公的介護保険制度とは? 仕組みや対象者・受けられるサービス


「公的介護保険制度という言葉を聞いたことはあるけれど、具体的な内容まで知らない」という方も多いのではないでしょうか。

公的介護保険制度は介護が必要とされる人を社会全体で支える仕組みです。40歳以上の方は全員が加入対象となり、介護保険料を納めます。40歳~64歳と65歳以上では、介護保険料や納付方法などが変わるため、切り替わる時期は注意しなければなりません。

本記事では、公的介護保険制度の仕組みや対象者、介護保険料、利用可能なサービス、介護サービスを利用するまでの流れなどを解説します。

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公的介護保険制度とは

介護が必要とされる人を社会全体で支える仕組みのことを「公的介護保険制度」といいます。

日本人は世界的に見ても平均寿命が長く、それにともない介護が必要となる期間も長い傾向にあります。さらに、少子高齢社会を迎え、核家族の進行や介護者の高齢化などの問題も発生してきました。

このような背景から、公的介護保険制度は2000年から施行されています。

運営は市区町村などが行っており、財源は被保険者の介護保険料と公費(税金)でまかなわれています。

公的介護保険制度の仕組み

公的介護保険制度は、以下の3者から構成されています。

● 被保険者
● 保険者
● 介護サービス事業者

被保険者とは、介護保険料を支払っている方のことです。特定の要件を満たした際は、1~3割の自己負担割合で介護サービスを受けられます。

保険者とは、公的介護保険制度を運営している市町村・特別区(東京23区)のことです。

介護サービス事業者とは、実際に介護サービスを提供している人や団体を指します。

公的介護保険のサービスを受けられる方

介護サービスの対象者は、基本的に要介護認定を受けている方です。要介護認定とは、客観的に介護サービスの必要度を数値化したもので、要支援1・2、要介護1~5の7段階があります。

要介護状態
(認定の目安)とは?

要支援2・要介護1
  • 食事や排せつなど時々介助が必要
  • 立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い
次のいずれかに該当する場合は「要介護1」となります。
認知機能の低下が見られる
おおむね6か月以内に介護の手間が増加する可能性がある
要介護2
  • 食事や排せつに何らかの介助が必要
  • 立ち上がりや歩行などに何らかの支えが必要
要介護3
  • 食事や排せつに一部介助が必要
  • 入浴などに全面的に介助が必要
  • 片足での立位保持ができない
要介護4
  • 食事に一部介助が必要
  • 排せつ、入浴などに全面的に介助が必要
  • 両足での立位保持がほとんどできない
要介護5
  • 日常生活を遂行する能力は著しく低下し、日常生活全般に介助が必要
  • 意思の伝達がほとんどできない
なお、介護サービスを受けられる条件は、65歳以上の方(第1号被保険者)と40歳~64歳の方(第2号被保険者)とで異なります。

65歳以上の方は、要介護・要支援と認定されれば介護サービスを利用でき、その原因は問われません。一方で40歳~64歳の方は、老化に起因する特定の疾病によって要介護・要支援と認定された場合のみ、介護サービスを利用できます。

「特定の疾病」とは、以下の16種類を指します。
  • がん(回復の見込みがないと判断されたもの)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折をともなう骨粗しょう症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節または股関節に著しい変形をともなう変形性関節症

介護保険料の支払いはいつから?金額は?

介護保険料の支払い開始のタイミングや金額、算出方法、滞納した場合について説明します。

介護保険料の支払いは40歳から

介護保険料は、満40歳に達した月から支払うことが義務づけられています。満40歳は第2号被保険者となる年齢です。

具体的には、誕生日の前日から徴収が始まります。例えば、8月1日生まれは1日前の7月31日に第2号被保険者となり、7月分から介護保険料が徴収されることとなります。

介護保険料の金額や算出方法

介護保険料の金額やその決め方は、第1号被保険者か第2号被保険者かで異なります。

なお、厚生労働省によると、第1号被保険者の介護保険料基準額の全国平均は月額6,225円(2024年度~2026年度)、第2号被保険者の介護保険料平均額は月額6,276円(見込み額)(2024年度)とされています。

第1号被保険者

第1号被保険者は、市区町村ごとに定められている基準額によって介護保険料の金額が変わります。基準額は、本人または世帯の所得などによって段階が分けられており、その段階数もさまざまです。

例えば、9段階設けている自治体もあれば、17段階設けている自治体もあります。

段階数が市区町村によって異なるのは、要介護者の人数やサービスの需要の高さなど、地域ごとに介護サービスにかかる費用が変わるためです。

詳しくは以下の記事でも紹介しています。

第2号被保険者

第2号被保険者は、加入している公的医療保険制度に応じて介護保険料の金額が変わります。

全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合などの社会保険に加入している場合、「標準報酬月額または標準賞与額×介護保険料率×1/2」で計算されます。最後に「×1/2」を掛けるのは、保険料の支払いが事業主との折半になるためです。

介護保険料率は被用者保険ごとに設定され、毎年見直されます。

また、個人事業主など国民健康保険に加入している場合、世帯ごとの所得に応じて介護保険料の金額が算出されます。

介護保険料を滞納したらどうなる?

介護サービスを利用した際には、費用の1~3割を自己負担することになります。しかし、特別な事情がなく介護保険料を滞納した場合は、滞納期間に応じて措置がとられます。

滞納期間ごとの措置の内容は、以下のとおりです。

滞納期間

措置の内容

1年以上

介護サービスの費用をいったん全額負担します。後日、申請によって費用の97割分の払い戻し(償還払い)を受けられます。

16カ月以上

費用の全額を負担します。後日申請したとしても、97割の払い戻し分の一部または全部が差し止めとなり、滞納中の保険料の支払いにあてられます。

2年以上

保険料の滞納から2年以上経過すると、未納分の後払いができなくなります。また、介護サービスの利用時、保険料未納の期間に応じて費用の自己負担が12割の方は3割に、3割の方は4割に引き上げられます 。


介護保険料の納付方法

介護保険料の納付方法も、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。

第1号被保険者

第1号被保険者の納付方法は、年金額によって分かれます。
  • 年金支給額が18万円以上の方:年金からの天引き(特別徴収)
  • 年金支給額が18万円未満の方:銀行やコンビニエンスストアなどで納付書払い、もしくは口座振替(普通徴収)

第2号被保険者

第2号被保険者の納付方法は、社会保険加入者であればその被用者保険と一緒に、個人事業主であれば国民健康保険と一緒に徴収されます。

第2号被保険者が65歳を迎えると、自動的に第1号被保険者へと切り替わり、原則的に年金からの天引きで保険料を徴収されるようになります。
切り替わりまでは半年ほどかかるので、その期間中は普通徴収となる点に注意が必要です。

公的介護保険制度で受けられるサービス一覧

公的介護保険制度で受けられるさまざまなサービスを、居宅・地域密着型・施設の3つに大別して解説します。

居宅サービス

居宅サービスとは、要介護・要支援者が自宅に居住したまま受けられる介護サービスのことです。

居宅サービスの種類は多岐にわたるため、ここでは訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、その他サービスの4つに分けて紹介します。

各サービスのおもな内容は以下です。

訪問サービス

要介護・要支援者が生活する自宅に訪問し、さまざまなサービスを提供します。具体的には、掃除・洗濯・買い物などの生活支援や、食事・排せつといった直接的な介護、移動式浴槽を使った入浴介護、リハビリテーションなどです。

看護師が医師の指示のもと、健康チェックや療養上の世話などを行う訪問看護サービスも、必要に応じて受けられます。

通所サービス

自宅で生活を送る要介護・要支援者が、施設に通って日中を過ごすサービスです。

デイサービス(通所介護)では、食事・排せつ・入浴の支援や、心身の機能の維持・向上を目的とするレクリエーションなどを受けられます。また、デイケア(通所リハビリテーション)では、理学療法士や作業療法士などが実施する機能訓練を受けることも可能です。

短期入所サービス

要介護・要支援者が施設に短期間宿泊し、食事や入浴、リハビリテーションなどの支援を受けられるショートステイサービスです。

介護を担う家族の負担軽減や、施設入居への準備に活用できます。

その他サービス

介護の負担軽減を目的として、車いすや介護ベッドなどの福祉用具をレンタルできるサービスも受けられます。

また、排せつや入浴などレンタルに不向きな福祉用具を購入する特定福祉用具購入費や、手すりの取り付け・段差解消といった自宅の改修を行う住宅改修費の支給も可能です。

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、介護が必要になった場合も住み慣れた地域で生活を続けられるよう、地域ぐるみで介護を支援するサービスのことです。

地域密着型サービスの種類も多岐にわたりますが、「訪問・通所型サービス」「認知症対応型サービス」「施設・特定施設型サービス」の3つに分けて紹介します。

訪問・通所型サービス

自宅で生活する要介護・要支援者を訪問または施設に受け入れ、生活支援や介護、健康管理や衛生管理指導などの看護を提供します。

認知症対応型サービス

自宅から通う認知症の方やグループホームに入居中の認知症の方に、生活のサポートや認知症ケアを行います。

施設・特定施設型サービス

地域密着型の小規模な特別養護老人ホームや有料老人ホームで暮らす要介護・要支援者に、生活支援や介護、機能訓練、看護を提供するサービスです。

施設サービス

公的介護保険の施設サービスとは、特定の施設に入所することで受けられるサービスです。

おもに以下の4種類があります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護を常に必要とし、在宅での介護が難しい方を対象とした施設です。機能訓練や療養上の世話、日常生活に必要なサポートなどを行います。

介護老人保健施設

症状が安定している方を対象とした施設です。看護・医学的な管理のもと介護や機能訓練などを行い、在宅復帰を目指したサポートをします。

介護療養型医療施設

慢性疾患があり長期療養を必要とする方に、医療と介護、日常生活に必要なサポートを提供する施設です。

なお、本施設は2024年3月31日に廃止され、その後は介護医療院へ転換・移行する予定です。

介護医療院

医療と介護の両方を必要とする方が、長期的に暮らすための施設です。上記の介護療養型医療施設の役割を担うだけでなく、日常生活を送るための支援にも力を入れています。

また、有料老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)などのうち、自治体から「特定施設入居者生活介護」における「特定施設」に指定されている施設では、介護サービスへの公的介護保険適用が認められています。

「予防給付」とは?

要介護1~5の方が利用できる介護給付とは異なり、要支援1・要支援2と認定された方のみ利用できるものが「予防給付」です。これは、要介護状態になることを防ぐためのサービスです。

介護給付・予防給付どちらも自己負担割合は1~3割と同じですが、予防給付の場合は「介護老人保健施設」などの施設サービスが利用できません。また、地域密着型介護サービスについても、受けられるものが制限されています。

介護サービス利用時の自己負担の割合

第1号被保険者の自己負担割合は原則、かかった費用の1割とされています。しかし、この割合は本人の合計所得だけで決まるわけではありません。同世帯にいる他の第1号被保険者の方の年金収入やその他の合計所得によって、自己負担割合は変わります。

具体的には、本人の合計所得が160万円以上であれば1割もしくは2割負担、220万円以上であれば1割~3割負担のいずれかになります。

なお、第2号被保険者の自己負担割合は、所得に関係なく1割です。

自己負担割合については以下の記事で詳しく紹介しています。

1カ月あたりの区分支給限度額・自己負担額

下表では、居宅介護サービスにおける1カ月あたりの支給限度額・自己負担額を区分ごとにまとめています。
 

支給限度額

自己負担1

自己負担2

自己負担3

要支援1

5320

5,032

164

15,096

要支援2

105,310

1531

21,062

31,593

要介護1

167,650

16,765

33,530

5295

要介護2

197,050

19,705

39,410

59,115

要介護3

27480

27,048

54,096

81,144

要介護4

309,380

3938

61,876

92,814

要介護5

362,170

36,217

72,434

108,651

1単位10円として計算

厚生労働省「サービスにかかる利用料」より

支給限度額は本来、「5,032単位」「1万531単位」などと単位数が定められており、そこに1単位あたりの金額をかけたものを支給限度額としています。この1単位あたりの金額は地域によって異なるため、上表に当てはまらない場合もあります。

また公的介護保険制度は、介護サービスという「現物」が支給されます。実際にお金を受け取れるわけではないことも一緒に覚えておきましょう。
なお、民間の介護保険では、一時金や年金といった形で現金が直接支給されます。

【5ステップ】介護サービスを利用する流れ

介護サービスを利用する流れを、5ステップに分けて解説します。

介護保険によるサービスを利用する際は、要介護・要支援の認定を受ける必要があります。申請しただけでは利用できません。

ステップ1:要介護・要支援認定の申請

まずは要介護・要支援の認定を受けるために、市区町村の担当窓口に申請しましょう。

申請時は、40歳から64歳までの方は医療保険の被保険者証、65歳以上の方は公的介護保険の被保険者証を持参しましょう。

ステップ2:認定調査

申請後、認定調査員が自宅や施設を訪問し、本人もしくは家族から心身の状況に関する聞き取り調査を実施します。調査は、基本調査と特記事項を含めた計74項目で、全国共通の内容です。

基本調査の項目は、以下のとおりです。
  • 身体機能・起居動作:13項目
  • 生活機能:12項目
  • 認知機能:9項目
  • 精神・行動障害:15項目
  • 社会生活への適用:6項目
  • 過去14日間に受けた特別な医療について:12項目
並行して、自治体は医師に主治医意見書の作成を依頼します。主治医意見書とは、被保険者の心身の状況について主治医の意見を記した書類で、要介護・要支援認定のために必要なものです。

主治医がいない場合は、代わりに市区町村の指定医による診察を受けることになるでしょう。

ステップ3:審査の実施・結果の通知

認定調査と主治医意見書をもとに審査を実施します。

最初に、コンピュータによる一次判定が行われます。次に、保健・医療・福祉の学識経験者による介護認定審査会が、一次判定の結果と主治医意見書をもとに二次判定をします。

その後、一次・二次判定をもとに市区町村が要介護・要支援認定を行い、申請者に結果が郵送されます。要介護・要支援の申請から結果の通知までにかかる日数は、原則として30日以内です。

ステップ4:ケアプランの作成

要介護・要支援の認定を受け、介護サービスを利用する際には、ケアプランの作成が必要です。ケアプランの作成は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者のケアマネジャーに依頼をすることが一般的です。

ステップ5:介護サービス事業者と契約

ケアプランをもとに介護サービス事業者と契約を交わし、介護サービスの利用を開始します。

介護・要支援者に認定されなかった場合でも、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)によって、介護予防ケアマネジメントに沿ったサービスの利用が可能です。

総合事業の介護予防サービスを受けるには、各自治体が作成している「基本チェックリスト」をもとに評価を受け、「介護予防・生活支援サービス事業対象者」に認められる必要があります。

公的介護保険制度で気を付けるべきポイント

続いて、公的介護保険制度で気を付けるべきポイントについて解説します。

公的介護保険の対象外となるものがある

公的介護保険を適用できる内容には限りがある点に留意しておきましょう。例えば、以下のような項目では、原則として公的介護保険が適用されません。
 
公的介護保険を適用できない項目は、全額自己負担となります。介護全体にかかる費用負担を減らすため、場合によっては民間の介護保険を検討するのも一つの手段です。

民間の介護保険であれば、現金給付で受け取れるため、用途は自由です。また、年金タイプや一時金タイプなど、ライフプランに応じて必要な商品を選べるのも特徴です。

適用除外となる条件がある

以下の方は、公的介護保険制度の適用除外となります。
  • 障害者支援施設など、適用除外施設に入所する方
  • 海外勤務者で、居住していた市区町村に転出届を提出した方(※転出届を提出していない場合は適用除外になりません)
  • 在留見込み期間が3カ月以下の外国の方
上記に該当する場合は、「介護保険適用除外(該当・不該当)届」などの必要書類をそろえて、各事業所の健康保険担当者へ提出しましょう。

【2024年】介護保険法改正による変更点

介護保険法は3年に1回改正が行われており、2024年はその改正年です。今回、具体的にどのような点が変更されたのでしょうか。

ここでは、公的介護保険制度とかかわりの深い、介護保険法の改正点を紹介します。

介護報酬の改定率を1.59%引き上げ

いくつかある変更点のなかでも、特に注目したい点が介護報酬の改定です。

介護報酬とは、介護サービス事業者が要介護・要支援者にサービスを提供した際に、その対価として保険者から支払われる報酬のことを指します。今回、2024年度の法改正により、介護報酬が1.59%引き上げられることになりました。

さらに、介護施設の増収効果や処遇改善加算の一本化にともなう賃上げ効果などの理由により、上記とは別で0.45%相当の引き上げが見込まれています。

2024年施行の改正点

そのほか、2024年では以下の法改正が決定しています。
  • 財務諸表の公表義務化
  • 介護情報を管理する基盤の整備
  • 居宅介護支援事業所による介護予防支援の実施
  • 科学的介護情報システム(LIFE)の推進
  • 介護サービス事業所における生産性アップの支援

公的介護保険制度の今後

 

※1厚生労働省「第92回社会保障審議会介護保険部会資料」および「介護保険事業状況報告の概要(令和5年10月暫定版)」より当社推計(第1号被保険者に対する65歳以上の認定者数の割合を使用)

※2厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」

※3厚生労働省「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」および「第55回社会保障審議会介護保険部会資料」より当社推計

上図のとおり要介護・要支援者は今後さらに増加し、2030年には65歳以上の約5人に1人※1に上る見通しです。それにともない、現役世代への負担も右肩上がりになっていくと考えられます。

併せて知りたい!介護費用を抑える制度

介護費用の負担を減らすには、公的介護保険制度以外にも使える制度を知っておくことが大切です。以下では、知っておきたい3つの制度について解説します。

高額介護サービス費

1カ月に支払った介護サービスの自己負担額のうち、規定の負担限度額を超えた費用が返還される制度です。例えば、市町村民税課税世帯の場合、課税所得380万円(年収約770万円)未満では、負担上限額が月額4万4,400円と規定されており、この上限を超えた金額は返還されます。

ただし、公的介護保険対象外の費用は、高額介護サービス費も対象外となります。また、公的介護保険のサービス支給限度額を超えた分に関しては、全額自己負担です。

2021年8月1日からは、高所得者向けの区分が新設されています。これにより、課税所得380万円(年収約770万円)以上、課税所得690万円(年収約1,160万円)未満の場合は、負担上限額が9万3,000円となりました。

課税所得690万円(年収約1,160万円)以上の方の負担上限額は14万100円です。

高額医療・高額介護合算療養費制度

1年間(8月1日~翌年7月1日)の医療保険と公的介護保険の自己負担額が一定の金額を超えた場合、負担を軽減できる制度です。所得に応じて、自己負担限度額の上限が変わります。

例えば、後期高齢者医療制度と公的介護保険に加入している場合の自己負担限度額は、以下のようになります。

所得区分

自己負担限度額

一般

56万円

課税所得145万円以上

67万円

課税所得380万円以上

141万円

課税所得690万円以上

212万円


所得が多いほど自己負担額の上限額も高くなるため、場合によっては資金をまかなえる方法を考えておく必要があるでしょう。

また、先述の高額介護サービス費が支給されている場合には、その支給額が控除されたうえで自己負担額として扱われる点に注意してください。

負担限度額認定

一定の要件を満たすことで、介護保険施設を利用したときの居住費や食費を軽減できる制度です。利用者の負担段階は、第1~第3段階に分かれています。

例を挙げると、第1段階を満たす要件は以下のとおりです。

【収入等の要件】
  • 生活保護受給者
  • 別世帯の配偶者を含む世帯全員が、市民税非課税の老齢福祉年金受給者
【資産要件(預貯金等の合計)】
  • 単身で1,000万円以下
  • 夫婦で2,000万円以下
これらの要件を満たせば、対象となる介護サービス利用にかかる負担を抑えることが可能です。

公的介護保険制度を知り、いざというときに備えよう


公的介護保険制度は、高齢者等が必要とする介護を社会全体で支え合うために欠かせない制度です。65歳以上の方で要介護・要支援認定された場合は、さまざまな介護サービスが原則1割負担(所得によっては2~3割負担)で利用できます。

少子高齢社会を迎えた今、この公的介護保険制度の利用者はより一層の増加が予想されます。介護が必要なタイミングになってから慌てないためにも、今のうちから理解を深めておきましょう。

また、公的介護保険制度で支給されるのは、介護サービスという「現物」です。用途を限定されず、現金で直接受け取りたい方は、民間の介護保険への加入も併せて検討してみてください。

  
朝日生命では、認知症などの介護の経済的負担に備えられる介護保険を提供しています。
将来に備えて保険加入をご検討中の場合は、ぜひご活用ください。

社会福祉士 萩原 智洋

有料老人ホームの介護スタッフとして、認知症の方や身体介護が必要な方の生活のサポートを行う。その後、社会福祉士資格を取得。介護老人保健施設の相談員として、入所や通所の相談業務に従事。第二子の出産を機にライターへ転身。現在は、これまでの経験を活かしてウェブコンテンツの執筆業務を行っている。

公開日:2024年10月18日

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