アルツハイマー型認知症は
脳内にたまったアミロイドβと呼ばれる異常たんぱく質によって脳神経が変性し、脳の一部が萎縮する過程で発症するといわれています。
アルツハイマー型認知症は、記憶障害(もの忘れ)や失語(名前が出てこない)、失認(視覚には問題ないのに見えているものが何かわからない)、失行(動作には問題ないのにどうすれば良いかわからない)などの症状が出ることが特徴的です。
治療法は確立されておらず、早期発見が重要とされていますが、加齢によるもの忘れと区別がつきづらいことから、受診が遅れてしまうケースもあります。アルツハイマー型認知症の原因には諸説あり、現在ではまだ全容が解明されていません。
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脳血管性認知症は、
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症する認知症です。血液が不足して神経細胞の機能が失われたり、たまった血液によって脳が圧迫されたりすることによって、さまざまな症状が現れます。
脳血管性認知症では、記憶障害から認知機能障害が少しずつ広がるのが特徴で、抑うつや感情失禁などの症状が出ることもあります。脳血管障害を起こした部位によっても症状は変化し、歩行障害や手足の麻痺などの症状が見られる場合もあります。
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レビー小体型認知症は、
レビー小体という異常たんぱく質が神経細胞にたまることで発症する認知症です。女性より男性のほうが発症しやすく、ほかの認知症よりも進行が早いという特徴があります。
レビー小体型認知症のおもな症状は、記憶障害や認知機能障害、幻視、歩行等動作障害(パーキンソン症状)などです。夜中に大声で叫んだり身体を大きく動かしたりする(本人は夢を見ているような感覚で覚えていない)などの症状をともなう場合もあります。
レビー小体型認知症は症状の変動が大きいため、症状の特徴を理解したうえでの周囲の支援が必要になります。
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前頭側頭型認知症は、
前頭葉と側頭葉で神経が変性して発症する認知症です。発症には特定のたんぱく質が関与していることはわかっていますが、なぜたんぱく質が変質するかはわかっていません。
理性的な行動ができなくなり、言葉が出なくなるなどの症状が現れたりするほか、穏やかだった人が急に怒りっぽくなるといった性格の変化が起きます。
認知症は高齢になると発症しやすくなりますが、前頭側頭型認知症は50~60代の比較的若い年齢で発症することが多くあります。症状の進行が早いため、前頭側頭型認知症は早期発見が重要です。
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上記4種類以外にも、認知症の疾患となる病気があります。
【そのほかの認知症原因疾患】
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神経変性疾患(大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺など)
大脳皮質基底核変性症や進行性核上性麻痺を発症すると、人格変化や意欲低下といった認知症の症状が現れます。進行性核上性麻痺では、声かけに対する反応の遅れも見られます。
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感染性疾患(クロイツフェルト・ヤコブ病など)
クロイツフェルト・ヤコブ病では、急速に進行するもの忘れや、言葉が出にくくなる、意思の疎通が難しくなるといった認知症の症状が見られます。
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アルコール性疾患(コルサコフ症候群など)
コルサコフ症候群で現れやすい認知症の症状は、新しいことを覚えられない記銘力障害や、時間・場所などがわからなくなる見当識障害などです。さらに、失った記憶を補完したり、記憶を誤ってつなぎ合わせたりなどして話を作り上げる、作話の症状が見られる場合もあります。
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内分泌・代謝性中毒性疾患(ビタミンB12欠乏症、肝性脳症など)
ビタミンB12欠乏症で現れる認知症の症状は、記憶障害です。肝性脳症では、記憶力・注意力の低下や判断力の欠如などの症状が見られます。
認知症と同じような症状を呈するため、一見認知症と診断されやすい疾患もあります。これらの疾患であれば、身体あるいは精神の原因を取り除くことができれば、症状が回復することがあります。
【認知症と間違われやすい疾患】
●うつ病
●甲状腺機能低下症
●正常圧水頭症
●腫瘍性疾患(脳腫瘍など) など
認知症の症状は、脳の働きが低下することによって発生する中核症状と、中核症状に周辺環境や患者本人の性格などが影響して発生する周辺症状(行動・心理症状)とに大別されます。
中核症状と周辺症状で起こる症状をそれぞれ見ていきましょう。
中核症状には記憶障害、実行機能障害、見当識障害などが挙げられます。代表的な中核症状と症状の内容は以下のとおりです。
記憶障害 |
何度も同じことを話す。ものの位置や約束を忘れてしまう |
実行機能障害 |
計画や段取りを立てられなくなる |
見当識障害 |
時間や場所がわからなくなる。季節に合わせた服が選べない |
失語 |
言語の理解・表出が難しくなる |
失行 |
運動機能に問題はないものの、適切な行動をとれなくなる |
失認 |
視覚機能に問題はないものの、目の前のものが何か認識できなくなる |
周辺症状:中核症状によって発生する症状(行動・心理症状)
周辺症状は患者本人の性格や周辺環境によって左右されるため、特徴的な症状が出ない方もいます。おもな周辺症状とその内容は以下のとおりです。
抑うつ |
気分が落ち込み食欲不振や不眠などの症状が出る |
徘徊 |
今いる場所や行き先がわからなくなり、歩き回る |
幻覚・妄想 |
ありえないものを現実に感じる、誤った認識を間違いないと思いこむ |
暴言・暴力 |
感情のコントロールができず、不満や不安により暴力や暴言が現れる |
介護拒否 |
介護の意味を理解できず介護を拒否する |
以下の6つは、認知症発症の原因になりうる習慣です。これらに気を付けて生活することは、認知症予防につながります。
偏った食生活は、認知症の発症リスクを上げる可能性があります。特に、塩分や糖分、脂質の過剰な摂取には注意が必要です。次のような食品を摂りすぎると、認知症の一因となる生活習慣病のリスクが高まります。
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肉の脂身
肉の脂身には飽和脂肪酸が多く含まれ、過剰摂取すると動脈硬化や脳梗塞のリスクが上がります。その結果、脳血管性認知症を発症するリスクも高まります。
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マーガリン
マーガリンに含まれるトランス脂肪酸は、悪玉コレステロール(LDL)を増やす要因です。血中の悪玉コレステロールが増加すると動脈硬化になる可能性が高くなり、脳への血流が悪くなるため、認知症の発症リスクも高まります。
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菓子パン
菓子パンのおもな原材料は、砂糖や小麦などの糖質です。食べすぎると血糖値が急上昇し、高血糖などを引き起こしかねません。この状態が続くと糖尿病から認知症の発症を招く可能性があります。
ほかには、超加工食品の過剰摂取にも注意しなければなりません。超加工食品とは、糖分や塩分、脂肪を多く含み、添加物や保存料などを加えて長期保存を可能とした加工食品のことです。
具体的には、一部のポテトチップスやカップ麺、ケーキ、ドーナツなどが該当します。これらを多く摂取すると、高血圧や糖尿病、肥満などのリスクが高まり、認知症の発症にもつながる可能性があります。