認知症の方が入所できる介護施設の費用は?
相場・支援制度・選ぶ際のポイント


認知症の進行により介護施設への入所を検討しているものの、どれくらいの費用が必要なのかわからず、利用をためらっている方もいるのではないでしょうか。

認知症対応の介護施設に入所する場合、毎月の家賃相当額や食費、介護サービス費など、さまざまな費用がかかります。

費用の支払いでご本人やご家族に大きな負担がかからないようにするためにも、どれくらいの備えが必要かを事前に確認しておくことが大切です。

この記事では、施設ごとの費用相場や費用の内訳、支援制度、施設を選ぶ際のポイントなどを解説します。

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認知症の方が入所できる介護施設の種類と特徴

 
まずは、認知症の方が入所できる介護施設と、施設ごとの特徴について確認しておきましょう。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

グループホームとは、認知症の高齢者が5~9人程度の少人数単位で共同生活を送る施設のことです。地域密着型サービスとして位置づけられており、自宅に近い雰囲気のなかで日々の生活を送れます。

専門の介護スタッフが24時間体制で生活を支援しており、掃除や洗濯、料理などの日常的な活動を通じて、認知症の進行を緩やかにする工夫がなされているのが特徴の一つです。

入居対象は、65歳以上の要支援2または要介護1以上の認知症の方で、施設がある市区町村にお住まいの方です。

特別養護老人ホーム(特養)

特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の認定を受けている高齢者が利用できる公的施設です。公的施設のため、比較的低コストで利用できます。

介護スタッフや生活相談員が常駐しており、日常生活のサポート体制は万全です。
生活全般の支援が中心のため、受けられる医療ケアには限りがあるでしょう。

入所待機者が多い施設もあるため、利用を検討する際は事前の情報収集と早めの申請が推奨されます。

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設は、医療と介護の中間に位置づけられた施設です。認知症の方も利用可能であり、在宅復帰を目指すことを目的としています。

医師、看護師が常駐し、リハビリ専門職も配置されているため、医療ケアやリハビリテーションの提供などを受けることが可能です。

入所期間はおおむね3~6カ月の短期が想定されており、自宅やほかの施設へ移る前の準備期間や、症状が悪化した際の一時的な受け入れ先としても活用されています。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー設計の賃貸住宅に、安否確認や生活相談などのサービスが付随する住まいです。

おもに民間事業者によって運営されており、法で決められている入居条件のほか、施設ごとに異なる入居条件があります。認知症の方の受け入れ可否やサポート体制は、事前確認が必要です。

サ高住には一般型と介護型があり、一般型で介護サービスを受けたい場合は外部のデイケアサービスや訪問介護サービスを利用します。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは、民間事業者が運営する介護サービス付きの高齢者向け施設です。

介護スタッフが24時間常駐しており、日常生活全般のサポートが受けられるほか、認知症の方への対応力も高い点が特徴です。

医療機関との連携体制が整っている施設は多いものの、健康管理やリハビリなどの充実度は施設ごとに異なります。申し込みをする際には事前に施設で受けられるサービス内容を確認しておくとよいでしょう。

介護医療院

介護医療院は、長期的な療養と生活支援を同時に提供する医療対応型の介護施設です。

医師や看護師が常駐し、慢性的な疾患を抱える方や重度の認知症をともなう高齢者が、医療ケアを受けながら過ごせる環境が整っています。

終末期医療にも対応可能なため、医療ニーズの高い方にとっては重要な選択肢となります。日常的な介護だけでなく、継続的な健康管理や看取りケアが求められる方にも適しているでしょう。

施設ごとの入居費用相場と内訳

介護施設を利用する際の費用相場は、施設の立地や設備、提供サービスの内容などに左右されるため、事前に比較・検討することが大切です。

ここでは、代表的な施設ごとの費用目安と、月額費用に含まれるおもな内訳を紹介します。

施設別の費用相場の目安

介護施設を利用するにあたって必要な初期費用や月額費用の目安は、以下のとおりです。

施設

初期費用の目安

月額費用の目安

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

0100万円

10万~18万円前後

特別養護老人ホーム(特養)

不要

5万~15万円前後

介護老人保健施設(老健)

不要

8万~15万円前後

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

0100万円

10万~30万円前後

介護付き有料老人ホーム

0~数億円

15万~40万円前後

介護医療院

不要

8万~20万円前後

費用相場は、地域や施設グレード、個室・多床室の違いによって変動します。特にサービス付き高齢者向け住宅や介護付き有料老人ホームは、施設によって価格帯が大きく異なるでしょう。

月額費用のおもな内訳

月額費用には以下のような項目が含まれており、それぞれの金額は施設によって異なります。

<家賃相当額>
民間施設では施設ごとに設定が異なり、個室か多床室かによっても差が出ます。公的施設は比較的安価で、多床室になるとさらに割安になるでしょう。

<食費>
公的施設では所得や資産によって食費が前後します。目安としては1日3食で月1万~5万円程度です。民間施設の場合は施設によってさまざまで、通常の食事以外におやつなどがある場合は追加費用が発生することもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

<管理費・共益費>
共用部の維持費や光熱費、スタッフの配置費などに充てられる費用です。

<介護サービス費>
公的介護サービスの利用金額の1~3割が自己負担です。利用できる上限を超えた分は全額自己負担となります。
なお、要介護度により利用できる上限は異なります。

<医療費や日用品費>
通院や薬代、日用品購入などは実費で別途必要です。

支払い方法による費用の違い

支払い方法は、以下の2つから選べます。施設によって支払い方法が異なるため、初期費用と月額費用のバランスを考慮して選ぶことが重要です。

<前払い>
一括、または一部を前払いする方法です。一度に多額が必要となりますが、一括の場合は追加費用の心配がほとんどなく、一部前払いでは月払いに比べて月額料金が安くなりやすいというメリットがあります。

<月払い>
初期費用を抑えられる反面、月額費用は高めに設定されることが多く、また、施設の月額利用料が上がった場合はそれに応じて負担が増えることになります。

費用に大きく影響する3つの要素

施設によって費用が異なるのはなぜなのでしょうか。ここでは、費用に大きく影響する3つの要素について解説します。

要介護度と認知症の進行状況による加算

入居者の要介護度が高いほど、施設で利用するサービスの量は多くなり、求められる品質も高まります。そのため、介護サービス費用の上昇は避けられません。

例えば、要介護5の方では日常生活のすべてに支援が必要となり、それにともなう人件費やケア体制の強化が費用に反映されます。

また、認知症の症状が進行している場合には、「認知症専門ケア加算」や「医療連携体制加算」といった制度が適用され、月額費用が加算されることもあるのです。

これらの加算に対しては公的介護保険が適用され、自己負担割合は1~3割の範囲で設定されています。

立地(都市部・地方)による費用差

介護施設がある地域によっても費用差が生じます。

一般に、都市部では立地環境やスタッフの人件費が高いため、施設運営にかかるコストも増加し、それが利用者の負担額に反映されます。

一方で、地方にある施設では、土地代や運営コストが抑えられているため、費用も比較的低く設定されています。

ただし、地方では施設数が限られているなど選択肢が充実していないこともあるため、費用の安さだけで判断するのではなく、全体のバランスを見て検討することが重要です。

設備やサービスの充実度

施設に備えられている設備や、提供されるサービスの内容も、費用に大きな影響を与える要素です。

例えば、最新のリハビリ機器を導入していたり、理学療法士などの専門職が常駐していたりする施設では、設備の維持費や人件費の高さから費用も上昇しやすくなります。

さらに、24時間体制で看護を受けられる施設では、医療面でのサポートが手厚い反面、月額費用に反映されるケースも多いでしょう。

加えて、理美容サービス、日常のレクリエーション活動など付加サービスを導入している施設では、それらにかかる追加料金が月額費用に加算されることがあります。

費用を抑えるために知っておきたい公的支援制度

 
認知症の方が介護施設を利用する際には、月々の費用負担が大きな課題となることがあります。

そのようなときには、公的支援制度を上手に活用することで、経済的な負担を軽減することが可能です。

高額介護サービス費制度

「高額介護サービス費制度」は、介護サービスの自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。上限額は世帯の所得によって異なり、低所得の方ほど上限金額が低く設定されています。

利用には申請が必要ですが、一度申請を行えば2回目以降は自動的に対象月分の払い戻しが登録した口座に振り込まれるため、再度申請する必要はありません。

地方自治体による助成金や減免制度

各自治体では、独自の助成金制度や費用の減免制度を設けている場合があります。例えば、対象の介護サービス利用時に負担額の一部を助成したり、介護施設にてユニット型個室の居住費の一部を助成したりといった制度が挙げられます。

こうした支援制度は、自治体によって内容や利用条件が異なるため、事前に役所や地域包括支援センターで確認しておくことが大切です。

特定入所者介護サービス費制度

低所得の高齢者が介護施設に入所する際に、食費や居住費を軽減するための支援制度です。

制度の利用には要介護認定を受けていること、かつ世帯全員が住民税非課税、本人の預貯金額が一定額以下であることなどが前提となります。

高額医療・高額介護合算療養費制度

「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、各医療保険上の世帯内で1年間に支払った公的医療保険と公的介護保険にそれぞれ自己負担があり、その合計額が一定の上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。

こちらも所得に応じた上限額が設けられており、申請の際には「自己負担額証明書」の取得と所定の申請書類の提出が必要です。

公的施設と民間施設の違い

認知症の方が利用できる介護施設には、公的施設と民間施設の2種類があります。入居を検討する際には、それぞれの特徴やメリット・デメリットへの理解を深め、目的や状況に応じて選ぶことが大切です。

月額費用と初期費用の違い

特養や老健といった公的施設は、初期費用がほとんど不要で、月額費用も比較的低額に抑えられています。

一方で、介護付き有料老人ホームなどの民間施設では、数百万円前後の初期費用が必要となるケースがあり、月額費用も高めに設定されているのが一般的です。

さらに、入居後に公的介護保険対象外のサービスなどを追加した場合には、その分の費用が別途発生するため、総費用は膨らみやすい傾向にあります。一方、公的施設よりも民間施設のほうがサービスは充実している場合が多いでしょう。

入居条件や待機期間の特徴

公的施設への入居は、原則として要介護度が高い方が優先されるケースが多く、特別養護老人ホームの場合は要介護1や2の方は特別な許可が必要となることもあります。

また、入居希望者が多く、数カ月から1年程度の待機期間が必要となるケースも珍しくありません。

これに対して、民間施設では要支援の段階から受け入れ可能なところも多く、即入居できるケースもあるなど、柔軟な対応が可能です。

どちらを選ぶべきか?判断基準のヒント

経済的な負担をできるだけ抑えたい場合は、公的施設が適していますが、入居までの待機期間や入居条件に制限がある点を考慮する必要があります。

一方、認知症の進行に合わせた専門的なケアや、個別性の高いサービス、快適な居住環境を求めるのであれば、民間施設が適しているでしょう。

認知症の方が入所する施設を選ぶ際のポイント

多数存在する介護施設のなかから、入所する施設をどのように選べば良いのでしょうか。ここでは、施設選びで重視したい3つのポイントをご紹介します。

スタッフの認知症に対する理解や対応を確かめる

まず重要なのは、スタッフが認知症に関する専門的な知識を持ち、適切に対応できる体制が整っているかどうかです。

例えば、認知症ケアの研修を定期的に受けているか、専門職が常駐しているかなどを確認するとよいでしょう。

また、スタッフの入居者に対する対応や家族への報告体制についても確認しておくと安心です。

過去の退去事例を確認する

過去に退去した方の退去理由も確認しておきましょう。利用者とのトラブルやクレームだった場合には、どのような事例だったのかを事前に確認しておくとより安心です。

また、認知症の場合、問題行動によるトラブルが起こった際にどのような対処がなされていたか確認することも大切です。強制退去のような措置が取られていたかどうかは重要な判断材料になります。

また、長期にわたって入居している方が多い施設は、居住者にとって過ごしやすい環境である可能性が高く、施設の運営が安定している証しともいえるでしょう。

入居する認知症の方と一緒に見学する

実際に施設を見学する際は、本人と一緒に訪問し、施設の雰囲気や生活空間を直接体感することで、本人の表情や反応を通して居心地の良さを確認できます。

また、スタッフとのやり取りもチェックできるため、相性の判断もしやすくなるでしょう。

認知症対応施設のQ&A

以下では、介護施設の利用に関する質問にお答えします。

途中で施設を変えることはできる?

途中退所は可能ですが、退去時には解約手続きや費用精算が必要となります。

また、施設によっては初期費用(入居一時金)が返金されない場合もあるため、契約前に解約条件をしっかり確認しておくことが重要です。

転居を検討する際には、あらかじめ転居先の受け入れ可否や必要書類、入所条件なども確認しておくとスムーズでしょう。

費用が支払えなくなった場合は?

費用の支払いが厳しくなった際には、まずは自治体の福祉課や担当ケアマネジャーに相談しましょう。

状況によっては、生活保護制度の対象になる可能性があります。この制度を活用することで、生活を継続できる場合もあります。

ただし、費用の滞納が長く続くと、最悪の場合は退去を求められる可能性もあるため、経済的な不安がある場合は早めに専門機関に相談し、支援策を検討することが大切です。

事前に認知症の方が入所できる施設と費用感を知り、負担に備えておこう


認知症の方が入所できる介護施設としては、グループホームや特養、老健、サ高住、有料老人ホーム、介護医療院などが挙げられます。

入所にかかる費用は施設によって異なるため、どのような費用がどれくらいかかるのかを事前に確認しておくことが大切です。

入所する際には、まとまった資金が必要になることもあるため、事前に備えておく手段として民間の介護保険や認知症保険も検討すると安心でしょう。

 
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社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年8月7日

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