認知症の予防と防止
症状と認知症になった場合の対応方法


認知症になると日常生活に支障をきたし、大切な家族や周囲の人へ迷惑をかけてしまうこともあります。そのため、認知症の予防や進行を遅らせる方法に関心がある方も多いでしょう。

本記事では、認知症の症状や予防・進行を遅らせる方法、認知症になった場合の対応を解説します。

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認知症とはどのような病気?

認知症とは、加齢や脳血管障害などにより脳の機能が障害され、記憶や判断を行なう脳の認知機能が低下し、日常生活に支障が出る状態です。

日本では高齢化にともない、認知症の人が増加しています。厚生労働省「認知症の人の将来推計」によると、認知症の有病率が今後も一定の割合で推移する場合、2030年には高齢者の約5人に1人、2060年には約4人に1人が認知症になると予想されています。

有病率が今後上昇する場合では、2060年には約3人に1人が認知症になる見込みです。

認知症の症状は?

認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の大きく2つに分けられます。それぞれの症状と、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」についても併せて解説します。

認知症の中核症状

認知症における中核症状とは、病気などにより脳の細胞が壊れることで生じる症状です。

具体的な症状は以下のとおりです。

もの忘れ

認知症の代表的な症状です。少し前の出来事や身近な人の名前を思い出せない、同じ話や質問を繰り返す、同じ商品を何個も買ってくるなどの症状が見られます。

時間や場所がわからなくなる

見当識障害とも呼ばれ、時間や場所の感覚が薄れていきます。なじみのある場所で迷子になる、日付や時間がわからなくなる、物事の前後関係が理解できなくなるなどの症状が見られます。

身の回りのことや仕事ができなくなる

いつも当たり前のようにできていた日常生活が難しくなります。入浴や洗顔のやり方がわからなくなる、料理や掃除、洗濯などの家事がうまくできなくなる、排泄のコントロールができず失禁する、普段していた仕事ができなくなるなどの症状が見られます。

判断力や理解力が低下する

出来事を理解するのが難しくなり、普段の生活で行なっている物事の判断ができなくなります。本やテレビの内容の理解に時間がかかる、貯金の引き出しや事務手続きができなくなる、車の運転ミスが増えるなどの症状が見られます。

認知症の行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)は中核症状がもととなり、二次的に引き起こされる症状です。一般的には「周辺症状」とも呼ばれることもあります。本人の性格や環境、心理状態などが影響するため、起こる症状や程度は人により異なります。

気分が落ち込む

認知力・理解力の低下により、できないことが増えると物事への意欲がなくなり、家に引きこもりがちになります。うつ病と誤解されやすいですが、これはBPSDの症状です。

徘徊する

中核症状からくる徘徊だけでなく、不安な気持ちや周辺環境などからくるストレスがきっかけとなり徘徊することもあります。帰り道がわからなくなり、一人で出歩くのが難しいため、介護者の見守りがないと事故や行方不明につながることもあります。

怒りやすくなる

できないことやわからないことが増えると不安や焦りが生じ、ちょっとしたことでイライラしたり、怒りっぽくなったりします。

妄想や幻視が起こる

何をどこにしまったのかを忘れてしまうため、盗まれたと思い込んでしまう「物盗られ妄想」が起こることがあります。また、誰もいないのに「知らない人が家にいる」と訴える幻視も現れます。

軽度認知障害(MCI)の症状

軽度認知障害(MCI)は認知症の前段階で、約40%が約5年以内に認知症になるといわれています。日常生活に大きな支障は出ないものの、自覚することがあり、家族が気付く場合もあります。

認知症の予防と進行を遅らせる3つの方法

認知症は、発症すると完治することが難しい病気です。高齢化にともない、今後認知症患者の増加が見込まれます。認知症の発症リスクを減らし、発症後の進行を遅らせるには、生活習慣の見直しが必要です。

ここでは、認知症の予防と進行を遅らせるための3つの方法を紹介します。

生活習慣病を防ぐ

糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、認知症の原因になるともいわれています。喫煙や過度な飲酒も生活習慣病になりやすいため、バランスの良い食生活などを心がけましょう。生活習慣を変えることで認知症の予防につながります。

また、適度な運動も認知症の予防や進行を遅らせることに効果的です。ウォーキングやエアロビクスなど、無理のない範囲の運動を生活に取り入れることをおすすめします。

人とのかかわりを持ち会話の機会をつくる

人との会話は脳が活性化され、認知機能の低下を防ぐことにつながります。ボランティアなどの社会活動や趣味のコミュニティへの参加は、脳に良い刺激となります。

また、一人暮らしの方や会話が少ない夫婦は、外出して近所の人たちと軽い会話を楽しむことで、脳の活性化につながるでしょう。

他者との交流や自分の役割・生きがいを見つけることは、認知症の予防や進行を遅らせることに役立ちます。

聴力低下を防ぐ

聴力の低下も、認知症の原因になるといわれています。高齢になると聴力が低下し、脳への刺激が少なくなるためです。また、聴力の低下によって周囲との交流を避けるようになると、孤立感が生じやすくなります。そのため、「聞こえる」ことは非常に重要です。

聴力の低下は個人差がありますが、補聴器を付けることで対処できます。「聞き取りにくい」と感じたら、早めに耳鼻科を受診するようにしましょう。

「認知症かな?」と思ったらすべきこと

認知症は早期発見・早期治療が大切です。認知症の症状が疑われたらすべきことを解説します。

医療機関を受診する

認知症を疑ったら、まずは医療機関を受診しましょう。

認知症と似た症状でも、ほかの病気や、治療できる認知症の場合もあります。適した治療を受けるためにも、まずは受診して診断をしてもらうことが重要です。

介護サービスを利用する

認知症の人の介護は介護者の負担が大きく、家族や周りの人のサポートだけでは難しいのが現状です。無理をせず、公的介護保険の介護サービスの利用を検討しましょう。

介護サービスは、プロのケアを受けられるだけでなく、社会や人との交流にもつながります。

その人らしい生活を送る

認知症は認知機能が低下し、徐々に進行していく病気です。今までできたことができなくなるつらさや焦りもあるかもしれません。しかし、すべての機能がすぐに失われるわけではないので、残された能力やできることを知り、その人らしく過ごせるようにすることが大切です。

介護者は自分の時間も大切にする

認知症の人の介護は、精神的・肉体的にも大きな負担です。介護を頑張りすぎると介護者はストレスを抱え、それが認知症の人にも伝わり悪循環となります。

介護者にも生活があるため、適度に介護サービスなどを活用しましょう。介護以外の時間をつくることで、心に余裕を持てるようになります。

認知症の予防や進行を遅らせるには早めに対策しよう


認知症は脳の認知機能の低下により、日常生活に支障が出る病気です。発症すると完治は難しく、症状は進行していきます。

認知症の予防や進行を遅らせるには、生活習慣病や聴力低下を防ぎ、人との交流を持つことが重要です。生活習慣をあらため、早めの対策を心がけましょう。

家族が認知症と診断されたら、介護サービスが利用できる場合があります。介護サービスは、プロのケアを受けられるだけでなく、社会とのかかわりにもつながります。また、介護者の負担軽減にもなるため、無理せず積極的に活用してください。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

別府 拓紀[医師]

産業医科大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院、市中病院、企業の専属産業医などを経て、現在は市中病院で地域の精神科医療に従事している。
資格: 精神保健指定医、精神科専門医、老年精神医学会専門医、認知症サポート医、臨床精神神経薬理学専門医、公認心理師、メンタルヘルス運動指導士、健康スポーツ医、産業医など

公開日:2024年3月28日

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