「認知症保険」と「介護保険」の3つの違い
認知症の特徴や保険の必要性も紹介


高齢の家族や、これから老後を迎える自分自身について、認知症になった際に発生する経済的負担が気になる方もいるのではないでしょうか。

認知症は介護が必要になることが多く、そして徐々に進行していくため、経済的負担も大きくなりがちです。その備えの一つとして、認知症保険や介護保険があげられます。

本記事では、認知症保険と介護保険の違いや認知症の特徴を踏まえた保険の必要性、どちらの保険を選択すべきかといったポイントを解説します。

朝日生命では認知症介護などの経済的負担に備えられる介護・認知症保険をご提供しています。
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「認知症保険」と「介護保険」の3つの違い

前提として、認知症保険への加入は任意です。一方、介護保険は任意加入の民間の介護保険と加入義務のある公的介護保険制度があります。

また、認知症保険と介護保険には「受給要件」「加入できる年齢」「給付方法」に大きな違いがあります。

それぞれの詳細について、詳しく見ていきましょう。

受給要件の違い

認知症保険は、認知症の診断を含め保険会社が定める要件を満たした場合に受給が可能です。認知症の診断のほかにも「要介護認定されている」「一定期間認知症の状態が継続している」など、要件は保険会社により異なります。

次に介護保険です。
公的介護保険制度の被保険者は、第1号(65歳以上の方)、第2号(40歳~64歳の医療保険加入者)の2つに分かれます。

いずれも、受給には要介護認定により要支援・要介護状態であることを示す必要があり、第2号の場合は加齢にともない生じる特定疾病(末期がんや関節リウマチなど)に起因していなければいけません。

民間の介護保険には、公的介護保険制度に準じる「連動型」と、保険会社の独自基準に準じる「非連動型」があります。近年では「連動型」が一般的ですが、公的介護保険制度と連動して受給要件が設定されるため、制度改正があると保障内容が変わる可能性があります。

加入できる年齢の違い

公的介護保険制度は40歳になると加入義務が発生し、それ以前は加入できません。一方、民間の介護保険・認知症保険は40歳未満から加入できる商品もあるため、早めに加入したい場合に役立ちます。

給付方法の違い

給付方法も、公的介護保険制度と民間の介護保険・認知症保険で異なります。

公的介護保険制度は、訪問看護や通所介護など、要介護度に応じたサービスを1~3割の自己負担で利用できる現物給付の制度です。

対して、民間の介護保険・認知症保険は現金給付であり、一括で受け取れる「一時金型」と、定期的に受け取れる「年金型」などがあります。

介護の初期費用に充てたい場合は「一時金型」、毎月の介護にかかる費用や介護にともなう収入減少の補填をしたい場合は「年金型」など、貯蓄やライフプランに応じて給付方法が選択可能です。

認知症の特徴と認知症保険で受けられる保障

ここまで認知症保険と介護保険の違いを説明しましたが、「認知症保険とはどのような保険なのか」を知りたい方もいらっしゃるかと思います。

以下では認知症の特徴と要介護認定の基礎知識、認知症保険の保障内容について解説します。

認知症の特徴

認知症とは「脳の機能低下により、社会生活に支障のある状態」のことを指します。

加齢にともない発症する可能性が高くなり、高齢化が進む日本では今後さらに患者数が増える見通しです。

また、認知症には脳の細胞が壊れて生じる中核症状と、中核症状をもとに人間関係や環境、本人の性格などの要因が影響して生じる周辺症状(BPSD)があります。

中核症状

  • 話したことや出来事が覚えられない(記憶障害)
  • 日時や場所がわからなくなる(見当識障害)
  • 物事の理解に時間がかかる、判断力が低下する(理解・判断力低下)
  • 言葉をうまく話せない(失語)、いつも着ている服をうまく着られない(失行)、新聞を見ているのにそれを新聞と認識できない(失認) など

周辺症状(BPSD)

  • 徘徊する
  • 落ち込みやすくなる
  • 怒りやすくなる、暴力をふるう
  • 意欲や物事への興味がなくなる
  • 妄想、幻覚が見える など
いつもどおりの日常生活が送れないことで、不便さや憤りを感じる認知症の方は多いです。また、症状が進み介護が必要になると、家族にも大きな負担がかかります。

認知症は要支援・要介護認定の対象

たとえ身体が元気でも、認知症であれば要介護認定の対象となります。要介護認定は要支援1・2、要介護1~5に区分され、身体機能の目安は次のとおりです。
  • 要支援1:基本的な日常生活は送れるが、一部動作に見守りや助けが必要
  • 要支援2:基本的な日常生活は送れるが、一部動作に助けが必要。歩行が不安定

  • 要介護1:基本的な日常生活は送れるが、一部動作に見守りや助けが必要
  • 要介護2:日常生活動作に助けが必要。認知機能が低下
  • 要介護3:日常生活全体に助けが必要。移動には車いすや杖を使用
  • 要介護4:あらゆる場面で助けが必要。認知機能も著しく低下
  • 要介護5:ほぼ寝たきりで意思疎通が難しい
要支援状態よりも要介護状態、また数字が大きいほうが介護の必要性が高まります。この要介護度によって利用できるサービスや利用限度額は異なり、要介護5に近づくほど多くのサービスを利用できます。

認知症保険で受けられる保障

認知症保険は、治療保障タイプと損害補償タイプに大別されます。

  • 治療保障タイプ:
    保険会社の要件を満たした場合(認知症の診断など)に、一時金や年金のように保険金を受給できる

  • 損害補償タイプ:
    認知症が原因で第三者に損害を与えた場合に、賠償金などの損害補償を受けられる
同じ認知症保険でも加入するタイプによって保障内容や給付方法などが異なる点に注意しましょう。

認知症に保険は必要?経済的負担に備えるべき4つの理由

公的介護保険制度があるので「認知症保険は不要」と考える方もいるかもしれません。

しかし、今後発生する可能性のある経済的負担を考えると、心配な方もいらっしゃるでしょう。ここでは「家族に負担をかけたくない」「介護にかかる費用に不安がある」という方に向け、認知症保険の加入を検討したい4つの理由を解説します。

誰でも起こり得る

認知症は加齢にともない発症リスクが高まるため、高齢化が進む日本では今後患者数が増加すると考えられています。

認知症・認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)患者の具体的な将来推計を見てみましょう。
 

参考:内閣府「平成29年版高齢社会白書」、首相官邸認知症施策推進関係閣僚会議(第2回)資料、厚生労働省老健局 社会保障審議会介護保険部会(第92回)「介護保険制度をめぐる最近の動向について」より当社試算(65歳以上を対象として各年齢の認知症有病率が上昇する場合の数値を使用)

2012年は認知症・MCI患者の合計が約862万人でしたが、2030年にはそれぞれ約1.7倍に増加し、約1,548万人に上る見通しです。これは65歳以上の約3人に1人が該当します。このような見通しが示されるほど認知症・MCI患者数は年々増加しているのです。

また、厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」によると、2022年に介護が必要となった原因を見ると「要介護者」における原因の第1位は認知症です。

参考:厚生労働省|2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況

認知症で介護が必要な状態になることは、誰にでも起こり得る身近な問題といえるでしょう。

介護に初期費用がかかることがある

朝日生命の試算では、介護にかかる費用の総額平均は約581万円※1となっています。

また、全国の有料老人ホームの入居時費用相場では約半数が200万円を超えています※2。自宅介護の場合も介護しやすいようにリフォームをしたり、備品を購入したりする必要があるでしょう。

※1公益財団法人生命保険文化センター「令和3年 生命保険に関する全国実態調査」より当社試算

※2株式会社LIFULL senior 老人ホーム検索サイト「LIFULL 介護」より 2023年11月30日時点の都道府県単位での平均入居別費用相場から当社にて試算(平均入居別費用相場が「不明」の10県を除く)。費用は目安であり、地域・施設により異なります。

このことから、介護開始時には一時的に高額な費用が発生する可能性もあることがわかります。

介護に使用する備品には、次のようなものがあります。

・車いす
・歩行器
・介護用ベッド
・介護用食器
・見守りカメラやGPS など

もちろん介護状態によって必要な備品や入居費用などは異なりますが、介護の初期費用は高額になる可能性があり、事前の備えが重要です。

なお、朝日生命が実施したファイナンシャルプランナー100人へのアンケート調査では、介護の経済的負担に備えるために民間の介護保険の活用が推奨されており、備えるべき金額の回答平均は763万円、介護へ備えるタイミングの回答結果平均は46歳となっています。
まとまったお金が一括で給付される一時金型の保険であれば、高額になりがちな介護の初期費用にも対応しやすいでしょう。

毎月継続した出費がある

介護にかかる費用は、もちろん初期費用だけではありません。前述のとおり、公的介護保険制度の介護サービスを利用しても、1~3割の自己負担が生じます。

要介護度ごとの年間の自己負担額(1割負担の場合)を見てみましょう。

厚生労働省老健局老人保健課「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する件の公布について」(平成31年3月28日)より当社で試算​

介護サービスを支給限度額まで利用した場合の自己負担額(自己負担割合が1割の場合)は全国平均であり、地域によって異なる場合があります。介護サービスの支給限度額を超えたサービス利用分は全額自己負担になります。

一定以上の所得がある65歳以上の方は2~3割負担となります。

支給限度額まで介護サービスを利用すると、要介護1で約20.1万円(月々約1.7万円)、要介護5では約43.4万円(月々約3.6万円)の自己負担がかかります。要介護度が上がるほど自己負担額が増える点にも注意が必要です。

介護状態になると、毎月の費用負担が継続することになります。

想定外の損害が発生する可能性がある

認知症になると、どうしても性格や行動に変化が生じやすく、日常生活のなかでトラブルを起こしてしまうことがあります。

≪トラブル例≫
・線路内に入り電車を遅延させる
・自転車で交通事故を起こして相手に損害を負わせる など

上記のような事故により第三者の身体や財物に損害を与えてしまった場合、損害賠償責任を負う可能性があります。高額な費用がかかるケースもあり、想定外に損害が発生した場合の本人・家族の経済的負担は大きいといえます。

ここまで、認知症保険を検討したい理由を4つ解説しました。
介護やトラブルにかかる費用を貯蓄や収入で対応できる場合は問題ありませんが、いつまで続くか分からない費用の負担を少しでも減らすためにも、認知症保険に加入しておくと安心です。

認知症保険と介護保険はどのように選ぶ?

最後に、認知症保険と民間の介護保険の違いを踏まえて選び方を解説します。

認知症に特化した手厚い保障なら認知症保険

認知症保険のなかには、認知症の診断のみで給付金を受け取れる商品などもあります。そのため認知症保険は、とにかく認知症による経済的負担が心配な方におすすめです。

また掛け捨て型の商品が多く、割安な保険料で加入できるのもメリットでしょう。

ただし、認知症保険は2年間程度の免責期間(加入後の不担保期間)が設けられていることが一般的です。免責期間中に給付要件に該当しても、給付を受けられない点に注意してください。

介護負担に幅広く備えたいなら介護保険

認知症は介護が必要になることも多いため、民間の介護保険への加入も有用です。

介護保険は、要介護認定を受けるなど所定の要件を満たすと介護一時金や介護年金を受け取れる仕組みです。認知症を含め、幅広い介護負担に備えたい方向けの保険といえるでしょう。

ただし、40歳以上になると公的介護保険制度の保険料の支払いもあります。民間の介護保険に加入すると月々の負担額が増えるため、無理なく支払えるか事前にシミュレーションすることが重要です。

認知症保険と民間の介護保険にはそれぞれ異なる特徴があります。「本当に保険が必要なのか」「どちらを選択するべきか」については、介護の必要性や家計状況、保障内容・期間、受給方法などを総合的に考慮し検討する必要があるでしょう。

介護費用に対応できる貯蓄や収入があれば、加入しないことも選択肢の一つです。

認知症保険は保障内容とご自身に必要な備えを考えて検討を


認知症は、介護が必要になる原因の上位とされています。介護が必要な状態になると、初期費用や毎月の介護費用、予想外のトラブルに対する費用などで経済的負担が増えてしまいます。

貯蓄などで対応が難しい場合、民間の介護保険や認知症保険への加入も検討しましょう。

いずれも商品によって保障内容などは異なるので、自分に合った保険を選ぶことが重要です。

 

朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

CFP 齋藤 彩

急性期総合病院において薬剤師として勤める中、がん患者さんから「治療費が高くてこれ以上治療を継続できない」と相談を受けたことを機にお金の勉強を開始。ひとりの人を健康とお金の両面からサポートすることを目標にファイナンシャルプランナーとなることを決意。現在は個人の相談業務・執筆活動を行っている。

資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)

公開日:2024年7月3日

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