村民税非課税の方、生活保護受給者は上記にかかわらず1割負担となります。

自己負担割合は、本人の合計所得金額や、単身世帯または2人以上の世帯の年金収入とその他の所得金額の合計額によって異なります。

介護サービスは、要支援・要介護の度合いに応じて支給限度額が定められ、介護サービス費の利用限度額を超えた分は、全額自己負担しなければなりません。よって、公的介護保険だけで介護費用をすべて賄うのは難しい場合があります。

なお、所得の低い方や、1カ月の介護サービスの利用料が高額になった方は、「高額介護サービス費」や、1年間に公的医療保険・介護保険の双方で高額の自己負担が生じた場合に定められた限度額を超過した分が支給される「高額医療・高額介護合算制度」などの負担軽減措置が適用されます。

介護施設なら介護サービス以外の自己負担額も考慮

介護施設を利用する場合、居住費・食費・日常生活費を自己負担する必要があります。家族に介護施設を利用する方がいる場合は、家族と介護施設の生活費が二重にかかることが想定されるでしょう。

介護期間の長期化や、要介護の度合いが進むと、自己負担額やその他の費用負担が大きくなると考えられます。

民間の介護保険2つの特徴

公的介護保険制度や、所有している資産からの介護費用の捻出が難しい場合は、民間の介護保険を検討しましょう。民間の介護保険には、公的介護保険制度にはない以下のような特徴があります。

● 現金で給付を受けられる
● 給付金の使い道は自由

公的介護保険は現物給付ですが、民間の介護保険は現金給付かつ使用使途も問われません。公的介護保険だけでは賄えない介護費用の補てんになるため、安心が増すでしょう。

介護保険料はきちんと納付することが大切


介護保険料は「40歳の誕生日前日を含む月」から支払いが始まり、生涯にわたり払い続けるものです。支払方法や保険料は、被保険者の年齢や所得などの条件によって異なります。

将来介護が必要になった際に、介護費用について困ることがないよう、介護保険料はきちんと納め続けることが大切です。公的介護保険だけでは介護費用を補うのに不安がある場合は、民間の介護保険を検討しましょう。

 

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CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2023年8月9日

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