公的介護保険制度では65歳以上を「第1号被保険者」、40~64歳を「第2号被保険者」と区分します。第2号被保険者の場合、会社員であれば健康保険料と併せて給与から介護保険料を天引き、自営業のような国民健康保険に加入している方も国民健康保険料と併せて介護保険料を徴収されます。
なお、支払義務が生じる“40歳から”というのは、正確にいうと「40歳になる誕生日前日が属している月から」です。
例えば7月9日が誕生日の方は、前日が7月8日になるため7月から徴収が始まります。
しかし7月1日が誕生日の方は、前日が6月30日になるため6月が徴収の開始月です。
65歳以上になると介護保険料はどう変わる?
ちなみに“65歳から”とは、先ほどと同じように「65歳になる誕生日前日が属している月から」を指します。
給料からの天引きではなくなる
65歳以降も働き続けている方であっても、健康保険料とは別で納付することになります。
支払方法についてはのちほど詳しく解説しますので、併せてご確認ください。
ただし、年金から天引きされるようになるまでに半年~1年程度の準備期間が必要です。天引きが開始されるまでは口座振替や納付書での支払いとなるため注意しましょう。
以前より金額が高くなる可能性もある
その理由は以下の2つです。
- ・介護保険料の算出方法が変わるため
- ・会社員の場合、勤務先の負担分がなくなり全額支払う必要があるため
65歳以上、すなわち第1号被保険者になると、介護保険料の算出方法が変わります。
具体的には、ご本人の所得のほか、その地域に住んでいる65歳以上の方の人数や介護サービスに必要な費用の見込額などに基づいて算出されます。自治体によって基準となる金額は変わり、高齢者が多いところほど負担金額も高くなる傾向です。
また、会社員の場合、64歳までは介護保険料の半分を自分が負担し、もう半分を勤務先が負担してくれます。ところが65歳以上となると勤務先の負担分がなくなるため、全額を自分が負担しなければなりません。
介護保険料の平均金額
上記のデータを見ると、第1号、第2号被保険者の保険料は公的介護保険制度開始時よりどちらも上昇していることが分かります。
関連記事:介護費用や介護期間の平均はどれくらい?
介護保険料の計算方法
65歳以上(第1号被保険者)の場合
気になる方は一度お住まいの地域の自治体公式サイトを確認してみましょう。基準額が記載されている場合もあります。
「基準額」とは介護サービスに必要な費用のうち、第1号被保険者が負担する割合を、その自治体に住む65歳以上の方の人数で割った金額のことです。
また、第1号被保険者は所得や住民税の課税状況などによって段階分けされており、16段階のところもあれば9段階のところもあります。
以下に例として、東京都新宿区(令和3~5年度)の65歳以上の介護保険料をご紹介します。
(例)東京都新宿区(令和3~5年度)の65歳以上の介護保険料
保険料 段階 |
所得などの状況 |
基準額に 対する割合 |
保険料 |
||
年額 |
1カ月当たり (年額/12月) |
||||
第1段階 |
生活保護受給者、中国残留邦人等支援給付受給者 |
基準額 ×0.25 |
1万9,200円 |
1,600円 |
|
世帯全員住民税非課税 |
本人が老齢福祉年金受給者 |
||||
本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて、80万円以下 |
|||||
第2段階 |
世帯全員住民税非課税 |
本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて、120万円以下 |
基準額 ×0.35 |
2万6,880円 |
2,240円 |
第3段階 |
本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて、120万円超 |
基準額 ×0.65 |
4万9,920円 |
4,160円 |
|
第4段階 |
本人が住民税非課税で、世帯員が住民税課税 |
本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて、80万円以下 |
基準額 ×0.8 |
6万1,440円 |
5,120円 |
第5段階 |
本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて、80万円超 |
基準額 |
7万6,800円 |
6,400円 |
|
第6段階 |
本人が住民税課税 |
本人の合計所得金額が125万円未満 |
基準額 ×1.1 |
8万4,480円 |
7,040円 |
第7段階 |
本人の合計所得金額が125万円以上250万円未満 |
基準額 ×1.2 |
9万2,160円 |
7,680円 |
|
第8段階 |
本人の合計所得金額が250万円以上375万円未満 |
基準額 ×1.4 |
10万7,520円 |
8,960円 |
|
第9段階 |
本人の合計所得金額が375万円以上500万円未満 |
基準額 ×1.55 |
11万9,040円 |
9,920円 |
|
第10段階 |
本人の合計所得金額が500万円以上625万円未満 |
基準額 ×1.85 |
14万2,080円 |
1万1,840円 |
|
第11段階 |
本人の合計所得金額が625万円以上750万円未満 |
基準額 ×2.09 |
16万0,560円 |
1万3,380円 |
|
第12段階 |
本人の合計所得金額が750万円以上1,000万円未満 |
基準額 ×2.45 |
18万8,160円 |
1万5,680円 |
|
第13段階 |
本人の合計所得金額が1,000万円以上1,500万円未満 |
基準額 ×2.9 |
22万2,720円 |
1万8,560円 |
|
第14段階 |
本人の合計所得金額が1,500万円以上2,500万円未満 |
基準額 ×3.3 |
25万3,440円 |
2万1,120円 |
|
第15段階 |
本人の合計所得金額が2,500万円以上3,500万円未満 |
基準額 ×3.5 |
26万8,800円 |
2万2,400円 |
|
第16段階 |
本人の合計所得金額が3,500万円以上 |
基準額 ×3.7 |
28万4,160円 |
2万3,680円 |
40~64歳(第2号被保険者)の場合
国民健康保険加入者
介護保険料=所得割額+均等割額+平等割額+資産割額
- *所得割額=(総所得-基礎控除額)×介護保険料率 で算出される金額
- *均等割額=世帯の第2号被保険者の数に応じて決まる金額(所得が0円でも発生する)
- *平等割額=世帯に対してかかる金額
- *資産割額=世帯の固定資産(土地・家屋など)に対して賦課される金額
自治体によってそれぞれの金額は異なり、平等割額や資産割額がない自治体もあります。
国民健康保険以外の
医療保険加入者
介護保険料= 標準報酬月額(または標準賞与額)×介護保険料率
- *標準報酬月額=毎年4~6月の給与平均額(交通費や残業代等の各種手当を含む)を全50等級の区分に当てはめた金額
- *標準賞与額=税引前の賞与額から1,000円未満端数を切り捨てた金額
介護保険料率は加入している健康保険組合によって異なり、毎年見直されることも覚えておきましょう。
ちなみに協会けんぽの介護保険料率は令和4年3月からの分で1.64%、令和5年3月からの分で1.82%となっています。
65歳以上は介護保険料の支払方法が2通りある
なお、被保険者が支払方法を選ぶことはできません。
特別徴収
ただし、年金から自動で天引きされるまでには半年~1年程度の準備期間が必要です。準備が整い特別徴収の開始が通知されるまでは、納付書や口座振替による納付となります。
普通徴収
また、年金の繰下げ受給を行なった方も普通徴収で支払うこととなります。
介護保険料を滞納したらどうなる?
納付期限を過ぎて 1年未満の場合 |
延滞金や督促手数料を請求される |
1年以上滞納した場合 |
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1年半以上滞納した場合 |
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2年以上滞納した場合 |
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介護保険料を支払わなくていいケースについて
● 生活保護を受給している
● 健康保険の扶養に入っている
生活保護を受給した状態では医療保険に加入できないため、公的介護保険の被保険者とならず、介護保険料の負担もなくなります。65歳以上になると、たとえ生活保護受給者でも支払義務が発生しますが、介護保険料は生活保護の「生活扶助費」としてまかなわれます。
つまり、実質的な自己負担はありません。
また、健康保険の扶養に入っている40~64歳の被扶養者(専業主婦など)も、介護保険料を支払う必要はありません。被保険者が支払っている介護保険料のなかに、被扶養者の介護保険料相当分が含まれているためです。
扶養者が40歳未満あるいは65歳以上、被扶養者が40歳~64歳の場合でも、健康保険組合によっては「特定被保険者制度」を採用しているところもあるためよく確認しておきましょう。
「特定被保険者制度」とは、40歳未満もしくは65歳以上の健康保険被保険者が、40歳以上65歳未満の家族を扶養している場合に介護保険料を徴収できる制度のことです。
介護保険料を減免・猶予してもらえる場合もある
● 事業の廃止や長期の入院、新型コロナウイルス感染症などによって著しく収入が減少した場合
● 地震や火災などの災害によって大きな損害を受けた場合
また、これらに該当する場合には納付期限の延長が認められることもあります。
詳しい利用条件や申請方法は自治体によって異なるため、気になる方は居住する各自治体の担当窓口へ問い合わせてみましょう。支払えないからといってそのまま滞納するのではなく、なるべく早めに相談することが重要です。