厚生労働省では、認知症の方の「尊厳の保持」を認知症ケアの基本的な考え方として挙げています。認知症になっても尊厳や個性、それぞれの思いがあり、その人らしい生活を送れるように支えることが大切です。
認知症の方へのケアと聞くと、食事や入浴といった身体的なサポートを思い浮かべるかもしれません。しかし、その人らしく安心して暮らしてもらうためにも、心のケアも含めた幅広いサポートが大切とされています。
なぜ認知症ケアが必要?
また、脳の働きの低下により、感情のコントロールも難しくなります。そのため、周囲から見るとちょっとしたことでも、感情的になって怒ったり泣いたりしてしまいます。
家族などの介護者にこういった認知症の理解が不足していると、無理に行動を抑制しようとしたり、怒ってしまったりと不適切な対応につながります。また、どう対応すればよいのかわからず、精神的な負担にもなりかねません。
そのため、介護者の負担を軽くするためには、認知症への理解を深め、適切な認知症ケアを行なうことが大切です。また、適切なケアの実現は、認知症の方が自身の不調や不安、ストレスなどに起因して暴言や暴力に及んだり、本来の元気がなくなったりする認知症の周辺症状(BPSD)の軽減にもつながるとされています。
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認知症ケアの基本的な方法
この章では、認知症ケアの基本的な方法を解説します。基本となるケアの方法を理解して、認知症の方と接する際には心がけるようにしましょう。
患者のペースに合わせて見守る
見守る際には、動作がたとえゆっくりしていても急かさないようにします。認知症の方はペースを乱されると興奮しやすいため、本人のペースで進められるようにゆっくりと見守りましょう。
失敗や間違いを責めない
失敗や間違った言動は、認知症の症状による機能の衰えが原因のこともあれば、理由があってのことの場合もあります。怒ったり子ども扱いしたりせずに本人の話にしっかりと耳を傾け、相手を尊重するかかわり方を心がけましょう。
わかりやく、簡潔に話す
そのため、話すときはまず相手の視野に入り、ゆっくりと、理解しやすい言葉で話すようにしましょう。また、一度に複数の用件を伝えることは避け、一つひとつのことを簡潔に伝えるようにします。
スキンシップを頻繁に取る
ただし、触られることを嫌がる場合には、無理をせずこまめに声をかけるといった、認知症の方が孤独を感じないようにする工夫も大切です。