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公的介護保険制度とは?適用サービスや利用の流れも詳しく解説

日本の要介護者は年々増加しており、介護の必要性は高まっています。そのようななか、公的介護保険制度の概要やサービス内容について、詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか。

公的介護保険制度とは、介護サービス利用時の利用料の自己負担を1~3割に抑えられる制度で、適用できる介護サービスにはいくつかの種類があります。

今回は、公的介護保険制度の概要や適用されるサービス3種、利用の流れ、気を付けたいポイントなどを解説します。

公的介護保険制度の概要

まずは、公的介護保険制度に関する概要や仕組みについて見ていきましょう。

1~3割の自己負担で介護サービスを利用できる

公的介護保険制度とは、介護サービスを受ける際の自己負担額を1~3割に抑えられる制度のことです。運営主体は全国の市区町村、もしくは特別区で、財源構成の割合は保険料が50%、公費が50%となっています。

公的介護保険制は、2000年の介護保険法施行にともない創設されました。創設の背景には、要介護者の増加や介護期間の長期化、要介護者を支える家族状況の変化などが挙げられます。

公的介護保険制度は、少子高齢化が進む中で、高齢者の介護を社会全体で支えるためにつくられた仕組みといえるでしょう。

加入対象は40歳以上

介護保険の加入対象となるのは40歳以上で、被保険者は年齢区分によって以下の2種類に分かれます。

・第1号被保険者:65歳以上の方
・第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者

医療保険加入者が40歳を迎えると、医療保険料とともに介護保険料を徴収されます。一方、健康保険の加入者は、原則的に事業主との労使折半(2分の1負担)で、介護保険料が徴収されることが特徴です。

また、第2号被保険者が65歳を迎えると、自動的に第1号被保険者へと切り替わり、原則的に年金からの天引きで保険料を徴収されるようになります。

要介護認定を受けた人にのみ適用

介護保険適用となるには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、介護サービスの必要度を客観的に数値化したもので、要支援1・2、要介護1~5の7段階に分かれていることが特徴です。

要介護状態
(認定の目安)とは?

要支援2・要介護1
  • 食事や排せつなど時々介助が必要
  • 立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い
次のいずれかに該当する場合は「要介護1」となります。
認知機能の低下が見られる
おおむね6か月以内に介護の手間が増加する可能性がある
要介護2
  • 食事や排せつに何らかの介助が必要
  • 立ち上がりや歩行などに何らかの支えが必要
要介護3
  • 食事や排せつに一部介助が必要
  • 入浴などに全面的に介助が必要
  • 片足での立位保持ができない
要介護4
  • 食事に一部介助が必要
  • 排せつ、入浴などに全面的に介助が必要
  • 両足での立位保持がほとんどできない
要介護5
  • 日常生活を遂行する能力は著しく低下し、日常生活全般に介助が必要
  • 意思の伝達がほとんどできない
要支援2・要介護1の段階では時々介助が必要というレベルですが、要介護のレベルが上がるごとに、介助の必要度も増していきます。

第1号被保険者と第2号被保険者では適用条件が異なる

介護が必要と認定された場合、第1号被保険者は原因を問わずに公的介護保険が適用されます。一方、第2号被保険者は、16種類の特定疾病のいずれかに該当した場合にのみ適用されます。

公的介護保険制度が適用されるサービス3種

ここでは、公的介護保険制度で適用されるサービスごとの特徴について見ていきましょう。

在宅サービス

在宅サービスとは、基本的に自宅で生活しながら受けられる介護サービスを指します。以下は、おもな在宅サービスの種類です。
種類 内容
訪問介護 訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して、食事・排泄・入浴などの「身体介護」や、掃除・洗濯・買い物などの「生活援助」を行なう。
訪問看護 看護師などが疾患のある利用者の自宅を訪問して、療養上の世話、診療の補助などを行なう。主治医の指示のもと、血圧・脈拍の測定や、在宅酸素、リハビリテーションなどが可能。
通所介護
(デイサービス)
利用者がデイサービスセンターなどに日帰りで通い、生活機能向上に向けた機能訓練や、食事・入浴など日常生活支援を受ける。要支援1・2の方はサービスを受けられない。
福祉用具貸与 家族の介護負担軽減などを目的に、車いすや特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器など13品目の福祉用具をレンタルできる。要介護度に応じて、レンタル可能な福祉用具は変わる。
上表のほかにも、在宅サービスには「訪問入浴」や「訪問リハビリ」などもあり、ニーズに応じて選択できます。

施設サービス

施設サービスとは、特定の施設に入所することで受けられる介護サービスで、おもな種類としては以下が挙げられます。
種類  内容
特別養護老人ホーム  在宅が難しく、常に介護が必要な方を対象に、日常生活上の支援や機能訓練、療養上の世話を行なう施設。介護老人福祉施設ともいう。
要支援1・2、特別な事情がない要介護1・2の方はサービスを受けられない。
介護老人保健施設 要介護者の方が在宅復帰できるように、リハビリテーションや介護を提供し、在宅復帰に向けてサポートする施設。老健とも呼ばれる。
要支援1・2の方はサービスを受けられない。
介護療養型医療施設 長期にわたる療養が必要な要介護者を対象に、医療や機能訓練、介護などを提供する施設。
要支援1・2の方はサービスを受けられない。
上表の施設を利用する際は、いずれも施設サービス費がかかるほか、居住費や食費、日常生活費も必要となる点に留意しておきましょう。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、施設や事業所がある市区町村に住所がある場合に利用できるサービスで、以下のようなサービスを受けられます。
  
種類  内容
夜間対応型訪問介護  訪問介護員が利用者の自宅を訪問するサービス。夜間帯(18~8時)に訪問を受ける「定期巡回」と、体調不良時などに通報で介助を求められる「随時対応」のサポートがある。
認知症対応型通所介護 認知症の利用者を対象に、デイサービスセンターやグループホームなどの施設へ通所して、日常生活上の支援や機能訓練などを受けられるサービス。
その他の地域密着型サービスとして、「療養通所介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などもあるので、ニーズに合わせて選びましょう。

公的介護保険制度を利用する流れ

ここからは、公的介護保険制度を適用して、実際に介護サービスを受けるまでの流れを紹介します。

1.市区町村窓口の申請

介護サービスを受けるには、市区町村の窓口で家族、もしくは本人による「要介護(要支援)認定」の申請が必要です。第1号被保険者の場合、65歳以上の方に市区町村が郵送で発行する「介護保険の被保険者証」の提示が求められます。

第2号被保険者の場合は、「医療保険者の被保険者証」が必要です。65歳未満のため、郵送による介護保険証の発行はされておらず、特定疾病によって要支援・要介護の認定を受けた場合のみ発行されます。

2.認定調査

次に、認定調査員が自宅を訪れて、本人もしくは家族から心身の状態について聞き取り調査が実施されます。調査は、基本調査と特記事項を含めた74項目で、全国共通の内容です。

基本調査の項目は、以下のとおりです。

・身体機能・起居動作:13項目
・生活機能:12項目
・認知機能:9項目
・精神・行動障害:15項目
・社会生活への適用:6項目
・過去14日間に受けた特別な医療について:12項目
また、認定調査のほかに、主治医による意見書(医学的見地からの心身の状況を取りまとめた書類)の作成が必要です。主治医への依頼は、市区町村が直接行ないます。

なお、主治医がいないケースでは、代わりに市区町村の指定医による診察を受けることになるでしょう。

3.審査・判定

続いて、認定調査の内容、および主治医意見書をもとに、コンピュータによって一次判定が行なわれます。その後、保健・医療・福祉の学識経験者による介護認定審査会が、一次判定の結果と主治医意見書をもとに、二次判定を実施します。

一次・二次判定をもとに、市区町村が申請者の要介護・要支援認定を行なうのです。結果は、原則的に申請から30日以内に通知されます。

4.サービスの選択

要介護・要支援に認定された場合は、実際に受けるサービス内容を選びましょう。介護サービスは先述のとおり、大きく3種類に分かれています。

実際にサービスを受けるときは、サービス事業者に対して「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」の提示が必要です。

公的介護保険制度で気を付けるべきポイント

続いて、公的介護保険制度で気を付けるべきポイントについて解説します。

内容によっては適用できない

公的介護保険を適用できる内容には限りがある点に留意しておきましょう。例えば、以下のような項目では、原則として公的介護保険が適用されません。

・支給限度額を超えたサービス費
・食事の宅配サービス
・福祉自動車の送迎
・収入減による生活費の補填
・有料老人ホームの入居一時金

公的介護保険を適用できない項目については、全額自己負担となります。介護全体にかかる費用負担を減らすために、場合によっては民間の介護保険を検討するのも手です。

民間の介護保険であれば、現金支給で受け取れるため、用途に合わせて自由に使えます。また、年金タイプや一時金タイプなど種類は複数あり、ライフプランに応じて必要な商品を選べるのも特徴です。

適用除外となる条件がある

公的介護保険では、以下の条件に適合すると介護保険の適用除外となります。

・障害者支援施設等、適用除外施設に入所する方
・海外勤務者で、居住していた市区町村に転出届を提出した方
 (※転出届を提出していない場合は適用除外にならない)
・在留見込み期間が3カ月以下の外国の方

上記の条件に該当する場合は、「介護保険適用除外(該当・不該当)届」などの必要書類をそろえて、各事業所の健保担当者へ提出しましょう。

併せて知りたい!介護費用の負担を減らすその他の制度

介護費用の負担を減らすには、公的介護保険制度のほかに使える制度を知っておくことが大切です。以下の項目では、把握しておくべき3つの制度について解説します。

高額介護サービス費

1カ月に支払った介護サービスの自己負担額のうち、規定の負担限度額を超えた費用が返還される制度です。例えば、市町村民税課税世帯の場合、課税所得380万円(年収約770万円)未満では、負担上限額が月額4万4,400円と規定されており、この上限を超えた金額は返還されます。

ただし、公的介護保険対象外の費用は、高額介護サービス費も対象外となります。また、公的介護保険のサービス支給限度額を超えた分に関しては、自己負担しなければなりません。

高額医療・高額介護合算療養費制度

1年間(8月1日~翌年7月1日)の医療保険と介護保険の自己負担額が高額な場合、負担を軽減できる制度です。所得に応じて、自己負担限度額の上限は変わる点が特徴です。

例えば、後期高齢者医療制度と公的介護保険に加入している場合は、以下のように自己負担限度額が変わります。
所得区分 自己負担限度額
一般 56万円
課税所得145万円以上 67万円
課税所得380万円以上 141万円
課税所得690万円以上 212万円
所得が多いほど自己負担額の上限額も多くなるため、場合によっては自己資金をまかなえるように方法を考えておくことが大切です。

なお、先述の高額介護サービス費が支給されている場合、その支給額が控除されたうえで自己負担額として扱われる点に注意してください。

負担限度額認定

一定の要件を満たすことで、介護保険施設を利用したときの住居費や食費を軽減できる制度です。利用者の負担段階は、第1段階~第3段階に分かれています。

例を挙げると、第1段階を満たす要件は以下のとおりです。

【収入等の要件】
・生活保護受給者
・別世帯の配偶者を含む世帯全員が、市民税非課税の老齢福祉年金受給者

【資産要件(預貯金等の合計)】
・単身で1,000万円以下
・夫婦で2,000万円以下

これらの要件を満たせば、介護サービス利用にかかる負担を抑えることが可能です。

公的介護保険は1~3割の自己負担で、在宅サービスや地域密着型サービスなどの介護を受けられる制度です。ただし、公的介護保険の適用には要介護・要支援の認定が前提となるうえ、食費や生活費には充てられません。

介護全体にかかる費用を軽減させるためには、民間の介護保険などが有効です。
朝日生命では、介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

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