認知症の独り言の特徴と原因
止まらないときの対処法は?


独り言は認知症の方によくある行動の一つです。誰もいないのに誰かと会話している、独り言をたびたび繰り返すなど、健常者の独り言とは異なる部分があるため周囲がとまどうケースも多いでしょう。

認知症の方の独り言にはいくつかの原因があり、周囲は理解をもって対処することが大切です。

本記事では、認知症の方の独り言の特徴や原因、周囲はどう対応すれば良いか解説します。認知症への理解を深め、認知症の方とより良い関係を築くためにお役立てください。

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認知症の独り言にはどのような特徴がある?

独り言は健常者にも見られる行動ですが、認知症における独り言にはいくつか健常者とは異なる特徴があります。ここでは、認知症の独り言のおもな特徴を紹介します。

意味のない言葉を羅列する

認知症の方は時折、意味をなさない言葉や単語を延々と羅列することがあります。このような言葉は通常、日常のコミュニケーションには何の意味も持たず、周囲の人々に戸惑いを与えるかもしれません。言葉の羅列が朝から晩まで続くことがある点も、認知症の方の独り言に見られる特徴の一つといえます。

夜間になると増える

認知症の方の独り言は、夜になると出現しやすい傾向にあります。日中は比較的静かに過ごしている方が、夜になるとぶつぶつと何かを言い続ける様子を見せるのです。

夜間は周囲が静かなため、ささいな物音でも気になる方は少なくないでしょう。そのため、夜間に独り言が聞こえてしまうと、ほかの家族も気になって眠れなくなることがあります。

誰かとの会話のような独り言

認知症では、誰かと話しているような独り言を発するケースがあります。周囲には誰もいないのにもかかわらず、実際に誰かと対話しているように振る舞う様子は、認知症における独り言の特徴の一つです。

例えば、誰もいないのに「何をしているの?」といった問いかけをする場合があります。

頻繁にものを探しながら独り言を言う

認知症の方は、ものを探しながら独り言を繰り返すことがあります。

これは健常者にもよく見られる行動で、1日に1~2回程度であれば認知症によるものとはいえないでしょう。しかし、1日に何度も独り言を言う場合は、軽度認知障害(認知症の前段階)の可能性があるかもしれません。

独り言が出るおもな原因

独り言は、認知症で一般的に見られる症状の一つです。これは脳の変化により引き起こされるもので、いくつかの原因が存在します。以下では、その主要な原因について説明します。

レビー小体型認知症

認知症には「アルツハイマー認知症」をはじめ、いくつかの種類が存在します。そのなかでも「レビー小体型認知症」という認知症では、幻視の症状によって、いるはずのない人物などが見えることがあります。

これにより、実際には周囲に誰もいないのにもかかわらず対話しているかのように振る舞い、周囲からは独り言として見られることがあるのです。

せん妄

せん妄とは、身体に負担がかかったときに生じる意識の混乱です。一般に、認知症を発症した高齢の方はせん妄が生じやすいとされております。また、脱水や感染症など、身体的な問題が原因となって現れることもあります。

せん妄の症状の一つとしてあるのが、つじつまの合わないことを話すことです。特に夜間になると、不安や恐怖からせん妄が悪化する傾向があり(夜間せん妄)、昼間より独り言が多くなることがあります。

認知症の独り言への対処法 4つのポイント

認知症の方の独り言は健常者の独り言とは異なる原因があり、本人に止めるように言い聞かせてもなかなか解決しづらいものです。

いったい、どのように働きかければ和らぐのでしょうか。ここでは認知症の独り言に対応する際のポイントを4点お伝えします。

怒ったり正したりしない

認知症の方が独り言を言う際、怒ったり正そうとしたりするのは避けましょう。独り言をやめるように要求する、つじつまが合わないことを指摘するといった行動は、認知症の方に不安感を与え、独り言が増加する可能性があります。

独り言の裏にはその方なりの理由や感情があることを理解し、尊重することが大切です。

生活リズムを整える

認知症の方の生活リズムを整えることは、独り言の症状緩和に役立つ可能性があります。夜にぐっすり眠れるように、起床したら朝日を浴びる、日中の活動量を増やすなどして調整するとよいでしょう。

規則的な生活リズムを保てば、夜に増える傾向にある独り言の軽減につながることが考えられます。

安心できる状況を作る

夜間の独り言が多い場合には、無理に寝かせようとするのではなく、認知症の方が安心できる状況を作ることが重要です。手を握る、体を優しくさするなど、身体的な安心感を提供するとよいでしょう。

眠るときにも部屋の照明を点けたままにしたり、真っ暗にならないように間接照明を導入したりして、寝室の環境を整えることも大切です。

温かい物を提供してみる

どうしても独り言が止まらないときは、温かい飲み物や軽めの食べ物を提供するのも対処法の一つです。飲食中は独り言が止まりやすく、温かいものによる安心感も与えられるかもしれません。

夜には、ホットミルクやホットココアを提供すると、眠気を誘導させる効果も期待できます。ただし、ココアには糖分が多く含まれるものもあるため、過剰な摂取による糖尿病には注意しましょう。そのほか、小さなチョコレートなども気軽に提供できる食べ物としておすすめです。

独り言への対応で疲れないために

認知症の方の独り言への対処は、家族や介護者にとって大きな負担になるでしょう。認知症の独り言は、周囲の注意で止まるものではありません。独り言は認知症症状に起因するものであり、本人ではコントロールが難しいものだからです。

そのため、介護者が疲れてしまうこともありますが、介護者にストレスが溜まると認知症の方がそれを察知して不安に感じ、さらに独り言が増えることも考えられます。

介護者が疲れないためには、家族や第三者とのコミュニケーションや相談が非常に重要です。例えば、かかりつけ医や専門医に相談することで、ストレス軽減や新たなアイデアを得られるかもしれません。

また、介護サービスを活用することも、介護者の負担を軽減する手段の一つです。専門家の支援を受けながら、認知症の方との向き合い方を学ぶこともできるでしょう。

認知症の独り言は理解ある対応が必要


認知症の方の独り言には、健常者の独り言とは異なる独特の特徴があります。意味をなさない言葉がなかなか止まらずに周囲が戸惑うこともありますが、認知症症状に起因するものであり、本人の意識でコントロールできるものではない点に理解が必要です。

単に独り言をやめさせようとするのではなく、生活リズムを整えたり、夜間の不安を和らげるなど安心感を与えたりすることで、状況が改善する可能性があります。

介護する側にも疲労やストレスが溜まりやすくなりますが、他者への相談や介護サービスの利用などがサポートになるかもしれません。認知症介護には課題が多くありますが、理解ある対応と介護者自身のケアの両方を大切に考え、認知症の方との信頼関係構築につなげていくことが大切です。

 
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別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2023年11月28日

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