要介護5とは?認知症も原因に
利用可能なサービスや助成制度も解説


「要介護5」といっても、どのような状態を示すのかわからない方も多いのではないでしょうか。また、要介護5ではどのような介護サービスが受けられるのか、知りたい方もいるかもしれません。

要介護5は基本的に寝たきりの状態であり、日常生活すべてにおいて介護が必要です。そのため、利用できる公的介護保険のサービスも多くあります。

本記事では、要介護度の概要やおもな原因、要介護4との違い、利用できる介護サービス、助成制度について詳しく解説します。

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「要介護5」とはどういう状態?

要介護度は、要支援1、2と、要介護1~5の7段階に区分されます。そのなかで要介護度が最も高い段階が要介護5です。

寝たきりの場合が多く、具体的には「衣服の着脱ができない」「水や食事を飲み込むことが困難」「排せつはオムツを使用する」などの状態です。そのため日常生活のすべてにおいて介護が必要となります。

要介護認定の段階を判断するうえで、基準となるのが要介護認定等基準時間です。要介護認定等基準時間が110分以上か、これに相当する状態が要介護5となります。

分類

要介護認定等基準時間の範囲

要支援

25分以上32分未満、またはこれに相当する状態

要介護1

32分以上50分未満、またはこれに相当する状態

要介護2

50分以上70分未満、またはこれに相当する状態

要介護3

70分以上90分未満、またはこれに相当する状態

要介護4

90分以上110分未満、またはこれに相当する状態

要介護5

110分以上、またはこれに相当する状態

日常生活のすべてにおいて介護が必要となると、自宅での介護は家族の負担が大きくなるため非常に困難といえます。したがって、基本的に施設への入所が選択肢として挙げられるでしょう。

要介護5となるおもな原因

厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護5となる原因は脳血管疾患(脳卒中)が26.3%、認知症が23.1%、骨折・転倒が11.3%を占めています。
第1位の「脳血管疾患(脳卒中)」は、重度の場合、四肢に麻痺が残ります。認知症を併発することもあるため、脳血管疾患(脳卒中)を発症する前の生活レベルへと戻ることは難しいでしょう。

第3位の「骨折・転倒」のように、外傷によるケースも挙げられます。加齢により骨がもろくなると、転倒して足などを骨折しやすくなり、動けない状態が続くことで認知機能が著しく低下し、その結果要介護5になる方もいます。

また、要介護4の方の症状が悪化して要介護度が引き上げられ、要介護5に認定される場合もあるでしょう。

要介護4との違い

要介護4は、要介護度を判断する基準となっている要介護認定等基準時間で、90分以上110分未満、またはこれに相当する状態です。介助がなければ日常生活を送ることは難しいですが、自分でできることもあります。

認知症が原因で要介護4になった場合、理解力の低下も見られます。そのため、徘徊や妄想、不潔行為といった症状が見られることもあるでしょう。

一方、要介護5は日常生活すべてにおいて介助が必要です。認知症が原因で要介護5になった場合、意思疎通が困難となり、身体的にも寝たきりに近い状態となることがあります。

要介護5の方が利用できる介護サービス

 
要介護5の認定を受けている場合、利用できる公的介護保険のサービスの種類に制限はなく、在宅介護や施設利用、福祉用具のレンタルなど幅広い介護サービスが受けられます。家族が要介護5の認定を受けた場合は、必要なものや状態に合った介護サービスを利用するとよいでしょう。

具体的には、以下のような介護サービスの利用が可能です。

自宅で受けられる介護サービス

・訪問介護

・訪問入浴介護

・訪問看護

・訪問リハビリテーション

・夜間対応型訪問介護

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

日帰りで施設に通うことで受けられる介護サービス

・通所介護(デイサービス)

・通所リハビリテーション(デイケア)

・地域密着型通所介護

・療養通所介護

・認知症対応型通所介護

短期間の宿泊で受けられる介護サービス

・短期入所生活介護(ショートステイ)

・短期入所療養介護

訪問・通い・宿泊を組み合わせた介護サービス

・小規模多機能型居宅介護

・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

施設への入所

・介護老人保健施設(老健)

・介護老人福祉施設(特養)

・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)

・介護医療院

小規模な施設への入所

・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

・地域密着型特定施設入居者生活介護

その他

・福祉用具の貸与費の支給

・福祉用具の購入費の支給

・住宅改修費の支給


要介護5は、要介護度のなかで最も重い状態となるため、必然的に家族への負担も大きくなります。身体的・精神的負担を軽減するためにも、ケアマネジャーに相談しながら最適なケアプランを作成することが必要です。

また、要介護度別の「区分支給限度基準額」の枠内であれば、1割から3割の自己負担で介護サービスが利用できます。次の項目で詳しく解説しますので併せて覚えておきましょう。

要介護5の区分支給限度基準額

要介護認定を受けた方は、要介護度に応じた介護サービスの利用が可能です。また、公的介護保険から支給を受けられる介護サービスの限度額も、要介護度によって違いがあります。

公的介護保険では、要介護度に応じて給付可能な額の上限が決められており、この上限額を「区分支給限度基準額」といいます。

要介護5の場合、日常生活すべての動作において介助の必要があり、介助量が非常に多くなります。そのため、7つある要介護度のなかで、区分支給限度基準額が一番高く設定されています。

要介護5の区分支給限度基準額は、1カ月36万2,170円(1単位当たり10円で計算)です。

利用した介護サービスの費用が区分支給限度基準額の範囲内であれば、かかった費用の1割(一定以上の所得がある場合には2割、または3割)の自己負担で介護サービスが利用できます。

ただし、区分支給限度基準額を超えて介護サービスを利用した際、超過分は全額自己負担となるため注意しましょう。

介護では、必要なものを準備するために、初期費用として多額の出費が発生することも少なくありません。また、施設に入居する場合にも多額の費用が必要なケースもあります。月々にかかる介護費用の負担も併せて考えると、早いうちから介護費用を準備しておくことが大切です。

介護に必要な品物を
自費で購入等した場合の
初期費用

100万円

工事費別途

(公財)生命保険文化センター「介護保障ガイド」(2024年10月改訂版)をもとに当社にて試算
・車椅子、特殊寝台、移動用リフト、ポータブルトイレ、手すり、階段昇降機を購入した場合の一例
・公的介護保険の給付対象となる場合があります。

全国の有料老人ホームの

入居時費用相場
約半数が

200万円超

株式会社LIFULL senior 老人ホーム検索サイト
LIFULL 介護」より 2024年10月31日時点の都道府県単位での平均入居別費用相場から当社にて試算(平均入居別費用相場が「不明」の9県を除く)

費用は目安であり、地域・施設により異なります。

要介護5の方が利用できる4つの助成制度

 
要介護5の方が利用可能な助成制度を、4つご紹介します。

高額介護サービス費

介護サービスを利用した場合、利用者は所得に応じた自己負担額を支払います。1カ月の自己負担額が、個人の所得等によって定められる所定の負担限度額を超えて高額になった場合に、超過分の金額が払い戻される制度を「高額介護サービス費」といいます。払い戻しを受ける際には、自治体への申請が必要です。

高額介護サービス費は、自宅で受けられる「居宅サービス」だけでなく、施設に入居することで受けられる「介護施設サービス(介護老人保健施設や介護老人福祉施設など)」にも適用されます。

ただし、介護に関するすべての費用が対象となるわけではありません。払い戻しの対象とならない例として、特定福祉用具購入や住宅改修にかかる自己負担額、施設における居住費、食費などがあります。迷った際には自治体やケアマネジャーに相談するとよいでしょう。

障害者控除

「障害者控除」とは、障害のある方やその家族が受けられる税法上の優遇措置です。障害者手帳の交付を受けている方などが、所得から一定の控除を受けられ、所得税や住民税、相続税など税金の負担を減らせます。

障害者控除には「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3つの区分があり、区分によって対象となる条件や控除額が異なります。

なお、控除額は、障害者が27万円、特別障害者が40万円、同居特別障害者が75万円です。

リフォーム工事費の給付

介護が必要な方のために自宅をリフォームする場合、公的介護保険によって費用を補助してもらうことが可能です。

要介護や要支援の認定を受けているなど特定の要件を満たしていると、「居宅介護住宅改修費」として支給限度額20万円までのリフォーム工事を対象に、自治体から給付が受けられます。

利用者の自己負担割合は65歳以上なら1割、一定以上所得がある場合は2割、または3割です。なお、40歳から64歳までの方は1割になります。

例えば、20万円のリフォーム工事の場合には、1割負担者は2万円、2割負担者は4万円でリフォーム工事が行えます。

給付対象は、玄関や廊下、トイレなどに手すりを設置したり、段差をなくしたりするなどのリフォーム工事です。住宅の新築工事は対象外のため注意しましょう。

基本的に、一度上限額まで給付を受けた方は、それ以降に給付を受けることはできません。ただし、転居する、あるいは要介護度が3段階以上重くなった場合には、再度申請が可能となります。

関連記事:公的介護保険による住宅改修とは|手続き内容や支給対象工事のポイント

福祉用具にかかる費用の給付

福祉用具をレンタルする際にも、公的介護保険における給付の対象となります。レンタル費の自己負担割合は、原則1割(利用者の所得によって2~3割)です。

要介護5の方が公的介護保険でレンタルできる福祉用具は、以下のとおりです。
  • 車いす・付属品
  • 特殊寝台(介護用ベッド)・付属品
  • 床ずれ防止用具
  • 手すり
  • 歩行器
  • 歩行補助杖
  • スロープ
  • 自動排せつ処理装置
  • 体位変換器
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト
福祉用具のなかには、購入した場合であっても公的介護保険の給付対象となるものもあります。具体的には以下のとおりです。
  • 腰掛便座(ポータブルトイレなど)
  • 自動排せつ処理装置の交換可能部分
  • 排せつ予測支援機器
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具部品
助成制度は以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:介護で活用できる補助金制度を8つ紹介!補助金を活用して介護費用の負担を軽減しよう

要介護5の方が利用できる施設

これまで解説してきたとおり、要介護5の方は自宅での日常生活が困難となるため、施設を利用するのも一つの手段となるでしょう。要介護5の認定を受けた方は、以下の施設の利用が可能になります。

介護老人保健施設(老健)

要介護度1~5の方でリハビリが必要となる方が対象。あくまでも自宅復帰を目的としており、入居期間は原則3~6カ月に限定され、終身利用はできない。

関連記事:「老健」とは?特徴・利用方法・費用や「特養」との違い

介護老人福祉施設(特養)

在宅での生活が困難で常に介護が必要な高齢者が対象。原則として要介護3以上の認定を受けた方しか入居できない。公的施設のため、民間の施設と比較すると低料金な点が特徴。

関連記事:特別養護老人ホーム(特養)の費用や入居条件|メリット・デメリット・施設選びのポイントとは?

介護付き有料老人ホーム

入居要件は施設ごとに異なり、要介護度が低い方から高い方、認知症の方など幅広く受け入れている。24時間介護スタッフが常駐しており、身のまわりの世話や介護サービスを受けることが可能。

関連記事:公的介護保険が適用される有料老人ホームとは?適用サービスや自己負担額

住宅型有料老人ホーム

生活支援サービス(食事、洗濯、清掃など)付きの高齢者向け住宅施設。介護サービスを提供しないため、入居者の方が介護サービスを必要とする場合には、介護事業者と別途契約する必要がある。

ケアハウス(軽費老人ホーム)

自宅での生活が困難で、生活支援が必要な60歳以上の高齢者が対象。比較的安価に、食事や洗濯などのサポートが受けられる施設。自立状態の方を対象とした「一般(自立)型」と、要介護の方を対象とした「介護型」の2種類がある。

介護医療院

要介護度1~5の方を対象としており、長期療養と生活支援を目的とした施設。医師の配置が義務付けられていて、医療機関に近い環境で介護を受けることが可能。看取りや終末期医療(ターミナルケア)も行われている。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症かつ要支援2以上の方が入居でき、認知症の専門的なケアを提供する。1つの共同生活住居に5~9人程度で共同生活を送る。

関連記事:グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは?|入所条件・費用・選び方

サービス付き高齢者向け住宅

バリアフリーが完備された高齢者向けの(高齢者単身・夫婦世帯が居住できる)賃貸住宅。自宅と同様に自由に暮らしながら、スタッフからの安否確認や生活相談サービスなどが受けられる。自立状態の方を対象とした「一般型」と、要介護の方を対象とした「介護型」の2種類があるが、介護型の数は少なめ。

要介護5への理解を深めて、将来の介護に備えよう


要介護度は7段階あり、症状が最も重いのが要介護5です。日常生活すべてにおいて介護が必要な状態のため、自宅での介護は難しく、基本的に施設へ入所する方が多くなっています。

要介護5になるおもな原因としては、脳血管疾患(脳卒中)や認知症などがあります。また、要介護4の方の症状が悪化することで要介護度が引き上げられ、要介護5に認定されるケースもあります。

要介護5の認定を受けている場合、在宅介護や施設利用、福祉用具のレンタルなど、公的介護保険のサービスの種類について利用制限はありません。費用については助成制度もあるため、上手に活用して経済的負担を少しでも軽くしましょう。

 
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将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2025年5月14日

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